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リステリンの知られざる歴史。その用途はうがい、マウスウォッシュ用ではなかった?


マウスウォッシュの中でも特に長い歴史を持つ「リステリン」は英国の外科医であるジョセフ・リスター博士にちなんで名づけられましたが、1865年に研究が開始され、1879年に発表されました。この基礎研究から約150年が経った世界で最も有名なうがい剤、マウスウォッシュの知られざる歴史についてご紹介します。

発売初期はうがいへの効果を積極的に謳った商品ではなかったのをあなたはご存知ですか?

さらにリステリンの販売のために生み出された、ある画期的なマーケティング手法についても明らかに。

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リステリンの名前の由来になったリスター博士の功績

リスター博士

時は1800年代後期、英国のリスター博士は手術の際に手を洗うことが患者の生存率に影響するのではないかという仮説を立ててデータ収集を行い、約半数の患者が切除手術の後に敗血症で亡くなったのに対して、手術器具や手をフェノール液を用いて洗うことで術後に死亡する数が15%減る効果を1867年に発表します。

これは1865年に細菌学の祖と言われる著名なルイ・パスツールによる「微生物によって感染が引き起こされる」という考えに基づいています。

1840年代には感染予防のための消毒という考え方は生まれていましたが、依然として医学会において常識ではなく、手術の際に手を洗う効果は無視され、細菌感染は「悪い空気」によって引き起こされると信じられていました。ペストやコレラが流行した際にもこの考えを基に不気味なマスクが着用された経緯があります。マスク

悪い空気を浄化する目的でハーブ、わら、香辛料などが長い鼻の部分に詰め込まれたそうです。

しかし、後にその考えは誤りだったことが分かります。

悪い空気が感染を呼ぶのではなく、いわば膿んだ傷口によって空気が悪くなるという事が判明するのです。

リステリンの誕生

リステリンの誕生にはリスター博士だけが関わったわけではありません。

アメリカの薬剤師であり、実業家であったジョーダン・ウィート・ランバートはリスター博士の功績に感化され、手術用の消毒液をジョセフ・ローレンス博士と共に開発します。

彼らはリスター博士に敬意を示すためにこの消毒液の名前をリスター博士の名前にちなみ「リステリン」と名づけて売り出すことにしました。

その後ランバートはランバート製薬会社を設立し、本格的にリステリンの販売に乗り出します。

リステリンの効果は床掃除用、淋病治療用?

床掃除

そんなリステリンですがその殺菌効果を利用し、床掃除の洗剤としてや淋病の治療薬として売られていた経緯があります。

これは当時の「消毒液」というマーケットが小さすぎたことに関係しています。発表当時はできるだけ多くの人に訴求するためにフケ予防や髭剃り跡のケアなど「消毒・殺菌全般」に広く使える事をアピールする必要があり、その中に床掃除や性感染症の治療も含まれたのです。

しかし、この試みはリステリンの普及に十分に寄与してくれませんでした。その当時の売り上げはおよそ11.5万ドルだったそうです。

「口臭病」の改善効果?

時は流れ、ランバートの息子であるジェリー・ランバートが会社経営を引き継ぎ、リステリンの販売マーケット拡大に乗り出し、ある仕掛けを決行します。

「口臭は病気」という概念の導入です。

それまで、口臭は確かに存在していましたが、口臭を病気の一種であるとする考えは一般的に知られたものではなく、その新しい考えを宣伝に利用することを思いついたのです。

結果として「口臭は病気であり、治療の必要がある」という考えは広く人々の不安感をかきたてる事となりました。その時代はニキビ、突き出たお腹、薄毛、二重あごなどの人々の抱える体の悩みやコンプレックスを治療すべき病気であるとする事は考えられていませんでしたが、商品を売りたいマーケッター達によって積極的に利用されるようになっていきます。20年代のリステリン広告

その当時の宣伝広告には「口臭は病の一種。そのせいで評判を落とし、良い出会いは逃げていってしまいます」という強いメッセージがでかでかと掲載され、「リステリンで治療しましょう」という宣伝文句が後に続きます。

今日では、どんなマーケットにおいてもよく目にする宣伝手法はこの時代に発明されたのです。

広告の中に出てくる“halitosis”と言う言葉は口臭という意味ですが、同じ口臭を表す一般的な言葉である“bad breath”よりも好んで宣伝に使われました。

“halitosis”という言葉は「息」を意味する”halitus”「病気」を意味する”osis”が組み合わさって出来たラテン語ですが、このhalitosisという言葉の響きはbad breathよりも恐ろしい病気のように人々に感じさせる効果があったと言われています。

7年の時が経ち、リステリンの売り上げは800万ドルを越えるまで急上昇します。

今では口臭ケアは基本的なエチケットとして広く認識されていますが、実はイチ製薬会社が自社の製品を売るために大々的に宣伝したものだったなんて意外です。

ちなみにこの宣伝手法が行き過ぎた結果として2005年、「リステリンは口腔内ケアにおいてデンタルフロスと同程度の効果がある」とする広告は誇大広告であるとして裁判所から撤回を求められたことがあります。
差止められた広告差止められた広告

判事によって「リステリンのデンタルフロスに対する優位性は嘘である」と断罪されてしまいました。

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