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NHK「東洋医学のホントのチカラ」で紹介の鍼灸効果の科学的検証、エビデンスについて。効果はある?なし?


NHK総合で放送された「東洋医学のホントのチカラ ~最新科学で迫る鍼灸(しんきゅう)の秘密~」では鍼灸治療の最前線を大特集。鍼灸・ツボの効果を科学的に検証してその医学的根拠(エビデンス)を明らかにし鍼灸効果の仕組みやメカニズムに迫ります。

鍼灸治療を利用した頻尿を解決する簡単な方法や顔に針(鍼)を打つ美容鍼(びようばり)の効果についても紹介。※コチラの項目は放送後に更新予定

見逃してしまった方は是非チェックしてみてください。

※文章中は針(はり)と鍼(はり)の文字が混在していますが、基本的に鍼治療で使われる治療器具としての針という意味で一般的な漢字である「針」を使用していますのでご留意ください。

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百会(ひゃくえ)のツボ刺激

番組が訪れたのは東京・港区の北里研究所東洋医学総合研究所。

26年前の10代後半の頃から長年に渡って腰痛を抱えているタレントの土田晃之さんが針やお灸でツボを刺激する鍼灸を実際に体験。

かなりヒドい腰痛持ちで、前屈をしてみるとスネに触れる位が限界と体も硬い様子。

今回、鍼灸治療を手掛けるのは北里研究所東洋医学総合研究所 医長の伊藤剛医師。

早速針(鍼)を打って治療を開始しますが、まず針を打った箇所は腰部ではなく、頭のてっぺん。

百会(ひゃくえ)というツボ。

両耳の中央を結んだ線と体の中心線が交わる所にあるツボ。

頭のてっぺんと腰痛には何のつながりも無いように思いますがここがポイント。

昭和大学医学部の砂川正隆教授に協力してもらってマウスを使ってある実験。

1週間一匹だけで孤立状態で飼われたラットと普通のラットを一緒の容器に入れてみると、孤立したラットは組み付くような動きで攻撃。

孤立状態になるとストレスに晒されて攻撃的になる事からこんな反応になるそう。

そして、鍼灸効果を検証するために非常に小さな針の付いたシールを攻撃的になったラットの百会の部分に貼り付けて再度実験。

すると今度は普通のラットに危害を加えるような動きも無く身を預けてるような状態に。

上に乗っかった普通のラットが貼られたシールをペロペロと舐める動きを繰り返しているのもちょっと気になりますが。

医学的根拠(エビデンス)を明らかにするために血液を採取してストレスを感じた時に分泌されるストレスホルモン、オレキシンの濃度を比較検証。

すると百会のツボを刺激した場合にオレキシンの濃度が30%ほど減少。この数値の変化からはリラックス効果があるという事が示唆されますね。

砂川正隆教授「オレキシンをコントロールすることによって抗ストレス作用をもたらしたと我々は考えております。」

鍼治療の効果の一つとしてストレスを軽減するという効果があるのは一つのポイントですね。ストレスは腰痛の原因の一つと考えられているそうなのでこれは腰痛治療の光明と言えそうです。

ですが、まだたった一か所のツボ刺激のみですので次からが治療本番。

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針(鍼)と筋肉の関係

伊藤剛医師はまず土田さんの背骨に沿ってペンを使って点を描画。背骨の歪み方を視覚的に分かりやすくして鍼灸治療の前後でどのような変化があるのかを検証。

すると特に首から背中にかけてからガタガタに歪んでいるという事が判明。

こわばった周りの筋肉に背骨が色んな方向に引っ張られた結果として歪みが生まれてしまっているとの事。これが腰痛の原因ではないかという診断。

そこでこわばった筋肉を針の刺激で緩めていく事に。

かなり深い位置まで刺しているようですが、鍼灸治療で使われる針の太さは0.2mmほどと極細。

採血で使われる注射針が0.65mm~0.8mm、予防接種などで使われる注射針が大体0.4mm~0.55mmの太さなのでそれよりさらに細い針ですね。

この位細くなると痛みはほとんど感じないそう。

ではなぜ針を打つ事で筋肉のこわばりが取れるのでしょうか?

スポーツ生理学の専門家である大阪体育大学体育学部の石川昌紀教授に依頼して実験。

トレーニング後に筋肉がパンパンに張った状態になっている選手のふくらはぎのツボ、飛揚(ひよう)に針を打って超音波エコーで筋肉の状態を比較検証。

左が治療前で右が治療後。柔らかくなっている部分(緑や赤で示されたエリア)が増加。東洋医学のホントのチカラ ~最新科学で迫る鍼灸(しんきゅう)の秘密~ 鍼灸効果を科学的検証

この事から針治療にはこわばった筋肉を緩める効果があると示唆されます。

石川昌紀教授「針(鍼)で刺激する事で筋肉が柔らかく反応したと。」

そしていよいよ腰部への鍼灸治療が始まりますが、針を打つと痛みを感じている様子。

土田「チクっと痛いんじゃなくて刺した後にズンと。」

伊藤医師「針(鍼)では“響き”とか“得気(とっき)”とかって言うんですけど、それがある方がより反応が起こりやすいですね。」

“響き”とか“得気(とっき)とは針がツボを刺激した際に起こる反応の事なんですね。

さらに針にお灸をつけて熱による刺激も加えると熱が針を伝ってツボを温めていきます。

治療前後で背骨の歪みを比較してみると、青い線の治療前と赤い線の治療後でかなり違いが生まれている事が分かります。東洋医学のホントのチカラ ~最新科学で迫る鍼灸(しんきゅう)の秘密~ 鍼灸治療前後で背骨の歪みが緩和

治療直後には腰を触って筋肉が柔らかくなっている事を実感している様子。

鍼灸効果の仕組み

針の刺す場所にあるツボを刺激することによって治療効果があるというのが東洋医学の考え方ですが、

そのツボの数は全身に数千種類にも及ぶとも。

そのうちでWHO(世界保健機関)が認定しているツボは361種類。

これらが現在の標準的な鍼灸治療に使用されています。

最新の研究によるとツボの多くは神経が集まっていたり、血管が多く分岐するポイントにある事が分かってきており、針の刺激が神経に伝わるとその傷を治そうと血管を拡張させる物質が分泌されて血流が良くなるというのが鍼灸効果のメカニズムと言われています。

これがこわばった筋肉が柔らかくなる仕組みというわけですね。

また、ツボへの刺激は神経を通じて脳に作用する場合もあり、例えば前述の百会への刺激はストレスホルモン、オレキシンを分泌している脳の視床下部に作用してその活動を鎮める作用もあるとされています。

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経絡の効果

さらに東洋医学には“経絡(けいらく)”という概念も存在しています。

というのも先ほどの土田さんが受けた治療では腰から離れた足の甲や内くるぶし、ふくらはぎやすね部分などにも針を打っていたのですが、これが経絡の働きを生かす治療。

この仕組みを解き明かすために番組に集められたのは肩こりに悩んでいるという一般の被験者。

首や肩の慢性的な痛みに長年悩んでいるという方々。後ろを振り返れない方や、マッサージを受けても「硬すぎて指が入らない。」と言われてしまう程に重症な方も。

この検証で鍼灸治療を施すのは明治国際医療大学 鍼灸学部の伊藤和憲教授。鍼灸の科学的メカニズムを研究し、治療も行うスペシャリスト。

まずは背中や肩のツボを刺激して痛みを感じる部位や痛みの感覚を細かくチェック。

さらに二の腕のツボも刺激してチェック。二の腕から首、さらには頭(耳の後ろ)の方へも痛みを感じるという感想。

その他には二の腕から指先に痛みが伝わるという感想をお持ちの方も。

二の腕のツボ刺激によって離れた箇所に痛みを感じるというこの現象は東洋医学では経絡という概念によって説明されています。

痛みがツボのつながりを通じて別の箇所に現れるという経絡で治療に使われるのは主に14種類。

そのメカニズムについての医学的根拠(エビデンス)は今のところ不足している状態で科学的な説明は難しいそう。

それでも二の腕に針を打ってその前後で痛みの感覚を比較してみると、治療前は全く首が回らなかった方も大きく改善を実感している様子。

西洋医学と東洋医学

続いては最先端の医療現場で鍼灸が活用されているケースについて。

西洋医学と東洋医学の融合というわけですね。

番組が向かったのは最先端医療をリードする東京・文京区の東京大学医学部附属病院。

この病院では手術後の痛みの緩和のためにリハビリテーションの現場で鍼灸が活用されているんですね。

※ただし、東大病院での鍼灸治療については現在予約を受け付けていない状態との事なのでご注意ください。

解説は東京大学附属病院リハビリテーション部の粕谷大智博士。ご自身も鍼灸師として治療に携わります。

この日、リハビリテーション部にやって来たのは脊柱管狭窄症を患って足には強い痺れを感じているという患者さん。

脊柱管狭窄症とは背骨にある脊柱管が狭くなる病気で、骨の変形などによって中にある神経が圧迫され、血流が妨げられる事で足に痛みや痺れが起こります。

日本での患者数は高齢者を中心に500万人以上という病気です。

今回の患者さんは2度の手術後に痛みは解消されたものの足の痺れが残ってしまったというケース。

手術で立って歩ける状態には改善したものの、足の痺れにはどうしても耐えられないとの事。

粕谷大智博士「腰で言うと5番目の神経をやられているんですね。すねの所に痛みやしびれが出てきて、そのすねの所のツボに鍼を刺して、電気刺激なんかをすると腰の5番目の神経の中の血流が良くなるっていうのが分かって。」

すねのツボから悪くなっている腰の脊髄に作用して滞っていた血流が改善されるという鍼灸効果でリハビリテーションを進めていく方針。

鍼治療を受けると左右で感じていたという足の温度差も良くなっているという実感の患者さん。

粕谷大智博士の研究グループはこの効果について科学的に検証。

脊柱管狭窄症と診断された患者さんを、

  • 鎮痛剤を飲んだグループ
  • 体操を行ったグループ
  • 針治療を受けたグループ

で比較。

すると鎮痛剤を飲んだグループがわずかに症状が改善、体操をしたグループがわずかに症状が悪化したのに対して、針治療を受けたグループは劇的な症状改善効果があったという研究結果が明らかになっています。東洋医学のホントのチカラ ~最新科学で迫る鍼灸(しんきゅう)の秘密~ 脊柱管狭窄症のリハビリ結果 鎮痛剤や体操との比較

ZCQスコアとはZurich Claudication Questionnaireの略で脊柱管狭窄症(腰部脊柱管狭窄症)に関するアンケート形式の簡易評価法の事。妥当性や信頼性に優れるということでエビデンスも示されている評価法ですね。

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研究グループで粕谷大智博士と共に論文をまとめた東京大学医学部附属病院の岡敬之特任准教授は、

「治療の方向性を決めるに当たって鍼も治療の選択肢の一つに上がってくると思います。東洋医療と西洋医療の混合っていうものは今注目されていますし、そういうエビデンス(医学的根拠)の蓄積というものが重要だと思っています。」

現在、鍼灸治療の併用は全国の20以上の大学病院で実施中。

ただし、鍼灸治療で健康保険が使える保険診療は、

  • 神経痛
  • リウマチ
  • 腰痛症
  • 五十肩
  • けい腕症候群
  • 頸椎捻挫後遺症

などなど。

また、治療を受ける際には医師の同意が必要となっています。

その他の疾患については自費診療の範疇となり、治療費用は全額自己負担。

※事前に病院や鍼灸院へ問い合わせの事

菊地亜美さんが体験した顔に針を打つ美容鍼(びようばり)、頻尿の改善については番組放送後に更新予定となっています。

 - 健康

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