錦織圭選手の2016ATPワールドツアーファイナルズ初戦。ワウリンカ戦
世界のトッププレイヤーのみが出場を許されるATPワールドツアーファイナルズですが、いよいよ錦織圭選手が初戦を迎えましたのでレポートいたします。
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初戦のワウリンカ選手とはどんな選手?
錦織はマッケンローグループに入り、初戦はスイスのスタン・ワウリンカ選手ですね。ランキング3位で、現在5位につけている錦織よりも格上となります。ただ、試合展開によっては勝ったり、負けたりという相手で、グランドスラムも優勝経験があったりですが、そこまで分が悪い相手ではないかなという印象です。
実力差は2セットマッチより3セットマッチのほうがより明確に出るのがテニスの常識ですが、錦織が準優勝に終わったUSオープンではワウリンカを破って準決勝に進みましたしね。これまでの対戦成績(head-to-head)では4-2でワウリンカが勝ち越していますが勝てない相手ではありません。
ワウリンカ選手の胸の赤いマークの謎
この試合はアフタヌーンセッションで組まれていて、コイントスで勝ったワウリンカがサーブを選んだので、錦織はレシーブからの開始です。
ワウリンカはウェア、シューズ、ラケットまで全て日本のヨネックス契約選手なので若干親近感も湧きます。
ウェアの胸の部分に付いた赤いひょうたんのようなマークはポピー(ケシ)の花で英国では毎年11月11日を”Remembarance Day”(戦没者追悼記念日)と呼んで大戦で犠牲になった方々を追悼しているのが関係しています。ちなみに第一次世界大戦の終戦日が1918年11月11日だったことが由来で、1921年からポピーの花がシンボルとして使われているそうです。
世界ランク1位でこの大会に臨むアンディ・マレー選手は2011年のこんな広告にも起用されています。
しっかりポピーの花を着用していますね。
ワウリンカ選手のプレースタイルは?
ワウリンカのプレースタイルですが、圧倒的な高さはないものの、それでも強力なサーブとATPツアーでも屈指の片手バックハンドの持ち主で、フォアハンドもパワフルです。一発でラリーをひっくり返すほどの威力がストロークにありますね。
ただ、フットワークはそんなに走り回れる選手ではないので、重戦車のようなイメージです。片手バックハンダーだけにリターンでバックハンドスライスやブロックリターンも良く使ってきます。ラリー中のスライスは戦術的に使ってくるわけではなくて、あくまで走らされた時にしのぐ為だけに使う印象でプレーの引き出しが多い選手では決してありません。
早い展開のラリーで振り回して、早目にポイントを取るように立ち回ることが錦織勝利のカギになると思います。もたもたしてると一発でカウンターを食らう場面も多いので要注意です。
いよいよ試合開始。~1stセット~
実際の試合が始まってみると、ワウリンカは直前のバーゼル大会で痛めた左膝の影響なのか、かなり精彩を欠いたプレーが目立ちました。エラーが多く、サーブのキレも今一つです。第5、第7ゲームであっさり錦織選手がブレイクをし、そのまま1stセットを取りました。試合開始の第1ゲームで既にブレイクポイントを握る展開だったので、そのうちブレイクするかなという感じで見てましたが本当にあっさり決まった1stセットでした。
第2ゲームで早速、サーブ&ボレーやドロップを錦織が使っていましたが、サーブ&ボレーについてはワウリンカがスライスでリターンする可能性が高いため、その対策として事前に用意していたプランだったそうです。正直、錦織のサーブ&ボレーは見ていて使いどころが悪い場面が散見されるので、あまり使って欲しくない戦術なのですが、今回は功を奏したようで良かったです。早い段階でドロップを試しておくのは非常にいいですね。ドロップを打つ際のフィーリングを早めに掴んでおけば、試合中盤から終盤にかけて、ここぞというときにも自信を持って打てますからね。
途中でトロント大会で錦織がワウリンカを破った際の試合の情報が出ていましたが、
ワウリンカのバック側に53%もボールを集めて、センターに18%、フォア側に29%だったそうです。その結果として、
バック側で58%、センターで17%、フォア側で25%のミスを誘ったという結果でした。
より多く狙っていたバック側でミスも沢山誘うことが出来ていたという事ですね。
強力なバックハンドにも臆する事無く、普通にラリー出来てたとも言えます。
また、この試合のラリー中、両者がどの位置で打っているのかの比較も出ていましたが、ベースラインから平均して30cmぐらいしか下がらない錦織に対して、1m下がってラリーをしているワウリンカという対照的なデータもありましたね。
ベースラインに張り付くようにしてプレーする錦織の特徴が良く現れたデータでした。
錦織ペースで試合が進むか?~2ndセット~
終始錦織ペースで試合が展開される中で、2ndセットは第5ゲームで錦織がブレイクに成功。その際にオンコートでストリングの張り上げを頼んでいましたが、メインが46lbsと言っていました。クロスは40いくつと音声がよく聞こえなかったのですが、試合によっては37とか51とかのかなり広い範囲でテンション指定している事を考えると、錦織にとってはそこそこのテンションで今大会は設定しているみたいですね。
今大会で使われるO2アリーナのサーフェスについて
ちなみに、今大会が行われるO2アリーナは2012年から15年までは遅めのサーフェスだったのが、今年だけ急にサーフェスが速めに設定されているみたいです。
ちなみにその他の9大会のサーフェス速度の設定はこんな感じです。
今大会はやけに速い部類に入ってる事が分かりますね。
試合を振り返って
そうこうしているうちに錦織がブレイクで試合を決めてしまいました。2ndセットに入ってからは、ややワウリンカが復調してワウリンカらしい強力なストロークもちらほら見えましたが、もはや打つ手なしでそのまま押し切られた形ですね。
試合後のインタビューでワウリンカは「本来の実力からすると、試合の出来は良くなかった。僕の日ではなかったようで、錦織選手は試合の頭からプレッシャーをどんどんかけてきた。今日は何も出来なかったよ。なんだか全てのプレーが鈍いような感覚で、よく体が動かない感じだった。」こんなコメントを残しています。
やはり、プレーの質が良くなくて、完敗だったとしているみたいですね。
試合のスタッツ
特にワウリンカの2ndサーブでのポイント獲得率が非常に悪いですね。逆に錦織は1stも2ndもかなり高い数字を残しています。そして、ウィナーの数は錦織19に対して、ワウリンカ12。エラーの数は錦織18に対して、ワウリンカ31と一方的な展開だったことがハッキリとスタッツに出ています。
「サーブで崩れる事無く、ラリーでは完全に主導権を握っていた錦織に対して、不安定なサーブで、ラリーではミスが多すぎたワウリンカ」というのがスタッツから導かれる感想ですね。
速くなったはずのサーフェスでサービスエース数が錦織と同数の5でダブルフォルトは3というのはワウリンカ本来のサービス力からすると寂しすぎる数字ですね。エースは2桁に乗るくらいがワウリンカの普通だと思います。もしそうだとしてもエラー数にここまで差がついてしまうとやっぱり劣勢なわけで・・・。
ワウリンカのプレーが悪すぎた結果のあっけない試合だったので、あまり今後のあてに出来ないような試合になってしまいました。ただ、錦織の1stサーブの確率が47%という所だけは改善しないと、次戦マレー相手にこんな数字では確実に2ndサーブを狙い撃ちされてしまうので、気になるところです。
そんなわけで、次のマレー戦が初戦だと思って気を引き締めて臨んでもらいたいですね。
今シーズン4回目のマレー戦。非常に楽しみです。