W杯でゴールの度にかかる曲「Seven Nation Army」とサッカーとの深い関わりの歴史について
ついに開幕を迎えた地球規模のスポーツイベントである2018FIFAワールドカップロシア大会。4年に1度のサッカー最強国決定戦は世界中の注目を集めますね。そんな大会の最も盛り上がる瞬間であるゴールシーンで会場で流れる曲は”Seven Nation Army”という曲なのですが、なぜこの曲がサッカーと深い関係を築くことになったのでしょうか?その起源・歴史とは?
海外スポーツのファンであれば必ず一度はどこかで聞いたことがあるフレーズで、印象的なメロディーが何度も繰り返すのが特徴のあの曲の謎に迫ります。
「あの曲って何て曲?」と思っていた方も是非チェックしてみてください。
※追記:「W杯でゴールの度にかかる曲」「ゴールシーンで会場で流れる曲」については未確認となっておりますので「選手がピッチに入場する際に流れる曲」に訂正いたします。
スポンサーリンクチャントで使われる曲
2018FIFAワールドカップロシア大会 モロッコ vs イランの試合ハイライト動画から。動画冒頭にかすかに流れている曲が分かるでしょうか?※表示がブロックされますので「YouTubeで見る」からご視聴ください。
ピッチに選手が入場してくる際のオープニング曲のような役割で会場に流れてたりしますね。
ご紹介した動画ではちょっと分かりづらいので欧州選手権、UEFA EURO 2016の決勝戦のワンカットから。
「オ~オオオオ~オ~♪」と繰り返されるサポーターたちのチャントと曲に合わせた手拍子で盛り上がっているのが分かりますね。
2018FIFAワールドカップロシア大会ではピッチに選手が入場してくる際に流れる曲であると同時に、時としてチャントとしてサポーターたちが大合唱する曲としても存在感を発揮していますよね。
ロシア vs サウジアラビアの大会開幕戦では終始”Seven Nation Army”がのメロディが繰り返し流れていました。
ちなみにFIFA U-20女子ワールドカップ2018での選手入場の際にも流れていましたね。
“Seven Nation Army”について
さて、この気になる曲についてですが、曲名は”Seven Nation Army(セヴン・ネイション・アーミー)”、アーティスト名は”The White Stripes(ザ・ホワイト・ストライプス)”となっています。
こちらが視聴動画。
2003年3月にアメリカのロックバンドであるThe White Stripesがリリースした曲ですが、リリース当初はそこまで注目される曲ではなく、リリースから4か月後の2003年7月のUSビルボードチャートのオルタナティブ・ロックチャートで1位を獲得したものの、その後はロングヒットを記録することもなく徐々にランキングから姿を消していきました。
ちなみにイントロから曲の大部分で延々と流れるギターリフ(セミ・アコースティック・ギターを使用)が非常に印象的ですが、実はこれは「来たる未来、映画『007』のジェームズ・ボンドのテーマソングの依頼を受けた時の為に」と作曲のジャック・ホワイトがリリースをためらったなんていう裏話があったりします。
ではこの曲とサッカーを結びつけたものとは一体何だったのでしょうか?
スポンサーリンクその起源はベルギーから?
サッカーとのつながりは実に意外な所からと言われており、その歴史を遡ると2003年10月22日にベルギーのサッカーチームであるクラブ・ブルッヘ(クラブ・ブリュージュ)のサポーター達がUEFAチャンピオンズリーグ 2003-04 対ACミラン戦に臨む直前にイタリア・ミラノのバーで決起集会を行っていた所、この曲を耳にして大合唱した出来事が起源だとされています。
アウェーの地でヨーロッパのビッグクラブであるACミランに挑むにあたって自分たちを奮い立たせるためにもこの曲はぴったりだったんですね。
非常に覚えやすいメロディーとさらにクラブ・ブルッヘのサポーターチームがそのチームカラーから「Blue Amy(ブルーアーミー)」と呼称しており、曲名とマッチしたというのもポイントでしょう。
そしてACミランの本拠地である通称サン・シーロに会場入りしてからも”Seven Nation Army”を延々とチャントし続けるサポーター達。
すると前半33分、クラブ・ブルッヘのペルー人ストライカーのアンドレス・メンドーザが値千金の先制ゴールでネットを揺らします。
そこから1点を守り切ったクラブ・ブルッヘはACミランの敵地で勝ち点3を手に帰路につく事に。
こちらがその試合の映像。
残念ながらホームのACミランサポーターの大歓声のために”Seven Nation Army”は聞こえてきませんが、この試合がサッカーと”Seven Nation Army”を結びつける記念すべき試合となりました。
その後、勝利の歌としてクラブ・ブルッヘで応援歌としてサポーターたちがチャントで使用し続けたため、クラブ側もホーム試合ではゴールの後に”Seven Nation Army”をスタジアムで流すようになります。
ベルギーからイタリアへ
そして、ベルギーの一クラブの応援歌として使われていた”Seven Nation Army”ですが、ある試合がきっかけでイタリアに広まる事となります。
それが2006年2月15日にクラブ・ブルッヘのホームで行われたUEFAカップ 対ASローマ戦。
試合は1-2のスコアでビジターチームのASローマの勝利に終わるのですが、この試合でローマサポーターたちはクラブ・ブルッヘサポーターの歌う”Seven Nation Army”を耳にしてイタリアへ記念として持ち帰ることになるんですね。
それがこの映像。
クラブ・ブルッヘの得点後にサポーターたちが”Seven Nation Army”を大合唱して祝福しているのが分かりますね。
当時ASローマのキャプテンとして国民的な人気を誇った名選手フランチェスコ・トッティはこの試合後のエピソードについてオランダの新聞で振り返っていて、
「ブルッヘの地に入るまで僕たちはこの曲のことなんて全く知らなかった。でも、それからというもの『ポーポポッポッポポーポー♪』というメロディが頭から離れないんだ。ファンタスティックなメロディだし、サポーターたちが一つになるのも感じられた。すぐにこのバンドの曲を買ったよ。」
それからというものイタリアのサッカーファンたちはこの曲を「ポポポソング」と親しみを込めて呼び、徐々にイタリアの地でイタリア代表「アズーリ」の応援歌として広まっていきます。
「ポポポ」と歌うトッティの姿が収められた動画がこちら。えっ・・・割と音痴な王子様?ひょっとしたら違う曲なのかもしれませんが・・・。
まあ音痴がどうかは置いておいて、
かくしてベルギーのサッカーファンがイタリア・ミラノの地で聞いた”Seven Nation Army”はローマを経由してイタリア全土に広がったんですね。
スポンサーリンク2006年FIFAワールドカップ
そして、この年の6月に開幕した2006年FIFAワールドカップドイツ大会、イタリア代表の“非公式”アンセムとして定着した”Seven Nation Army”でしたが、グループステージでガーナ代表と戦ったイタリア代表は2ゴールを決めて2-0の勝利。
この試合中ではサポーターたちがトッティに向けて”Seven Nation Army”を大合唱していました。
そして迎えた7月9日の決勝戦、イタリア代表 vs フランス代表という長い間ライバル関係にある国同士の戦い。
この試合ではフランス代表のジネディーヌ・ジダンがイタリア代表のマルコ・マテラッツィに頭突きを見舞って一発退場するというセンセーショナルな出来事もありましたが、PK戦の末にイタリア代表が優勝。
その際に優勝を決めたアズーリの面々がこの曲を大合唱。
さらにローマに凱旋帰国したイタリア代表のアズーリを”Seven Nation Army”で迎えるローマ市民の熱狂ぶりも記録に残っています。
こちらがその時の熱狂が記録された映像。アズーリたちを乗せたチームバスが到着するとまるで暴動のような騒ぎに。イタリア国旗が振られる中”Seven Nation Army”の大合唱も聞こえて来ますよね。
その後、7月11日に開かれたローリング・ストーンズのミラノ公演に頭突き事件の当事者であるマルコ・マテラッツィ、そしてアレッサンドロ・デル・ピエロが飛び入り参加して、観客と一緒に”Seven Nation Army”を合唱するという出来事もありました。
これを受けてThe White Stripesのジャック・ホワイトは、
「イタリアの人々にこの曲が自分たちの物のように受け入れられていることを大変誇りに思う。」
というコメントを寄せています。
スポンサーリンクEUROでの使用例
その後2008年にスイスとオーストリアで共同開催されたUEFA EURO 2008では試合前の入場曲に”Seven Nation Army”が使用され、EURO2012、EURO2016ではゴール後にスタジアムのスピーカーシステムから流されるようになります。
EURO2008ではBelliniの”Samba De Janeiro”がゴール後の曲として使用されていたんですが、サポーターたちに支持されたのは”Seven Nation Army”だったという話も。
“Samba De Janeiro”も十分に有名な曲なんですが”Seven Nation Army”には及ばなかったというわけですね。
ちなみにこちらが”Samba De Janeiro”の視聴動画。日本でもサンバと言えばこの曲みたいに連想される定番曲。
ちなみにEURO2016フランス大会ではパリ出身のDJであるデヴィッド・ゲッタによるリミックスバージョンが使用されているのですが、こちらがEURO2016閉会式の様子。※表示がブロックされますので「この動画はYouTubeでご覧ください」からご視聴ください。
ここまで大々的に演奏されるようになってくるともはやサッカーと言えば”Seven Nation Army”というイメージも定着している感がありますよね。
特にサッカーの中心地として語られることも多いヨーロッパにおいては顕著ですね。