ビジネス面から見る卓球のTリーグ。関連企業の思惑とは?卓球王国ニッポン復活のカギは?
10月24日に開幕を迎えて日本卓球界の新時代の幕開けとなった卓球国内リーグの「Tリーグ」。卓球王国ニッポンの復活を目指して日本初のプロ選手が参加する卓球の新リーグですが、卓球をビジネス的にも成功させながらメジャースポーツへと押し上げる事が出来るのか?各企業が考えるロードマップとは一体どんなものなのでしょうか?その裏側に迫ります。
10月24日放送のテレビ東京「WBS(ワールドビジネスサテライト)」の内容から詳しくご紹介します。
スポンサーリンクTリーグとは
Tリーグ開幕戦の舞台となったのは東京都墨田区にある相撲の聖地、両国国技館。
大勢のファンが会場に詰め掛け、会場外には大相撲を彷彿とさせるのぼりが立てられています。流石に大相撲のように巨大なものではありませんが。
華々しく開幕したリーグ初戦では水谷隼、張本智和などのスター選手が所属する木下マイスター東京と韓国や香港などの海外スター選手を擁するT.T彩たまが激突。
Tリーグでは全試合を会場中央に設置された一台の卓球台で開催するという大相撲観戦スタイルを採用。通常の卓球大会とは違いかなりショーアップされた印象です。
シングルス3試合、ダブルス1試合を行い勝敗を決します。
チーム数は男女4チームずつの計8チーム。各チームの本拠地は関東から沖縄まで分散しています。
【男子】
- T.T彩たま(埼玉県)
- 木下マイスター東京(東京都)
- 岡山リベッツ(岡山県)
- 琉球アスティーダ(沖縄県)
【女子】
- 木下アビエル神奈川(神奈川県)
- TOP名古屋(名古屋市)
- 日本生命レッドエルフ(大阪府)
- 日本ペイントマレッツ(大阪市)
東京オリンピックに向けて卓球ニッポンの強化という側面もあるこのTリーグですが、その思惑とは?
スポンサーリンク木下マイスター東京
日本卓球界を牽引してきた男子のスター選手、水谷準は東京マイスター東京所属選手。
日本国内にプロリーグが存在していなかったために2017年まではロシアリーグに参戦して腕を磨いてきました。
水谷「日本でプレーすることによって、やはり練習時間がかなりあるので、しっかり自分の技術を磨くことが出来ますし、今までみたいに移動時間に時間を取られなくていいので、僕はそこがすごく日本でやれる事をありがたく感じています。」
木下マイスター東京はハウスメーカーの木下工務店などを傘下に置く木下グループがチームを全面的に運営。
水谷準の要望を受けて国際基準を満たす卓球台を練習場に導入した他、実際に国際試合で使用される赤い床材を設置しました。
トレーニングルーム内には特注の酸素カプセルも設置されています。
酸素カプセルのO2BOX(オーツーボックス)は国産メーカーとなっていますね。コチラが公式HP
選手専用の大浴場にはサウナも備えられています。
日本代表クラスの張本智和、水谷準、大島裕哉、松平健太などの選手を集め多額の投資を行う木下グループ。
その狙いとは?
その取締役である川村卓也は、
「卓球のチームを作って、かつそこから結果として木下グループが知れ渡ると。いうところで効果的なものは後から生まれてくるのかなと。」
木下グループとしては「卓球=木下」のイメージを浸透させて、今後は卓球スクールなどのビジネスも多角的に展開していく予定であるとの事。
T.T彩たま
そんな木下グループとは対照的なのが同じく開幕カードに登場した埼玉を拠点とするT.T彩たま。
その運営母体は埼玉県を中心に中古車販売などを展開するトーサイアポ。
T.T彩たまの資本金9,800万円は自社で用意したものの、壁となったのが多額の運営資金でした。
トーアイサポの柏原哲郎社長は、
「色んな方にスポンサーを頼みに行っても、まだ全く知られてなかったんで。1200枚くらいの名刺は配ってると思いますけど、実質に足も運んで300件ぐらい回りましたかね。」
埼玉県内の企業を中心に粘り強く交渉を続けた結果、最終的には50社以上とスポンサー契約を結び、資金調達に成功しました。
また、苦労したのがTリーグにある、
「世界ランク10位以内相当の選手1人以上と契約を義務付ける」
という厳しい独自ルール・レギュレーションへの対応。
T.T彩たまに所属する日本人エースの吉村真晴ですら世界ランクは27位。そこで香港出身で世界ランク9位のトップランカーである黄鎮延をチームに招聘。※世界ランクはいずれも2018年10月時点。
他にも韓国やポルトガルの選手も招聘して海外勢と日本人選手の混成チームを作りました。
さらに、7月に3歳になったばかりの埼玉県内に住む天才卓球少女の平 鈴莉空(たいら りりあ)さんと契約を結びました。3歳で卓球を始めた福原愛さんのように英才教育を施して将来的なスター選手の育成にも挑みます。
こうした話題作りにも余念がなく、観客動員の目標数とは毎試合2000人を目指します。
スポンサーリンク関連企業の思惑
各企業が手探りで始まったTリーグですが、卓球ブームの到来を予測して先行投資をする企業も。
それがアンダーアーマーを日本国内に展開するドーム。
今回Tリーグ全チームのユニフォームスポンサーに名乗りを上げています。
かつてファッションモデルを務めた事もある木下アビエル神奈川所属の浜本由惟は、
「すごく動きやすい上にデザインも色もかわいいので女の子全員が着たくなるような服だと思います。」
とメディア発表の場でコメント。
Tリーグのユニフォームは機能面に加えてデザイン性を重視したそう。
卓球用品を手掛けるのはこれが初となるアンダーアーマー。
スポンサーを引き受けた狙いにはしたたかな企業戦略がありました。
ドームの安田秀一会長は、
「アンダーアーマー自体がやっぱり基本アメリカが中心なので、このアジアのマーケットというのが我々(日本)が引っ張って行かなきゃいけない。その中でやっぱり卓球っていうのはアジアの中で大きなスポーツですね。なので是非挑戦したいなと。」
また、卓球人気の高まりを見越して、これまで個人経営が多かった卓球スクールビジネスに大手スポーツクラブのコナミも参入。
分配金・放映権そして未来
前途洋々に見えるTリーグですが、プロリーグとして利益を生み出すことは簡単ではありません。
Tリーグの試合のチケットの価格帯は1,000円~10万円とかなりの幅があります。
1試合当たり2000人が動員できた場合でもチームへの分配金は1,000万円未満と試算されています。
Tリーグは収入減増の為に今後はアジアやヨーロッパに試合映像を配信し、その放映権ビジネスも確立していく考えです。
Tリーグの松下浩二チェアマンは、
「Tリーグというのは日本の卓球界の未来を背負っている所もありますので、選手それぞれTリーグを活用して2020年(東京五輪)に結び付けて欲しいなと。」
Tリーグをビジネス的にも成功させて、東京オリンピックにつなげる事は出来るのか?
リーグと企業が二人三脚で挑むダブルスマッチが始まります。