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日本プロ野球界で着用者急増中のフェイスガード付きヘルメット。あの名称や歴史について


シンプルなヘルメットを着用している野球選手が大多数を占める中、日本プロ野球界でも着用者が増えているのがフェイスガード付きヘルメットですね。何となくメジャー仕様な雰囲気があるあの独特なプロテクターですが、あの名称は一体何なのでしょうか?そしてその元祖とは?

というわけで、あの野球用具(フェイスガード、フェースガード付きヘルメット)の裏にある歴史について調べてみました。

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名称は?

メジャーリーグを代表するバッターと言えば大谷翔平のチームメイトであるロサンゼルス・エンゼルスのマイク・トラウトやワシントン・ナショナルズのブライス・ハーパー、デトロイト・タイガースのミゲル・カブレラ、ニューヨーク・ヤンキースのジャンカルロ・スタントンなどの名前が挙げられますが、これらの強打者たちに共通するのがヘルメットに付いたプロテクター。

あの気になる用具の名前ですが、正式名称は、

C-Flap(Cフラップ)

と呼ばれています。

金属製では無く、ポリカーボネート製。※他社製品だとABS樹脂の場合も

耳当ての部分の下に3つの穴を開けてビス止めして装着する形。

価格は日本だと並行輸入品は4000円ちょっと。アメリカだと大体20ドル(2000円ちょっと)ぐらいですね。

コチラが販売元であるMarkwort Sporting Goods(マルクウォルト社、またはマークワート社)によるCフラップの紹介ビデオ。

上記の動画の通り、実は元々こういった仕様のヘルメットが存在しているわけでは無く、後付けのオプションのような感じで通常のヘルメットの耳当てを延長するイメージで取り付ける用具なんですね。

現在ではMLBにヘルメットなどの用具を提供するRawlings(ローリングス社)がCフラップを必要とする選手の為に、ルールで定められている安全基準を満たすように一手に加工を担っているそう。チームカラーに統一してペイントするという作業も行っていますね。

Cフラップの装着には穴空けの作業が必要で穴を開けた時点で元々のヘルメットの安全基準が損なわれるので、勝手に選手の方でCフラップを付けたりという事は出来ないんですね。

こんな事情からRawlings(ローリングス社)が仲介を担うという手順が必要になるんですね。

ちなみに2018年の夏にはRawlings(ローリングス社)からも「EXT Flap(EXTフラップ)」または「R-Flap(Rフラップ)」という商品名でプロテクターが販売されているようですね。初めからEXT Flapが装着(一体成型)された状態のヘルメット「Mach Helmet (マッハヘルメット)」も販売されています。

その他にはEaston(イーストン社)からExtended Jaw Guard(エクステンデッド・ジョー・ガード)という名称を用いて同様の製品が販売されています。

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Cフラップの元祖(?)スタントン

先ほど挙げたMLBの4選手のうちで最も早くからこのCフラップを着けていたのがジャンカルロ・スタントン。

2014年シーズンに当時フロリダ・マーリンズに所属していた際、9月11日のミルウォーキー・ブルワーズ戦で、マイク・ファイヤーズの投球が顔面(頬)を直撃し負傷退場。

後の診断で顔面の複雑骨折が分かり、シーズンの残り試合を全て欠場するというアクシデントに見舞われます。

こちらが当時の映像。デッドボールを当てたマイク・ファイアーズも思わず頭を抱える出来事でした。スローモーションで見ると、頬の辺りにボールが直撃しているのがよく分かります。

※かなり強烈な映像なので視聴の際にはくれぐれもご注意ください。

その後にケガから復帰をする際にフロリダ・マーリンズは公式アナウンスとしてジャンカルロ・スタントンがフェイスガード付きのヘルメットを着用する事を2015年春に発表。そして3月を迎える頃にいよいよ初お披露目となります。

これがその時の写真。

あれ?Cフラップとは違いますよね?

実はこれはCフラップとは似て非なるもの。

こちらのヘルメット(より正確にはフェースガードのパーツ)はアメリカンフットボールなどのヘルメット製作などを手掛けるSchutt Sports(シャット社)が提供したもので球速100マイル(約160km)の投球にも耐えられるという代物。

カーボンスチール(炭素鋼)製のガード部分の先端にさりげなくアルファベットの“G”が見えるでしょうか?

これはジャンカルロ・スタントン(Giancarlo Cruz-Michael Stanton)のイニシャルから取られたというスタントン用スペシャル仕様なんですね。

実はアメリカンフットボール(NFL)では選手個人にスぺシャル仕様の用具を提供するのがルールで禁止されているので、野球選手であるスタントンが同社のスペシャル用具を使用した選手というのは何だか皮肉。

ある意味元祖は元祖でもSchutt Sports(シャット社)のスペシャル用具を使ったプロ野球選手の元祖ですね。何だかややこしいですが。

スタントンはマイアミ・マーリンズのチームオーナーであるジェフリー・ローリアのプライベートジェットに同乗して工場へ直接赴いて、製作されたヘルメットのテストやサイズ合わせを行ったとか。スタントン用のワンオフ品なので一般販売はされないですが価格は500ドル~1000ドルだそう。

また、このSchutt Sports製ガードが付いたヘルメットを使用する前はアメリカンフットボールに使用するような顎部分を全てカバーするようなフェイスガードが着いたヘルメットもテストしたようですが、

「顔全体を覆うタイプのヘルメットは好きじゃなかった。」「考えていたより(視界に入って)気になる。」

という本人コメントが残っていて、お気に召さなかったようですね。

その後に2016年シーズンからCフラップに鞍替えしたスタントンはその後も継続して使用して今に至ります。

特に右投手を相手にする場合にCフラップを取り付けて、左投手に対してはCフラップの無い通常のヘルメットを着用するように使い分けているようですね。

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Cフラップの歴史・名前の由来

スタントンをかなり取り上げましたが、このフェースガード(Cフラップ)の元祖はスタントンというわけではありません。

実はそれ以前にも2013年シーズンの途中からジェイソン・ヘイワード(Jason Heyward)がCフラップと思しきものを装着。当時はアトランタ・ブレーブス所属でしたね。ジェイソン・ヘイワードはその後も継続使用しているのでCフラップは彼のトレードマーク。

2013年シーズンのジェイソン・ヘイワードのハイライト動画がコチラ。

ジェイソン・ヘイワードがフェースガードを使用するようになったのはコチラのデッドボールが原因。

※「動画を再生できません」と表示されますので「この動画はYouTubeでご覧ください。」からご視聴ください。

※かなり強烈な映像なので視聴の際にはくれぐれもご注意ください。

スローで見ると耳当てに当たった後に逸れて顎付近にボールが向かっているようですがこの衝撃で顎を骨折。デッドボール直後のリアクションを見ると即座に顎の異変を察知している様子。何度か血の混ざった唾を吐く様子も捉えられていますね。それでも最終的にはトレーナーに付き添われながら自らの足で歩いて退場。

この他にもフェースガード付きヘルメットの着用例はデビッド・ジャスティス、テレンス・ロング、ケビン・サイツァー、マーロン・バード、チャーリー・ヘイズ、チェイス・ヘッドリーなどなど。

少し変わりダネとしては2018年の6月9日の試合で両頬のフェースガードが着いたヘルメット(ダブルCフラップ、トゥーサイドCフラップまたは“マグニートーヘルメット”)を着用したフィラデルフィア・フィリーズのリース・ホスキンス(Rhys Hoskins)もいますね。

コチラはチームの公式ツイッターにアップされた画像。「どっちが似合うかな?」というコメントと共にX-MENシリーズの最大の敵として登場するマグニートーの画像が。

このマグニートーヘルメットを着用してキッチリと3ランホームランも放ったリース・ホスキンス。

5月28日の試合で自打球を顎に当ててしまったリース・ホスキンスは顎に亀裂骨折を負ってしまい、その怪我が癒えるまではという事で着用を開始したのがきっかけ。

これがその自打球の映像。

その後に骨折から回復した際には左頬だけにフェースガードが着いたものに変更しているようですね。

本人が後に語ったコメントによると他の選手の使用しているCフラップよりもやや下の位置に装着されていて、より顎を守る点を強化しているとか。

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その他にも続々と記録が出てきますが、このCフラップが初めに開発されたのはどのくらい前の話だと思いますか?

実は1970年代なんです。

1972年から1999年にかけてアトランタ・ブレーブスでチームドクターとして勤めていたロバート・クロー(Robert Crow)医師がその開発者。

1970年に着想して1987年には特許も取得済みとなっています。何と日本においても同時期に特許取得済みなんだそうです!まあ何と先見の明!と言いたい所ですがアメリカ・日本どちらも特許の権利は既に消滅。

ロバート・クロー医師はその後の2004年に前述のMarkwort Sporting Goods(マルクウォルト社、マークワート社)にCフラップの販売権を譲渡して今に至ります。

このCフラップという名称の由来についてですが、英語でヘルメットの耳当て部を”earflap(イヤーフラップ)”と呼ぶのと同様に「flap (フラップ)=蓋の意味」が名称に付けられているのはいいとしてもそのアルファベット“C”の意味が気になりませんか?

これは頬を意味する“cheek”の「C」と、

開発者の“クロー(Crow)医師のイニシャル”の「C」から取られたものだそうです。

以前からバッターの顔を守る用具の必要性を感じていたというロバート・クロー医師は整形外科医という事もあってオルソプラストという関節の固定などに使う装具をキッチンのフライパンで熱してテストしていた時にこの用具を思いついたようで、ブレーブスの春季キャンプに持ち込んだり、その後、大学(ミシガン州のウェイン州立大学)に強度テストや開発を協力してもらったり、さらに追加でプロ選手たちにテストしてもらったりという段階を経て特許取得まで至ったようですね。

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Cフラップの真の元祖?

ロバート・クロー医師は記憶が定かではないと言いつつもCフラップの最初期の使用者として当時オークランド・アスレチックスに所属していたテリー・スタインバック(Terry Steinbach)捕手の名前を挙げています。

その使用に至った経緯については、1988年5月に目の奥の眼窩骨骨折の怪我を負い、そのリハビリ過程で試合に出場するために使用したとの事。

導入当初はチームカラーのグリーンの物が用意できずに仕方なく黒いCフラップを使用。その後にグリーンに塗り直して使用を継続しています。

コチラが1988年のオールスターゲームでテリー・スタインバック捕手がホームランを放った時の映像。バッチリとCフラップが装着されているのが分かりますね。

この他にも当時Cフラップを着けていた選手は数名いたようですが、とりあえず映像としてしっかり残っていて、晴れの舞台であるオールスター戦でしっかり足跡を残したテリー・スタインバック捕手を一応元祖としてご紹介しておきます。

ちなみにこの年にオークランド・アスレチックスはワールドシリーズにも進出していますしね。

この当時のヘルメットの安全基準についてはちょっと不明ですが、流石に勝手に着けたものではないと信じたいw

その後1989年まででテリー・スタインバック捕手はCフラップの使用をやめたとの事で彼のトレードマークにはならなかったようですね。

Cフラップ以前のフェイスガードの歴史

Cフラップ以前ではアメリカンフットボールで使用されるような(スタントンがテストしたタイプの)ヘルメットが怪我をした選手の為に支給される事がありました。

ピッツバーグ・パイレーツに所属したデーブ・パーカーが使用した姿が代表的。日本プロ野球界で着用者急増中のフェイスガード付きヘルメット。アメフト型ヘルメットを着けるデーブ・パーカー

1978年6月30日に行われた試合の本塁突入の際にホームベース上でキャッチャーと交錯した際に顎と頬骨を骨折する怪我を負ったデーブ・パーカーがアメフト型ヘルメットを使用したんですが、実は怪我からわずか2週間後というタイミングで使用したのが以下の様なマスク。左半分は黄色、右半分は黒く塗られたそう。日本プロ野球界で着用者急増中のフェイスガード付きヘルメット。ホッケーマスクの加工品を着けるデーブ・パーカー

いや・・・ヤバいビジュアルですよね。ホラー映画「13日の金曜日」のジェイソンもびっくり。ちなみに「13日の金曜日」は1980年に公開なのでデーブ・パーカーの方が先。

しかもジェイソンがホッケーマスクを着けるのは1982年公開の3作目「13日の金曜日 PART3」からなのでかなり先の話。まあ流石にデーブ・パーカーがジェイソンのモデルでは無いでしょうけど。(※余談ですが、ジェイソンがホッケーマスクを着けるきっかけは撮影クルーのバッグにたまたま入っていたホッケーマスクを試しに着けてみたらいい具合になったから採用したんだそうです。)

蛇足ですが映画「マッドマックス2」で敵方の大ボスとして登場するヒューマンガスもホッケーマスク姿が特徴で、コチラは1981年公開なので微妙にジェイソンよりヒューマンガスの方が早いというどうでもいい情報も。

話が脱線しましたが、以下のようなカラー写真で見るとまだマシ。ホッケーマスクを半分に切って加工した手作り感溢れるマスクで、1打席だけ立ったという記録が残っているそうです。ちなみに結果は敬遠だったとの事。不気味なマスクに恐れをなしたピッチャーのコントロールが乱れたのかも?日本プロ野球界で着用者急増中のフェイスガード付きヘルメット。ホッケーマスクの加工品を着けるデーブ・パーカー02

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さらに、一塁ベースに着くホッケーマスク男の恐怖の画像も残っています。早く逃げて~。この他にアクリル樹脂で作ったマスクも用意されたようですが使用はされず。そのアクリルマスクに関しては画像も残っていない幻の逸品状態。日本プロ野球界で着用者急増中のフェイスガード付きヘルメット。ホッケーマスクの加工品を着けるデーブ・パーカー03

流石にこのままでは視界が余りにも狭いという事で同じピッツバーグに本拠地を置くアメリカンフットボールのプロチームであるピッツバーグ・スティーラーズに掛け合って調達したのが2本のプロテクションバーが装着されたアメフト用ヘルメットからアイディアを借りたもの。顎紐もありますよね。日本プロ野球界で着用者急増中のフェイスガード付きヘルメット。2本バータイプのヘルメットを着けるデーブ・パーカー03

ただ、これでも視界が狭い(バーが高すぎて視界に入ってしまう)という事で辿り付いたのが既に紹介したヘルメット。こちらもアメフト用ヘルメットからの転用。ただし、バッティング時には使用せずに走塁時にのみ使用したそうです。

その他は1980年に2本バーを半分に切った状態で使用したエリス・バレンタインや、同じく1980年に黒くペイントしたバーのついたヘルメットを使用したゲイリー・ロイニッケなど。※画像左がバレンタイン、右がロイニッケ。1980年 エリス・バレンタイン ゲイリー・ロイニッケ 2本バータイプのカスタムヘルメット

他には1994年のチャーリー・ヘイズ、1998年のオーティス・ニクソンなどもフェイスガード付きヘルメットを着用。

これより前だと1959年にビリー・マーチンの為にアメフト型ヘルメットが用意されたというニューヨーク・タイムスの記事が残っているそうですが、結局そのシーズンはプレーしなかったそうで陽の目を見る事は無かったそう。

さらに1905年にはこんなものまで。特許取得済みとはなっていますが実際に使用されたのかどうかは記録が残っていないので詳細不明。

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ちなみに日本プロ野球界では2017年シーズンの阪神タイガース、鳥谷敬は5月24日に巨人戦で顔面付近へのデッドボールで鼻骨骨折を負った翌日にフェースガードを着けて打席に立ったこともありました。

コチラは完全にフェースガード型ですね。※その後の5月31日の試合ではCフラップではないものの同様の形のフェースガード付きヘルメットを被って試合に登場しています。日本プロ野球界で着用者急増中のフェーススガード付きヘルメット。あの名称や歴史について。2017年の阪神の鳥谷

その以前は2005年の福岡ソフトバンクホークスの2軍試合で江川智晃がフェースガード付きヘルメットを着用。

その他には千葉ロッテマリーンズでプレーしたフリオ・ズレータが2007年から着用をスタートさせているという情報がありますが、当時は自分でネットで注文して購入したものだったとか。

コチラが2007年シーズンの開幕戦で当時日本ハムファイターズに所属していたダルビッシュ有から満塁ホームランを打った際の映像。

4番に座るズレータがCフラップを着けて豪快にかっ飛ばしていますね。

2008年6月7日の対読売ジャイアンツ戦で、エイドリアン・バーンサイドから放った打球は東京ドームの天井部にある照明設備に当てて認定ホームランに。その際もCフラップを着けていたズレータ。

1999年、福岡ダイエーホークスの秋山幸二は松坂大輔の投じた144kmが顔面を直撃して骨折。その後にフェースガード付きヘルメット着用。頬の位置に背番号の「1」がペイントされているのがちょっと粋な感じ。日本プロ野球界で着用者急増中のフェーススガード付きヘルメット。あの名称や歴史について。1999年9月25日のダイエー秋山幸二

コチラがそのデッドボールの映像。

そしてコチラがフェースガード付きヘルメットを着けて試合に臨んだ1999年9月25日の映像。

こぼれ話としては先ほどの江川智晃のケースでは当時2軍監督をしていたのが秋山幸二その人だった事もあって、自身の経験からフェースガード付きヘルメットの着用で復帰する事を勧めたとか。

もっと遡ると近鉄バファローズの“赤鬼”の愛称で知られるチャーリー・マニエルが1979年6月9日に対ロッテ戦でデッドボールを受けて顎を複雑骨折した後、8月17日に復帰した際にアメフト型のヘルメットを着用して出場。後のインタビューで「かなり見えづらかった。」と漏らしていたとか。

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Cフラップの流行

以前はデッドボールを受けた選手が怪我からの復帰時期に繰り返し怪我を負わないようにという「リハビリ的」な意味合いで使用されるケースが目立ちましたが、現在では怪我の防止効果から着用する選手が急増しています。

特に怪我を負ったわけでは無いのに怪我の防止効果を狙って着用した元祖はヤディアー・モリーナとも言われているそう。こういった名選手が率先して着用する事で他の選手にも徐々に伝播。

そして2018年シーズンには流行の兆しが感じ取れるほどに。

それ以前は見た目の異様さだったり、メジャーリーグ特有のマッチョ文化(痛がったり、弱みを見せたりをタブーとする文化)だったりの影響であまり歓迎されないアイテムだったようです。

1920年にクリーブランド・インディアンスのレイ・チャップマン(Ray Chapman)が頭部に受けたデッドボールが原因で頭蓋骨骨折を負い、その後に死亡するという悲惨な事故が起きてなおも、野球界ではヘルメットを「臆病者の道具」と見なして、頑なに着用しようとしなかったなんて話も伝わっているぐらいですからこのマッチョ文化は根深いですよね。

まあそんな時代はもう過去のものというわけで、今では肘当てやすね当てと同じように打者の防具としてフェースガード付きヘルメットは当然の備えとして定着しつつあるようです。

さらに各球団を代表するようなバッターたちがこぞって着用するようになると多くの人が目にする機会も増え、さらにバッターからするとデッドボールの恐怖に怯えるよりも安心感を得られるというのが最大のメリット。

一説によると視野を限定させることで集中力が増し、目の下に障害物がある事で自然と地面を周辺視野で知覚するようになり、顎を引ける効果があるとか。

顎を引けると何が良いのか?と言うと、舌を口蓋(口内の上側の部分)にしっかりと付けている状態と離している状態で比べると、舌を付けている方が下半身の力を発揮しやすいそうで、顎を引くことで舌が口蓋に付きやすくなり、ひいてはパワーアップにつながるという原理だそうです(2019年2月14日号 雑誌「Tarzan」より)。

2017年シーズンにはミルウォーキー・ブルワーズ所属のキーオン・ブロクストンがCフラップにデッドボールを当てて大怪我を免れるというシーンも実際に起こっていますので、彼からしたらまさに九死に一生を得た出来事。

コチラがその動画。

Cフラップに当たってもなお、鼻血が出るほどの衝撃で意識も朦朧としている様子で、この後に負傷交代となるのですが、そのまま顔面(スロー映像からすると目や頬付近)に直撃していたらスタントンと同じく大怪我、あるいは生命にかかわるほどの大事に至っていたかもしれませんね。解説も「フェースガードを着けていたのが幸運ですが、それでもこれですからね。」とコメントしていますよね。

このCフラップですが、長らく一手に販売を担ってきたMarkwort Sporting Goods(マルクウォルト社、マークワート社)の見解としては、それまで同社の上げる利益のうちの約1%ほどという小さなマーケットにしか過ぎなかったものが、ここ3年(2015年~2018)では15%までに上昇していてその広まりを確実に感じているとの事。

さらにミルウォーキー・ブルワーズではマイナーリーグにおいて全ての選手にこのCフラップの着用を義務付けるようにチーム内に通達したそうで、“球団として”Cフラップを導入した初のチームとなるそう。※正確には2017年時点でシングルA以下のマイナーリーグに所属する選手はマイナーリーグのキャリア中はずっとCフラップの着用を義務付け。

ちなみに韓国プロ野球界(KBOリーグ)ではもう少し早い段階から流行していたそうで韓国国内では「グラディエーター・ガード」なんて呼び名もあるとか。日本プロ野球界で着用者急増中のフェーススガード付きヘルメット。あの名称や歴史について。韓国では。

左上は2001年に着用した沈 正洙(シム・ジョンス)。韓国プロ野球(KBOリーグ)では恐らく彼がCフラップの先駆者。

また、台湾野球界でも同様に流行の波が早くから来ていたそう。

このMLBにおけるCフラップの流行ですが、同社ではその流行の兆しがくだんのジャンカルロ・スタントンのショッキングな出来事にあったのではないか?と推測しています。

Cフラップの元祖では無いものの、その流行を作ったのがスタントンだったというのは怪我の功名と言うか何と言うか。

Rawlings(ローリングス社)ではCフラップの使用率について、それまで1球団に1人いるかいないかぐらいの使用率だったものが1球団に4人ぐらいのペースで使用率がグッと伸びているとしていますね。

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Cフラップに慣れない選手も

しかしながらミルウォーキー・ブルワーズのマイナーリーグレベルでの完全着用義務化などの施策は別として、Cフラップを着用しない事を選ぶ選手もしっかり存在していて、

マット・アダムス (Matt Adams)がその一人。

セントルイス・カージナルス、アトランタ・ブレーブスなどでプレーした左の大砲はそのキャリア中に多くのCフラップユーザーとチームメイト(前述のヤディアー・モリーナやジェイソン・ヘイワードなど)になっていますが、

「フェースガード付きは頭部のバランスが気になるので慣れるのに時間がかかりそう。」

とコメントしてCフラップとは距離を置いている様子。

その他にもワシントン・ナショナルズのライアン・ジマーマン (Ryan Zimmerman)は「(Cフラップを)使おうと思った事は一度も無い。」と明言。

また、韓国プロ野球界(KBOリーグ)の話題では、フェースガード付きヘルメットを被るようになってから「むしろ投手がデッドボールを恐れずに内角攻めをしてくるようになったように感じる。」という理由で使用を取りやめた選手もいるそう。

これは日本のプロ野球界でも引退した偉大な先輩方が時折指摘している事に通じるエピソードかもしれませんね。

「避けるのもバッターの技術。」「最近のバッターはデッドボールを避ける技術が未熟だ。」なんて言い方をされていますしね。

日本のプロ野球だと中日ドラゴンズの例を紹介すると、

京田陽太は「全く興味がない。今後付けるつもりもない。」

堂上直倫は「(Cフラップは)強打者の証。ホームランバッターが似合う物で僕はキャラクターが違う。」

福田永将は「元々ヘルメットがあまり合っていないので、重くなってもっと動いてしまう。」

本人曰く、頭の形が四角くてヘルメットを4点で支える感じになっており、スペースが空いてグラグラする所にさらに余計なものを付けたらバランスが悪くなって使いづらくなると懸念している様子ですね。

平田良介は「今まで顎にデッドボールを受けたことがないので、必要性は感じません。」

高橋周平は「意味があれば付けるでしょうけど、別に意味は感じません。」

大島洋平は「去年(2018年)のシーズン終盤から付けようと思っていました。逆にボールが見やすいと聞いたからです。」

実は着用に前向きだった事を明かした大島洋平ですが、Cフラップ取り付けの為には自分で取り寄せて業者にお願いして付ける必要があるそうで、さらには取り付けると規格外になって保証適用外になるらしいという噂話を聞いて思いとどまったそうです。

NPB所属の外国人選手の意見では、

マイナーリーグ、メジャーリーグ(ヤンキース、ブレーブス)、メキシコリーグと渡り歩いてきたソイロ・アルモンテは「顔や頭への投球を深刻に考えたことがありません。(故郷の)ドミニカでも付けたことはありません。何より、トレードマークのひげが隠れてしまうので。」

ソイロ・アルモンテにとっては立派なおヒゲがフェースガード代わりみたいですねw

キューバ出身でメジャーリーグではホワイトソックスでもプレーしたダヤン・ビシエドは「怪我の防止になると思いますが、付けるつもりはありません。ただ、チームが義務付ければ従います。」との事。

首脳陣の考えについて触れてみると、

中日ドラゴンズの村上隆行打撃コーチは「チームとして導入する予定はありません。どちらかと言えば、デッドボールを避ける練習をした方が良い。」

やはりデッドボールを避けるのも技術という意見は根強いようですね。

村上コーチによれば、軸足に体重を残して球を見極める技術(ステイバック)の習得が重要で、デッドボールを恐れず前のめりに打ちに行くクセが付くと打撃フォームを崩す要因になりかねないという見解だそうです。

そんな村上コーチは自身の現役時代にデッドボールを避ける練習もしたそうで、ティーバッティング中に時折、頭を目がけてボールを投げてもらってそれを避ける練習をしていたとか。

ボクサーのミット打ちみたいなイメージでしょうか。

日本のプロ野球界では?

既に多分に触れていますが、日本のプロ野球界のフェースガード付きヘルメットについて。

2018年シーズンの日本シリーズでは福岡ソフトバンクホークスの柳田悠岐や中村晃、広島東洋カープの鈴木誠也や丸佳浩などが着けているのを見て気になった方もいると思いますが、MLB同様にやはり強打者が着けているイメージが強いですね。

ちなみに丸佳浩はこの中でも最も早くCフラップを導入していて日本人選手におけるCフラップの元祖とも言われているとか。

柳田悠岐は2018年9月7日の練習でCフラップ付きヘルメットを手に球場に現れて打撃練習で使用したものの練習後には「ノーグッド」「重いし、(肩に)当たる」とコメントを残して使用断念。それでも9月30日の練習では再使用。※この時は松田宣浩、川島慶三、中村晃の3選手も同時にテスト。

実は9月16日の練習中に西武の栗山巧の打球が頭部に直撃するというアクシデントがあった為に再度使用するきっかけになったのではないかとも言われていますね。この時は「内角攻めへの恐怖心が無くなって、より大胆に振れる。」とコメントするまでに。

さらに2019年シーズンのオープン戦中からはCフラップの使用を取りやめてシーズンインを迎えた柳田悠岐。

2月の宮崎キャンプ中に室内練習場で打ち込みを終えた所で右肩付近から流血していた事にロッカーで気付くという出来事があったそうで、恐らくテイクバック(テークバック)に入る際にガード部が肩に食い込んでいたせいじゃないかとの事。

2018年9月7日に初めにテストした際にも「肩に当たる」と気になっていた懸念ポイントが遂にネックになってしまったわけですね。肩なので“ネック”じゃなくて“ショルダー”ですがw

そんな中、Cフラップの先駆者であり、ヘビーユーザーと言えるのが東京ヤクルトスワローズ(※ソフトバンクに移籍)のウラディミール・バレンティン。※前述のダイエー秋山幸二が元祖かもしれませんが、あくまで一時しのぎ的な使い方ですぐに着用を止めてしまっているので、継続的に使用しているという意味で。

※実際に外国人選手で同製品を初めて導入したのが前述のフリオ・ズレータという情報もありますので、2007年~2008年シーズンと継続使用しているフリオ・ズレータをCフラップの先駆者として訂正しておきます。

2017年シーズンからバレンティンはCフラップ付きのヘルメットを使用する姿が目立つようになりましたよね。

また、東北楽天ゴールデンイーグルスの今江年晶も着用。

2019年シーズンには読売ジャイアンツに移籍した丸佳浩の影響からか、キャンプで坂本勇人、岡本和真などがCフラップを使用している姿が目撃されていますね。

その後、新指揮官として巨人に復帰した原辰徳監督が選手に対してCフラップの着用を推奨しているそうで、ピッチャー陣に関しては着用義務化すると報道されていますね。

ランナーの時も基本的にCフラップ付きのヘルメットでそのままプレーをする事も決まっているとか。宮本和知投手総合コーチは「ケガ防止と恐怖心をなくすため。」と語っていて、バントでも攻める意識が持てるともコメント。

巨人ではCフラップを球団が独自に取り寄せて球団スタッフが選手それぞれのヘルメットに手作業で装着していると伝えられていますが、この辺はMLBのルールとは違って、用具の独自加工はある程度許されている範囲(※後述)なんですね。

東京に本社を置くカシマヤ製作所が日本での輸入代理店になっていて、2019年1月中旬には巨人軍側が約70個のCフラップを注文して春季キャンプ中にヘルメットへの取り付け作業を行ったと伝えられています。

取り付け作業は30分ほどで、カシマヤ製作所から商品を仲卸しした仲介メーカーの関係者が球場に赴いて選手の好みや顔の輪郭、骨格に合わせて取り付け角度を調整して取り付けしているんだとか。

その他にもオリックス・バファローズの宗佑磨が2019年シーズンに向けてのキャンプインでフェースガード付きヘルメットの着用をスタート。

メジャーリーグでも活躍した東京ヤクルトスワローズの青木宣親も2019年2月23日のオープン戦(対阪神タイガース戦)でフェースガード付きヘルメットを実戦で初使用。感想としては良い感触だったとの事。

中日ドラゴンズの石垣雅海選手は沖縄キャンプでテスト。頭部へのデッドボールを3回経験している事もあって導入を決めたそう。感想としては「最初は少し視野が気になりましたが、もう大丈夫です。やはり安心感がありますね。」との事。

横浜DeNAベイスターズの主砲、筒香嘉智は「きっかけは当たらないようにという予防で、そんなに変わらないけど(死球への)恐怖心がなくなった。」とコメント。

北海道日本ハムファイターズの主砲、中田翔も視野が多少狭くなる点を指摘しつつも「直接(死球が)顎に当たることを想像すると絶対にあったほうがいい。」とそのプロテクション効果を評価している模様。

東北楽天ゴールデンイーグルスの浅村栄斗も2019年シーズンからフェースガード付きヘルメットの着用をテストするようで『ボールの見え方が変わる』という利点を伝え聞いてテストする気になったとか。このメリットについては中日ドラゴンズの大島洋平も口にしていましたね。

という事は選手の間で怪我防止はもちろんですが、そのほかに“打撃成績向上効果がある”とまことしやかに伝わっているという事ですね。

読売ジャイアンツの丸佳浩は打撃力向上というメリットを口にしていて「プレーに影響が出ない範囲で視界が狭まると、余計な情報を遮断しているような効果があって、自分の世界に入れる。」とコメント。また、デメリットはあまりないとも。

その他には千葉ロッテマリーンズの鈴木大地は「視界が狭くなって、投手や投球にフォーカス出来るような気がする。」とコメントしています。

これは射撃競技などで使用される目の横をスクリーンなどで遮断する用具「サイドブラインダー、シューティングブラインダー」と同じような効果があると思われますね。画像はリオ五輪の10m エアライフル、50mライフル3姿勢で2冠を獲った金メダリスト、ニッコロ・カンプリアーニ選手。日本プロ野球界で着用者急増中のフェイスガード付きヘルメット。あの名称や歴史について 射撃のサイドブラインダーと同じ効果?オリンピックメダリストのニッコロ・カンプリアーニ

※表示がブロックされますので「YouTubeで見る」からご視聴ください。

専用品と思われるモノを使用する選手もいれば、ただの名刺やカードのように見えるものを帽子やメガネに挟んで使っている選手も。

クレー射撃でも同様にサイドブラインダーを使用するケースがありますが、シューティンググラス、耳栓やイヤーマフなどと並んで非常に射撃っぽい見た目の装備ですよね。

ブラインダーを使用する事で横方向の視界を遮って射撃に集中できるという効果や、横から入る光を遮断して前方が明るく見えるという効果もあるそう。

周辺視野が良すぎる選手の場合は周りの細かい情報まで目が拾ってしまうので前方の狭い範囲に視野を集中させるために利用した方が良いと勧められるケースも。

クレー射撃では眩しさを防いで高速移動するクレーの色を際立たせるという狙いや、破片から目を保護するという目的もあるようですね。

動くターゲットを撃つシューターたちは世界トップクラスの「見る力」を有しているアスリートたちですので、この辺は野球のバッターにも共通する点でしょう。

その他の利点として、内角球に対する恐怖心が薄まる事で外角に来たボールに対しても踏み込みやすくなるという効果を挙げているバッターもいて、千葉ロッテマリーンズの角中勝也(左打者)は特に“対左投手の時の踏み込みやすさ”を指摘しています。

左バッター vs 左ピッチャーでは体に近い側からボールが出てくるので恐怖心がどうしても生まれますし、どちらも選手数として少ないので対戦経験として「左ピッチャーと相対するとこんな感じだったか!?」となかなか慣れないという点もあるでしょうしね。※プロの場合もそうですが、少年野球や高校野球などの若い世代では特に左 vs 左の対戦はそんなに多くないという実情も

というわけで日本のプロ野球界でもこれから徐々に広まりを見せるんでしょうか?

補足情報として、元近鉄のチャーリー・マニエルに死球を当ててしまった当事者である八木沢荘六さんが理事長を務める日本プロ野球OBクラブでは衝撃吸収性試験の結果などの安全性を確認し、理事会で推奨商品として認定しているという情報も。

※この“安全性を確認し”という所が後々ポイントになっていきますので詳しくは後述。

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ちなみに大谷翔平も

そしてロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平も2020年シーズンからは本格的にフェースガード付きヘルメットを使用していくと報道されていますね。

Full Count – 大谷翔平、2020年の“相棒”早くも決まる フェイスガードヘルメット採用へ

上記の記事の画像を見ると、恐らくコチラは後から加工するCフラップでは無く、既に紹介したRawlings(ローリングス社)の「EXT Flap(EXTフラップ)」が元々組み込まれた状態で提供されるヘルメットになるのではないかと予想されます。

耳当て部に二つ開いた穴やガード部の凹み加工などが特徴的でCフラップとは違う見た目。

ちなみに大谷翔平は2018年シーズンにも一度だけフェースガード付きヘルメットを着用して打席に立ったことがあるようですが、その後は特に使用する事も無く今に至っていますので心機一転となりそうです。

→2019年シーズンから打者として復帰した大谷翔平は既にフェイスガード付きのヘルメットを着用していますが、やはりCフラップではない製品を使用していて、形状からは「EXT Flap(EXTフラップ)」だと思われます。→復帰からしばらくするとEXTフラップの形状が合わなかったようでCフラップ仕様に変更になっていますね。

※新型コロナの影響で開幕が遅れた2020年シーズンのMLBですが、結局、大谷翔平はフェイスガード無しの状態に落ち着いたようですね。

ちなみに大谷翔平の新用具に関してはこんなミトン型のハンドガードをテストした事もありましたよね。

アマチュア野球の場合は?

さて、こんなフェースガード付きヘルメット(C-フラップ)についてですが、日本のプロ野球界でも徐々に広まりを見せる一方でアマチュア野球ではどうか?というのを見てみると、なかなか面倒な事情が絡んでいるようです。

というのも野球規則ではヘルメットの着用については「プレーヤーは、打撃時間中およびランナーとして塁に出ているときは、必ず野球用ヘルメットをかぶらなければならない。」という記載があるのですが、

「『注』アマチュア野球では、所属する連盟、協会の規定に従う。」という但し書きが付いているんですね。

では所属する連盟、協会とは一体どこかとなると、

日本の学生野球(大学野球・高校野球)の統括組織である日本学生野球協会と社会人野球を統括する日本野球連盟(JABA)の名前が挙がります。

その二つの団体では共に製品の安全性を認証するSGマークを取得したヘルメットのみが使用可能というルールになっているのですが、Cフラップ取り付けの為にヘルメットに穴を開ける加工(改造)を施すと安全性を担保するSGマークの認証外になってしまうので使用不可になってしまうんですね。

実際にCフラップを取り付けた状態でのボールの衝突テストでは通常のヘルメットよりも衝撃吸収性に優れるというデータも出ているようなので規則などに縛られないユーザーが使用したとしても問題は無いようですが、統括団体がノーと言っているので使ってみたくても使えないというアマチュア野球選手は少なくないのではないかと推測されます。

まあこれはある種、当たり前といえば当たり前。

Cフラップは選手個々の好みに合わせて取り付け角度を細かく調整するので、そうなると一律してヘルメットの安全テストを行うのは非現実的ですよね。細かい変更などを検討していたら認証団体がイチイチOKを出すわけなんてありません。

アマチュア野球の場合はSGマークが付いているヘルメットを使用して万が一事故が起こった場合は、事故とヘルメットの欠陥の関係性が認められるとメーカー側が損害賠償の責を負う事になっているので、個人の裁量で取り付け角度を変える事である程度自由に改造できてしまうCフラップに認証が出るわけはないでしょうね。

もし認証を受けたいのであれば「いかなる角度で取り付けたとしても安全」という事をテストで証明する必要があるわけで、それは非現実的。しかもヘルメットの穴開け加工をユーザー自身の手に委ねる形でそれをやるとなると・・・。

Cフラップの利便性が逆に仇となっている形ですよね。

「穴開け加工」と「取り付け角度の固定化」をクリアする事が求められますが「規則が厳しいので緩くしろ」という論調しかないのが残念です。

全日本野球協会のアマチュア野球規則委員会では2019年3月8日付で「打者用ヘルメットのフェイスガード取り付け等の改造禁止について」という文書を出してはっきりとCフラップに“ノー”を突き付ける形に。

既に述べているようにMLBでも選手や球団側の裁量で勝手に改造してはいけないルールで、だからこそMLBでは用具を管理する側が一括して取り付け作業を行って球団に提供するという方式でクリアしているので、そこは流石にメジャー流といった所でしょうか。

となると日本のプロ野球に関していえば、巨人の例のように球団スタッフが取り付け作業を行っているというメディアの情報に基づくとかなり自由な風潮とも取れますよね。※中日ドラゴンズも同じような取り付け手順なので恐らく全球団が同じようなルールになっているのではと推測されます。

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ちなみにヘルメットの調達に関しては各球団がメーカー(カシマヤ製作所)から一括購入していますが、SGマークが付いていようがいなかろうがプロの場合は万が一事故が起こっても“一切の保証は受けられない”との事。

メジャー以上の自由さとなると「これだから日本の統括組織は頭が固い・・・」というのはプロに関しては当てはまらないような。保証に関しても完全に自己責任になっていますしね。

アマチュアは規制が厳しくてプロの場合は自己責任でというのはよくある話で、若い世代も関係するアマチュアの方が厳しいのは当然でしょう。

比較としてアメリカのアマチュア野球ではどうか?という所に注目してみると、実は日本のアマチュア野球と同じような状況なんですね。

大学スポーツを統括するNCAA(全米大学体育協会)などに代表される主要なアマチュアスポーツ団体はNOCSAE (National Operating Committee on Standards for Athletic Equipment)が制定したルールに基づいた用具使用を行うようになっていて、日本のSGマークと同様に、穴開け加工をした時点で使用許可を出さないという決定になっています。

NOCSAEの見解では、Cフラップが認証を受けるためには現在市場にある全てのヘルメットと将来的に発売されるであろう全てのヘルメットに取り付けた際に安全であると認められる必要があるとの事。

これをクリアするためにアメリカでは予めCフラップが取り付けられた状態のヘルメットの使用許可を得るという動きが活発化しており、その流れで先ほどの大谷翔平が2020年シーズンから新しく使用する予定(だったはず)のヘルメットなどが用具提供されていくんでしょうね。

規制する側に規制緩和を求めるのではなく、メーカー側が規制にひっかからないように改良するというロジックは納得。

事前に取り付け用の穴が開けられた仕様で、それに合わせるガード部もオプションのような扱いにして取り付け角度も一定にすれば確かに認証は通るでしょう。

スポーツ用品を取り扱うBoombah (ブンバ社)が販売している「DEFCON Batting Helmet」には予め取り付け穴が開けられた状態で販売されていてガード部は別売りのオプションとして後付け出来る仕様。

コチラのDEFCONヘルメットでは先ほど話題に挙げたNOCSAEの認証もしっかり取れているのでアマチュア野球のリトルリーグなどでも使用可能となっていますね。

既に紹介しましたがローリングス社の「Mach Helmet (マッハヘルメット)」&「EXT Flap(EXTフラップ)」やイーストン社の「Extended Jaw Guard(エクステンデッド・ジョー・ガード)」、EvoShield (エボシールド社)の「XVT Batting Helmet Face Shield (XVT バッティングヘルメット・フェイスシールド)」も同様のコンセプトの商品。

イーストン社のヘルメットは「2018 Little League World Series (LLWS)=リトルリーグ・ワールドシリーズ」でも使用されましたが、その晴れの大舞台でこんな出来事も。

これからの将来を担う若い世代のプロテクションのためにも積極的に使用されて然るべきと思わせるアクシデント。

また、Cフラップとは別にヘルメットに取り付けるアメフト型のワイヤーガードも古くから販売されており、コチラもアメリカのアマチュア野球で使用可能となっています。

以下の画像はローリングス社製のヘルメットですがコチラも事前穴あけ加工済みのようですね。フェースガード付きヘルメット(Cフラップ)の歴史について アマチュア野球では使用できない?

野球よりもソフトボールのイメージがある同商品。

ただ、少年野球などでは特にテレビで活躍するメジャーのスーパースター達が着けているCフラップ付きのヘルメットに憧れを持つ世代も出て来ているそうなので「ワイヤーガード=ダサい、Cフラップ=カッコイイ」なんてイメージも定着しているそうな・・・。

さてさて、今後はどうなる事やら?

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高校野球に大変化

アマについては規制の壁があってフェースガードが使われていなかった前出の状況ですが2022年に遂に大変革が訪れる事に。

というのも第94回選抜高校野球大会ではフェースガード付きヘルメットをかぶった甲子園球児たちがプレーをしており、2020年2月にフェースガード使用OKが出ることに。

今大会では出場32校中15校で先発した打者のうち1人以上が使用という使用実績。

高校野球では一般財団法人の製品安全協会が保証するSGマークが付いた道具に限り使用を認めているのは既に述べていますが、

全日本野球協会が審査基準の見直しを要望した事でくだんのヘルメットがSGマーク制度の対象となり、日本高校野球連盟が2月からゴーサインを出したという流れ。

ちなみに全日本大学野球連盟や全日本軟式野球連盟に加盟する小中学校などでも使えるようになったんだとか。

ただしフェースガード付きヘルメット導入については各校の判断にゆだねられていて、選手の安全性向上を認知しつつも導入を見送った学校も多いそう。

なんでも、価格が通常ヘルメットの2倍となるケースもあるそうで二松学舎大付の市原勝人監督は「着用義務になるまでは様子を見たい」とコメント。

2月にOKが出ていきなり3月の大会で実戦使用となると「見え方などが選手も慣れない」という理由で見送られるケースもあるようで、この辺は徐々に浸透していくのを待つ形でしょうか。

 - スポーツ

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