フィギュアスケート・紀平梨花のエキシビション用衣装作りに独占密着。そのこだわりは?
2018年NHK杯で日本人選手として初のGP初出場初優勝を果たし、一躍ニューヒロインとなった女子フィギュアスケートの紀平梨花。そんな彼女がエキシビションで着用した衣装は実は大会の約1か月前に準備されたもので、そこには紀平梨花のこだわりが詰められたものとなっていたのはご存知でしょうか?
フィギュアスケートの衣装はただのコスチュームというだけではなく、曲のイメージや選手の感情を引き出すための重要なアイテムの一つ。
というわけでその衣装作りに独占密着した2018年11月27日放送のテレビ朝日系「ソノサキ3時間SP」からまとめてご紹介します。
右手首にはめられたリストバンド型の衣装の真意とは何なのでしょうか?
スポンサーリンクチャコット心斎橋店
10月21日、紀平梨花が現れたのは数々のフィギュアスケーターの衣装を手掛けるバレエとダンスの総合用品メーカーChacott(チャコット)の心斎橋店。
その他には男子の宇野昌磨の2016年GPファイナル着用の衣装や、友野一希の2018年GPシリーズカナダ大会着用の衣装もチャコットで作られたもの。
この日はオーダーしていた衣装の仮縫いのために来店した紀平梨花。※仮縫いとは衣装の完成前のチェック段階の事。
衣装を見るなり「かわいい。」と笑顔の紀平梨花。
イメージ通り?という質問に「思ったよりカッコイイ感じに仕上がっててすごい素敵です。」というコメント。
エキシビション用の衣装という事ですが、使用楽曲の「Faded」が少し暗めな曲調という事もあってそれを意識してシックなデザインを目指したとの事。
ジュニア時代には可愛らしいデザインの衣装を着用する事が多かったのですが、今回はシニアデビューという事で大人っぽいデザインを意識したようですね。コチラが衣装のデザイン画、ラフスケッチ。
右端に「For Rika Kihira 2018-2019 Exhibition “Faded”」という記述や細かいディテールとしてレース、プリーツ、タック、ジョーゼット、ギャザー、スリットといった指定が書き込まれていますね。
エキシビションでは採点は行われないので競技的なパフォーマンスを追求するという所はちょっと抑えめで、より衣装のデザインの自由度が上がるのが特徴。かなり個性的な衣装で観客の注目を浴びるというケースも多々ありますよね。
スポンサーリンク衣装デザインの工夫
今回、紀平梨花の衣装を担当したデザイナーは渡辺浩美さん。
紀平梨花の本人リクエストではスカート部分のフリンジとフワッとした雰囲気のブラウスの片袖が指定だったとの事。
先ほどのデザイン画でフリンジは「Black Fringe」という文字で書き込まれているのが見えますよね。
紀平梨花の武器でもあるトリプルアクセルを生かすためにもジャンプを邪魔しないという意識もあるそう。
仮縫いではリンクで滑っている時をイメージしながら腕の振り付けなどを確認。
紀平「袖が黒いから真っ黒の衣装のイメージが出そうで。ちょっと紫とかちょっと入れてもいいかなぁ。」
袖の部分に紫色を足したいというリクエスト。
フィギュアスケートの衣装では袖部分は大事な要素で、スピン中に腕を上げると大きく見えて美しさを引き立たせる効果があるんですね。袖口に向かって広がっているデザインが採用されたりするのはこの効果を狙っての事。
フィギュアスケート衣装の工夫には他にも存在していて、飾りを縦に配置する事で体のラインを絞って見せるスリム効果があるそう。
また、目立つ飾りを衣装の上の方に持っていく事で視線を上に集中させて脚長効果を狙うという工夫も。
その費用は一般的なオーダーでは5万円~10万円の価格帯。トップ選手になるとフルオーダーメイドで30万円以上になる事も。
世界大会に出場する選手のクラスになるとショート用、フリー用、エキシビション用、予備と最低でも4着は用意するのが普通。
その為に過去に着用した衣装を後輩選手に受け継いでいくいわゆる“お古、お下がりの衣装”というものも存在。
例えば日本の女子フィギュアスケート界のレジェンドである伊藤みどりさんの衣装はその後に浅田真央さんに引き継がれたという事もありましたよね。
コチラが1996年の世界選手権出場時の伊藤みどりさんの衣装。
コチラが2002年全日本選手権で浅田真央が着用した時のもの。
ちなみに女子選手とは別に男子選手が着用する衣装のシャツには最後まで演技を美しく見せる工夫があるのですがそれは、
股の部分で裾を固定するボタン(股下スナップ)が付いている事。
手を挙げたりした拍子に衣装の裾がパンツ部分から出てしまわないようにという工夫なんですね。
スポンサーリンク紀平梨花のこだわり
衣装作りで紀平梨花が最もこだわっているのが、
紀平「左右のバランスで軸が傾いてしまったりするので、その左右差はちょっと気にします。」
トリプルアクセルジャンパーである紀平梨花は”体の軸”に細心の注意を払っているんですね。
多少の軸の傾きであればジャンプ中に修正してしまうほどの力を持つ紀平梨花ですが、やはり回転中の軸のブレにはシビアな感覚を持っている様子。
今回は左袖だけ付いたものなので元々左右非対称デザイン。その点についてもその場で軽く1回転ジャンプをしてみて微妙な左右差をチェックする紀平梨花。
紀平「結構重い。右側がだいぶ軽いから大丈夫かな?とは思うんですけど。」
どうやらスカート部分の右側の生地がかなり軽い為に左側のフリンジの重さが際立ってしまっている様子。
競技選手の感覚はかなり繊細。小さなスパンコールやラインストーンの飾り一つでもバランスを気にする選手もいるほど。
飾りがリンクに落ちてしまうと減点になってしまうというルールがあるため、チャコットでは飾りを1つ1つ接着剤で強力に接着。
使用しているのはコニシボンドのGクリヤーですね。接着剤としては定番商品。
重いという紀平梨花の感想なのでフリンジの束を1組外してみる事に。
微調整をしてはその場で1回転ジャンプをしてみてさらに調整を繰り返します。
紀平「うーん。もう一段外してもいいかもしれない。」
右側の軽い生地に合わせて左側を軽量化していくアプローチで衣装作りが進められていますが、左側を重くするという案もあり、迷っていると口にする紀平梨花。左右のバランスが悪い位なら両方ちょっと重くても大丈夫との事。
最終的にはスケート靴を履いた時のバランスもチェックしているようですね。
衣装完成
そして仮縫いから2週間後についに紀平梨花のエキシビション用衣装が完成。
フィギュアファンであればすぐに気づいていた方も多かったと思いますが、仮縫いで着用していた衣装からガラッと変わっていますよね。
紀平梨花が気にしていたフリンジもかなり短くカットされてほぼ半分の長さに。フリンジの段の数もかなり減らされていますね。
実はかなり軽いと紀平梨花が口にしていた右側にラインストーンを多く配置して少し重くするというアプローチも取られたとの事。
全体的に紫の色が所々に散りばめられていて特に左袖には紫が多く配置されていますね。これも紀平梨花のリクエスト通り。
そしてポイントは右手首にはめたラインストーン満載のリストバンド。左袖の重さとバランスを取るために少し重めに調整したリストバンドを右手首にはめる事で左右差を是正するという試みがされていたんですね。
特に手の先端に近い側に着ける事で遠心力が強く働きますので左袖分のバランスを取るには相当な苦労があったと窺い知れますね。
そしてコチラがNHK杯のエキシビションで披露した紀平梨花の演技動画。
これからは衣装の細かなディテールにも注目しながらフィギュアスケートを楽しむのもアリですよね。