なぜプールや海で泳いだ後は独特の疲れや強烈な眠気があるのか?その理由や眠気対策は?
夏の暑い時期に涼を求めて出かける海水浴やプール。ビーチのある観光地でも同様ですが、水に浸かってはしゃいでいるといつの間にか時間が経ってしまって、気付けばどっと疲れて強烈な眠気に襲われた経験は誰しもがあるはず。ではあの泳いだ後の独特の疲れや眠気の理由はどこにあるのでしょうか?そしてその眠気対策として使えそうなアイディアは?
ということで、カナダのトライアスロン選手でオリンピック出場経験も持つサマンサ・マクグローン(Samantha McGlone)による科学的な知見に基づいてご紹介します。
スポンサーリンク水温と体温
例えばプールや海などで泳いだ後とランニングなどで走った後で比較してみると、ランニング後は体は疲れていても頭はどこか冴えている感覚があって、強烈な眠気に襲われるという事はあまりありませんよね?
これはpost-workout insomnia (運動後・ワークアウト後不眠)と呼ばれる体の自然な反応で、体内のホルモンや運動中の体温上昇の影響、自律神経系の交感神経優位な状況などが重なって一時的に眠気が吹っ飛んでしまうからなんですね。
その一方で泳いだ後は体を動かしているにも関わらず、むしろ眠くなってしまいますよね。
同じ運動でもここまでの差が出てしまうのはなぜなんでしょうか?
その理由として考えられる中で大きな影響を及ぼすのがズバリ、
水温
プールや海に浸かると私たちの体は陸上とは比較にならない程の速度で体温を失っていきます。
体を動かす事で体温は上昇するのですが、競泳選手などが行うような激しいトレーニングを行ったとしても体の深部体温は運動前よりも下がっているのが普通で、そうなるとそこまで激しく泳がない一般の人やレクレーション・水遊び・海水浴ではその体温の落ち方は顕著になるのはあきらか。
そして体温が下がると体は何とかして体温を保とうと体内反応が活発になり、その結果として体内エネルギーを大量消費する事になります。これが独特の疲れを生む原因の一つ。
そしてしばらく遊んだ後にちょっと休憩とビーチパラソルの下のビーチ(サマー)ベッドに移動した際には、それまで体温上昇の為に頑張っていた体がさらに頑張り続けて体温をせっせと上げるために疲労がどんどんた溜まる事に。
そりゃ眠くなるのも自然ですよね。
水温として最も体に負担がかからないのが27℃付近の水温と言われていますが、室内プールだと29~31℃付近に設定してあったりして意外と高めなのが実際の所。
海だと水温コントロールは不可能で、そうなると季節による影響を考慮する必要がありますが、7月上旬はまだ海水温が25℃以下で低い傾向。
そして7月下旬位から本格的に海水温が上がり出して27℃ぐらいに。
さらに8月になると今度は海水温が高くなって来ますのでややぬるま湯に浸かっている感覚もあってこれはこれで眠気が襲う水温に。
ぬるま湯であれば体が適度に温められて良いように思いますが、水から上がった途端に体温が下がり出して眠気スイッチが入ってしまう点が要注意。
また、33~34℃と体温に近い水温(中性水温)になると水温が体温に影響を与えず「温まりもせず、冷える事も無い」水温に。
こうなると体が冷えないので動けば動くほど汗をかいて脱水が進む(=熱中症リスクアップ)という違う問題が生まれますよね。※水分補給については後述
ちなみに体が小さく体重の軽いお子さんになると水温の影響を強く受けますので大人よりも敏感です。
大人に比べて子どものほうが泳いだ後にぐっすり眠ってしまう原因は体が熱を作り出す力も、ため込む力も弱いからなんですね。
スポンサーリンク日差しの影響
室内プールでは日差しの影響は考慮する必要はありませんが、屋外プールや海ではお日様の影響は大です。それが、
紫外線(日焼け)による疲労
皮膚が日差し(紫外線)の影響で日焼けしてしまうと、それを回復させようと体内活動がスタートする為にエネルギーが消費される事で疲労感に繋がるというのがその原理。
皮膚の再生には体内の水分レベルが非常に重要で、水分を皮膚の表面に多く回して治癒プロセスが進んでいくのですが、そうなると本来は汗として使われるはずの水分が不足気味になるので体温調整がスムーズにいかなくなってしまったり。
となると既に述べたように余計に体がエネルギーを消費して体温調整を行って・・・という悪循環で疲れがどんどん溜まって行く結果に。
日焼けはお肌の大敵でしっかり日焼け止めで対策している方も多いと思いますが、実は疲労感の大敵でもあるんですね。
さらに紫外線が目に入ると自律神経が活発に動き出し疲労感につながるという面も見逃せません。
さらに水に囲まれた環境は普段の生活からしたら異常事態。
自律神経にとって、いつもの環境=リラックス環境なのに対して、いつもと違う環境=ストレスフル環境。
そして、徐々に陽が落ちて来てひとたびプールや海から上がるとこの自律神経がスイッチオフの状態になるので今度は一転してリラックスモード。
帰り道の車の中でウトウトしてしまうのは、車内で過ごし慣れた環境に戻った事で副交感神経が優位になってリラックスしているわけです。
この溜まりに溜まった疲労感とリラックスモードのW効果で強烈な眠気に襲われるという事ですね。
旅行から帰って来て家についた途端に「やっぱり家が一番イイや。」って思っちゃうのはこんな自律神経の働きによるものだったり。肉体的に疲労感を感じるだけではなく、脳疲労も結構大きいんですね。
また、睡眠誘発効果がある体内ホルモンのメラトニンの分泌もポイント。
普段の生活では室内で過ごす機会が多く一日中日差しの下で動いているわけではない人が、突然日差しに長時間照らされる環境に置かれると、通常よりもこのメラトニンの分泌が活発になるので強烈な眠気が襲ってきます。
蛍光灯の下よりも太陽光の方が影響が大きいのでこういった違いが生まれるというわけです。
ちなみに紫外線対策では目の防護もしっかり備えるのが大切。
サングラスやつばの広い帽子、パラソルの下で過ごすなどの方法がありますが、
一番のオススメがコンタクトレンズ。
コンタクトレンズのUVカット効果はサングラスに比べて絶大で、ほぼ100%(UV-A波 約85%、UV-B波 約98%)カットできるそうなので導入できる人は検討してみましょう。
度なしのコンタクトもあるので目が良い人でも是非ご検討を。
少し水に入るぐらいであればコンタクトもそう簡単には外れませんし、ゴーグルを着ければより完璧。
ゴーグルの有名どころスワンズであれば全て紫外線99.9%以上カットを謳っていますので、
商品選びに困ったらこの辺がおすすめでしょうか。
こども用だとこの辺が人気商品のようですね。
アリーナやスピードなど有名メーカーのゴーグルでもUVカットが付いていないものもあるので購入する際にはしっかり確認をしましょう。
スポンサーリンク食事
食事のタイミングも眠気を催す大敵。
既に述べたように特に激しい運動を行うわけでもないのに水に浸かったり、日差しに照らされたりする事でプールや海ではいつも以上に体と頭がエネルギーを必要としますので、空腹状態で向かうのは避けるべきなのはあきらか。
特に朝ごはんを食べる習慣が無い人が、そのまま何も食べないでプールや海に向かったりすると、すぐに体内のエネルギーが不足気味になってやがては枯渇。そうなると強烈な空腹感が襲ってきます。
すると海の家や食堂などで食事を摂る事になりますが、そこでの定番メニューはラーメンなどの麺類やカレーなどのご飯ものなどの炭水化物中心のメニューが多いですよね?
これらを空腹状態で一気に食べると血糖値が急上昇して強い眠気に襲われます。※場合によっては頭痛を催すケースも
コーヒーに含まれるカフェインは覚醒効果や眠気覚ましに効果があると言われますが、その持続時間は大体4時間~7時間。
となるとちょうどお昼ご飯が終わった頃にカフェインの効果が切れて、それまで大人しかった眠気が急激に活発になって来る時間帯(人間の覚醒レベルが一度低下する時間帯は午後2時)と昼食後の眠気の時間帯が合わさる事でダブルで瞼が重くなってくるというケースも考えられますよね。
その他にも普段から睡眠不足気味で睡眠負債を抱えている人が急に海やプールというエクストリーム環境にさらされた事で体がギブアップしてしまうなんて事も。
水分補給
また、海やプールと言えども外にいることに変わりはないので、
適切な水分補給
も大事な要素。
体が濡れているのでついつい水分を口にするのを疎かにしがちですが、実は体は相当脱水しているので要注意。
特に水温が高くて33℃~34℃になると前出の中性水温の状態になって知らず知らずのうちに大汗をかいている事も。
一般的に脱水が進んで体重が2%減ると集中力・思考力の低下、心拍数や体温の過度な上昇、または足がつったりという体の不調が発生。
ですから体の平常運転を保つには減っても体重の1%以内に収まるよう、十分な水分補給を徹底するのがポイント。
まとめると、
- 水温
- 紫外線(日焼け)による疲労
- 交感神経優位で脳が疲れる
- 食事のタイミング
- 水分補給
以上の要因が泳いだ後に独特の疲れや強烈な眠気に襲われる理由。
では、これらの要因を上手くコントロールする為にはどうすればいいのでしょうか?
具体的な対策法については次の項で。
スポンサーリンク泳いだ後の眠気対策
水温対策
まずは水温の影響についてですが、自分の運動強度に合わせた適温で管理されたプールを選択するのが大事。
ですが屋外プールや海水浴ではコントロールが出来ない部分になりますのでココは工夫が必要で、水温が低い場合は厚手かつ長袖のラッシュガードなどを着用して体温の低下を防ぐのがポイント。
一旦水から上がる場合は濡れた身体を自然乾燥に任せるのではなく、しっかりとタオルドライで水分を拭きとっておきましょう。
例えば水球の選手たちはプールサイドではバスローブを着用している風景がおなじみですが、
濡れたままの身体だと水が蒸発した時の気化熱でどんどん体が冷えていくので、素早く水を吸収しさらに保温効果も見込めるバスローブはオススメ。
また、泳ぎ終わった後に何をするのかがポイントになりますが、20分ほどのウォーキングや自転車で軽く汗をかく運動を行うのもオススメ。
着替えた後にビーチを散歩したり、プールであれば近くで散策したりと工夫してみましょう。
これだとさらに疲れそうなイメージがありますが、水から上がった状態で軽い運動を行う事でグッと下がった体温を上げる効果が期待できますし、運動による眠気覚まし効果もあるので意外に効果的だったりします。
また、シャワーを浴びる場合は熱いシャワーを浴びるのも良いですね。これも下がった体温を上げる効果を狙ってのものです。
泳いだ後にその足で温泉施設に向かうという場合は入浴はもちろんですが、サウナに10分ほど入るのもオススメです。
その後、上がった体温が下がるプロセスで再度眠気が襲ってきますので、ある程度の体温を保つように厚手の服を着込んで体が温かい状態をキープ出来るように心がけましょう。
ただし水温が高い場合は体がオーバーヒートを起こしてしまうので体を冷やしたり、水分補給を忘れないようにしましょう。
日差し対策
日差しの影響を抑えるには日焼け止めをしっかり塗ったり、前述のラッシュガードなどでブロックするのが基本です。
日焼け止めはウォータープルーフのしっかりしたものを選ぶのはもちろんですが、小まめに塗り直すのが最も気を付けたいポイント。
大体60分から80分ぐらいの周期で日焼け止めタイムを設けてしっかりと塗り直しましょう。
日焼け止めは基本的にタオルで肌を拭いた時に落ちるケースが多いのでタオルドライをした際には短い時間内でも塗り直すのを心がけましょう。
日焼け止めの使用期限は大体1年が目安なのでワンシーズン使ったら終了というのが基本。※海外の情報だと未開封状態では3年が限度。
1年経つとUVカット効果も徐々に落ちて来てしまいますので、ケチケチ節約して残った分は来年に回すというのはオススメできません。
ワンシーズンできっちり使い切れるように贅沢にたっぷりと使いましょう。
ちなみに熱の影響で日焼け止めは劣化が早く進むと言われていますので、特に温度が高くなりやすい車の中に放置すると1年を待たずして使用期限切れになってしまうリスクも。車内や高温になる場所での保管は厳禁です。
また、目から入る紫外線の影響で日焼けするというケースもありますので、水から上がったら日陰に陣取るのはもちろんですが、つばの広い麦わら帽子なども被り、UVカット機能がしっかりついたサングラスを着用して日差しをしっかりガードするか、既に紹介した通りコンタクトレンズの使用も検討してみましょう。
コンタクトレンズは視力矯正だけではなく紫外線から目を守るという面でもオススメなので目が良い人でも度ナシのコンタクトを使ってみてはいかがでしょうか。
スポンサーリンク食事
食事面で言うと、海やプールに向かう前には必ずしっかりと食事を摂り、炭水化物だけではなくたんぱく質、塩分も意識的に摂取しましょう。競泳選手のマイケル・フェルプスは卵を5つ使った大きなオムレツなどをよく食べていたようですしね。
朝食で炭水化物しか食べない人はすぐにエネルギー切れになりますし、血糖値が急上昇・急低下をするのでNG。
ランチを食べる際には、肉・魚・豆などのたんぱく源やサラダ類も一緒に食べて血糖値の上昇を緩やかに抑えつつ栄養補給を行うように。
そして泳いでいる最中は自分でも気づかない程に脱水症状が進んでいたりしますので、小まめな水分補給を行うように心がけるのも重要です。
この時失われる水分量は個人の体質や体格、運動への適応度、運動する環境(例:気温、湿度、水温)、運動の強度、運動時の格好など様々ですが、1時間あたり3~4回、1回あたり200~300ml程度の水分補給が目安。
ただの水だと体内のナトリウム量のバランスが崩れるので水100mlあたり0.1~0.2の食塩、1Lだと食塩1~2gが含まれたスポーツドリンクなどがピッタリですね。
例えば海やプールに4時間いると2.4Lほどの水分補給を行う目安になりますが、ちゃんと飲めていますか?
恐らくほとんどの人がノーと答えるでしょうね。
さらに言うと水に入る前にも200~600mlの水分を予め摂っておいたり、水から上がって帰途につくタイミングの4~6時間は汗や尿として水分をどんどん失っていくので運動中に失った水分の150%を目安に補給するというガイドラインも。
理想でいうと家を出る前に体重計に乗って自分の体重をチェックしておき、泳ぎ終わって家に帰ってからも体重を量り、どれだけ体重が減っているか?(=どれだけ水分が失われているか?)を確認しておくのも大事。
また、水温が低い場合は泳いでいる最中や泳いだ後に冷たい飲み物を飲むと下がった体温が余計に下がってしまいますので、実はホットドリンクの方が水分補給には適しています。となると温かいスポーツドリンクなどもオススメ。
そして泳いだ後にはカフェインの入った温かいお茶、紅茶、コーヒーなどを摂取すると眠気覚まし効果と体温上昇効果があって適しているのですが、それはそれでカフェインの利尿作用で体から水分が出て行ってしまいますのでその分の水分補給も怠らないように。
カフェインよりも少し効き目が穏やかなホットココアなども泳いだ後のドリンクにはオススメ。
水泳の後にホットココアというのは全くイメージに無いかもしれませんが意外に効果的だったりするんですよ?
その他に、海やプール後に車の運転があるという方には、つまんでちょっとずつ食べるようなナッツ類、スナック類や、
歯ごたえのあるスルメやビーフジャーキーなどが一緒に塩分も摂れるのでオススメです。
プロテインバーなどもちょびちょび食べるのに向いているので良いですね。
ガムを噛んで眠気覚ましというのはメジャーな方法だと思いますが、それだと栄養・塩分補給の面でメリットがありませんので栄養の含まれる上記のスナックを是非考慮したい所。
あとは直接的な解決策で恐縮ですが、日焼け対策をしっかり行った上で現地で短い仮眠をとるというのも効果的。
適度に休憩を挟んで体や脳を休ませるのも必要に応じて。仮眠をとる場合は午後2時になる前に20分を目途に。
以上、泳いだ後にどっと疲れを感じたり、眠気に襲われたりする理由やその対策についてでした。大きく3つのポイントに分けて紹介しておりますのでご参考に。