ラグビー選手が頭や太ももにテーピングを巻いているのはなぜ?ラグビー特有の理由
2019年に日本で開催されるラグビーワールドカップ。普段あまりラグビーは観ないという方でもテレビ中継でふと気になったりなんて事があると思いますが、そこで目につくのが頭や太ももにテーピングを巻いた選手の存在。激しいコンタクトスポーツであるラグビーなので怪我してたりとかそんなもんなのかな?と思いがちですが、実はああいったテーピングを巻く理由にはラグビー特有の事情があったりするんですね。
ということで気になったので詳しく調べてみました。
スポンサーリンク太もものテーピング
テーピング=怪我のケアというイメージがあるかもしれませんが、全てのチームでこういった具合に太ももにテーピングを巻いた選手がいるという事は、何か特別な理由があるハズですよね。
確かに脚に何らかの怪我を負っていて、それをサポートする為に巻いている選手も中にはいますが大抵の場合はフォワードプレーヤーがこういった独特のテーピングを巻いており、その理由は主にラインアウト時のリフトアップをサポートする為というのがその理由です。
ラインアウトとはボールがタッチライン (サイドライン)を割った際の再開方法を指しますが、その際に背の高い選手がボールをキャッチする役割を担います。※大抵の場合はロックと呼ばれるポジションの選手。
さらに、ラインアウト時の高さを増すためにリフトアップを行い、いわば“人間タワー”を形成してボールを奪い合うのはラグビー特有の空中戦。
以下の動画でラインアウトでリフトアップした高さがお分かりになると思います。
動画では4.2mや4.3mほどの最高到達点になっていますが、2m級の大型選手が揃うチームによっては5mほどの高さにまで達するのがこのリフトアップというプレーです。
赤ちゃんを高い高いするイメージですがここまでデカい選手同士となるとその高さも驚異的ですよね。
この空中に持ち上げるリフトアップのプレーを単体で見てみるとこんな感じになります。
お分かりになるでしょうか?持ち上げる選手(リフター)が太ももに巻いているテーピングに手を添えていますよね?
太もも周りに巻かれたテーピングはこの時に滑り止めの役割を果たし、汗で手が滑ったりというのを防止するためのものなんですね。
このテーピングについてもっと詳しく見てみると、実はリフティングブロックと呼ばれる突起が仕込まれている場合も。
リフティングブロックの仕込み方とテーピングの巻き方についての解説動画がコチラ。
通常のテーピングを巻いた後にゴツいスポンジのようなパッドを挟み込んでさらにその上からテーピングでカバーしているのが分かりますね。
そして仕上げにビニールテープ(いわゆる絶縁テープ)を巻きます。このテープを巻く事でリフティングブロックがテーピング内で動いてしまうのを防ぐ効果があります。
さらに通常のテーピングは汗などの水分でグズグズになってしまいますが、防水力の高いビニールテープを上に巻く事でテーピングが剥がれにくくするという効果もあったり。
スポンサーリンク頭のテーピング
このテーピングは何のためにつけているのかと言うと、それは「耳がわく」のを防ぐ為です。
一般の人からする「耳がわく」という意味自体よく分からないと思いますが、これは柔道、レスリング、ボクシングなどの格闘技を知っている人であれば誰しもが一度は耳にした事がある言葉。
他に「餃子耳」なんて言い方もありますが、以下のような感じに耳が潰れた状態になってしまう事を指します。
ちなみに英語だとカリフラワーイヤー(cauliflower ear)と表現します。
これは医学的に耳介血腫 (じかいけっしゅ)と呼ばれるスポーツ外傷の一種で、耳に対して繰り返し外的刺激が加わる事で皮膚の下や軟骨膜の下に血の塊が溜まってしまった状態。
人によって元々、耳が硬かったり、柔らかかったり、耳が大きく張り出していたり、顔にピタッと張り付く感じだったりとなりやすさには個人差があるのでノーケアでも大丈夫なケースもあったり。
柔道では組み手争いでどうしても耳に指先が当たってしまったり、寝技の際に畳にこすれたり。
レスリングでは柔道と同様に組み手争い時や他にもタックルに行った際に相手のわき腹とこすれたり。
ラグビーでは激しいコンタクトはもちろんですが、特にスクラムを組む際に耳がこすれて発症してしまうケースが多いようですね。※主にスクラムを組む際に2列目に位置するセカンドロー (2nd row)のポジションであるロックの選手の耳が犠牲になるパターンが多いとの事。
この状態で放置すると内部で血が固まってしまい耳の形が恒久的に変形してしまうんですね。
スポーツ選手ではある種「猛練習の証・勲章」として歓迎される事もあるこのカリフラワーイヤーですが、血が溜まっている状態ではなかなかの痛みがありますので出来れば避けたいところ。特に就寝時に痛みでなかなか寝付けないといったケースもあるようです。
治療としては軽度の物であれば冷やしたり、圧迫したりして安静にする事で自然と内出血が収まりますが、それよりも症状が進むと注射によって血を抜くという治療が必要となります。
コチラが参考のYouTube動画。注射を見るのも苦手な方にはオススメしない動画なので要注意。
さらに症状が進むと内部で血が半分固まった血腫になってしまいますのでそうなるとメスで小さく切開して押し出すという治療が必要となります。コチラも視聴の際は要注意です。
血を抜く作業であれば慣れれば自分で処置する事も一応出来ますが(※あくまで自己責任で!!決してオススメはしませんが)、ここまで症状が進むと適切な医療機関での受診が求められますね。
そうなる前に予防するのが一番ですが、そのためには耳への外的刺激を出来るだけ防ぐ・取り除くという意味でテーピングで保護するというのが最もシンプルな対処法。
この他に耳の上部だけをテーピングで覆っているラグビー選手の姿もよく見かけますが、それも耳の保護が目的ですね。
既に内出血を起こしてして患部を圧迫するという目的も考えられますが。
スポンサーリンクヘッド(スクラム)キャップも
テーピングの他にラグビー選手が着けているのをよく目にするのがヘッドキャップ(スクラムキャップ、ヘッドガード)ですね。
頭部全体を覆う事で保護しているコチラのスクラムキャップですが、これも主に耳の保護が主目的。
ちなみにラグビーではタックルなどのコンタクト時に脳震とうになってしまったりという事が頻繁に起きますが、このキャップで脳震とうが防げるかと言えばそれは疑問符。
研究データでも「ヘッドガード類は頭部への衝撃その物を軽減する効果は望めない」とする結果が出ていますし、
実際、脳震とうは頭蓋内で脳が揺さぶられる事で発症しますので主に外傷を防ぐ目的で被るこの類のヘッドガードでは防ぎきれないというのが真実です。※現在のルールでは着用が義務付けられているマウスピース (マウスガード、ガムシールド)の方が脳震とうのリスク軽減には有効とされています。
ちなみにコチラのヘッドキャップは被っていると「かなり暑い」そうなので、受け付けない人にはトコトン合わない代物だったり。他に耳を覆う形の為に周囲の音が聞こえ辛くなるという弊害もあるようなのでデメリットもあるんですね。
その他の理由にもヘッドキャップは「どこか弱く見える」というのもポイント。
ラグビーでは痛がったり、苦しがったりする姿を極力見せないという徹底した強烈な“マッチョ文化”が浸透していますので、テーピングの方が「強そうに見える」という理由で好まれたり。
ちなみに日本においては高校生まではヘッドキャップの着用が義務付けられていたりしますが、それ以上になると完全に個人の自由の範囲なんですね。
というわけでラグビー選手たちが太ももや頭にテーピングを巻いている理由についてアレコレをご紹介しました。
その他に『ラグビーで得点を決めたのに「トライ」というのはなぜ?』という基本的な疑問についてはコチラの別記事で。