筋トレはドSスパルタトレーナーと褒めるトレーナーどちらが効果が上?その意外な結果
筋トレの強い味方と言えばジムトレーナーの存在。ではあえて厳しい言葉でどんどんストイックに追い込んでくれるスパルタ指導のトレーナーと基本的に全て褒めてくれるトレーナーではどちらがトレーニング効果としては高くなるのでしょうか?結果は意外なものに?
2020年9月15日放送のNHKEテレ「社会実験ドキュメント サビ抜きで。~“ダメ出し”抜きのニッポン人~」で実際に実験してみたその結果をもとにご紹介します。
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実験に協力してくれたのはパーソナルトレーナーの星野雄三さん。
星野さん監修のもとで被験者9人(男性6人、女性3人)で実験。
今回行ってもらう筋トレメニューはバーピー(burpee)。
バーピーとはしゃがむ、体を伸ばす、ジャンプすると複合的な動きを順に行い、それをずっと繰り返すという全身運動の事。
今回の実験ではバーピーを60秒間のうちで何回行えるか?を検証。
まずは「ダメ出しナシバージョン」。
3人が横並びの状態ではありますがが基本的には静かな環境でトレーナーからのゲキはナシ。
結果は、27回、23回、34回。
続いて「ダメ出しアリバージョン」。
「全部出して!」「○○さん!もっと追い込んで!追い込んで!追い込んで!」「素早く!素早く!遅い!遅い!」「○○さん、そんなんじゃ痩せないっすよ!早く!早く!痩せない!痩せない!」「全然ゆっくりじゃないですか、もっとスピード出して!」「最後のスパート!最後のスパート!」
とずっと絶え間なく浴びせられるゲキの数々。
結果は、33回、24回、36回。
やり抜いた3人にはトレーナーから激励の言葉。
- 25回 → 33回
- 23回 → 24回
- 33回 → 36回
3人とも「ダメ出しアリバージョン」の方が回数がアップしていますね。
被験者に感想を聞いてみると、
「コーチがいなかった時は自分の中でちょっと休んじゃった時もあって。ダメ出しがあった時はチクショー!という気持ちが出てきたせいか、やらなきゃ!って気持ちに駆られました。」
その他の被験者についてもダメ出しをもらってスパルタ指導された方が回数が伸びるという結果に。
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トレーナーの星野さんの感想では、
「トレーニングって基本的に孤独でキツイもんなんですよね。だから無理って思ってるんですけど、それって肉体が本当に動かないっていうムリではなくて、メンタル、精神のムリ。限界が起きてると。だからダメ出しというか背中を押してあげる、追い込むっていう事によって最初に来るメンタルのブロックを超えて上げる。我々は限界突破って言ってるんですけど。これを促せたんじゃないかなって思ってます。」
青山学院大学准教授で社会心理学・対人コミュニケーションが専門の繁桝江里(しげますえり)先生によると、
「自分で気付けない、自分ってこうだと思い込んでしまうモノを壊してくれるのがダメ出しなので、ジョハリの窓っていう概念があって。」
- 開放領域
- 盲点領域
- 隠ぺい領域
- 未知領域
の4つのどこかに当てはまるという考え方。
この中で「自分は知らない」けど「相手は知っている」という盲点領域が一番重要な情報になると繁桝先生。
この盲点領域をダメ出しによって狭めていくのがダメ出しの極意。
「良いも悪いも含めて、出来ないと思ってたけど、もうちょっと頑張んなきゃいけないんだって気付くみたいな事につながるかなと思いますね。」
ちなみに、このジョハリの窓の盲点領域の考え方はお笑いの上岡龍太郎師匠が同じような事をおっしゃっていましたね。
弟子を叱るのは「本人が悪い事だと気付いていない時だけ」と。
例えば、遅刻して来たといった場合は本人も悪い事だと自覚しているハズなのでそれをいちいちガミガミと怒る事は無く、怒る時というのは本人が無自覚に他人に迷惑をかけていたり、本人が良かれと思ってやっていることが見当違いだったりする時に限ってしっかり叱ってやると。
まさにこれは盲点領域の事を指していたと思いますね。
褒めるトレーナー
ここでは「何もせずに放っておく」のと「ダメ出しをするドS指導アリ」では、ドS指導アリの方が効果が上がるという事が実験で分かりましたが、
「豚もおだてりゃ木に登る」ということわざがあるように「褒める」とその効果はどうなるのか?も実験で確かめる事に。
トレーニング内容もバーピーで条件も全て同じで再度実験。
ポイントはトレーナーからかけられる言葉が、
「頑張ってください!」「○○さん、イイっすよ!」「もうちょっとですよ~!」
と叱咤激励というよりも優しく褒める言葉中心。
結果はこんな感じ。
回数が増えた被験者もいれば、回数が減ってしまった被験者もいて、全体で考えてみると、
「ダメ出しアリ」と「褒める」のは効果としてあまり変わらないという結果に。
被験者にダメ出しアリとの比較について聞いてみると、
「ダメ出しをされてる時の方が私としては精神的に楽に感じたんですよね。」「ダメ出しで追い込まれた方が自分的にも頑張れたんで、終わった後の達成感は上がったかなって思います。」
おっと?反復回数で見ると結果は変わらなかったものの、本人の満足度に差が出ているようですね。
これは一体?ダメ出しをもらった方が精神的に「楽」で褒められた方が精神的に「キツイ」というのはなぜなんでしょうか?
これはひょっとすると「自分で自分の限界を決めなくていけないプレッシャー」から?
確かに、人にゴールを決められて厳しく言われた方が励めるというのはあるかもしれませんね。
繁桝先生によると、
「ストレスがあった方が実は人はモチベーションを保てたり、集中力が上がってるっていう研究が海外であって。」「今はOKではなくて“もっと”という所にはダメ出しも効くっていう事。」
褒める教育方針については、
「最近、教育とか家庭で“褒める”っていう風潮が強いじゃないですか。なので褒めて育って来たのに会社に入って突然ダメ出しされて、免疫が無くてストレスに感じてしまうっていう現象はありますね。」
という事で筋トレにおいては「ダメ出し」と「褒める」トレーナーでどちらもトレーニング効果に差は出なかったものの、ダメ出しアリの方が精神的に楽だったり、達成感を得られるという差になったという結果。
ダメ出しの注意点
さて、ここまでは「ダメ出しの」メリットについて語られてきましたが、ここで注意点についても。
繁桝先生によると、
「研究で単純な作業だと人の目があった方が集中できて早くなったりするんですけど、難しい作業になるとダメになるって事があって。」
筋トレに限っていえば、同じ動きを反復して行うのが筋トレの多くのメニューに共通する事なので、人の目があった方が効果が上がりやすいんでしょうね。
以上を踏まえて、ポイントは「ダメ出し」と「褒める」のバランス。
厳しい指導の中にも「キミなら出来る。」「よくやった!」と言った言葉を織り交ぜていくことでモチベーションをどんどん引き出せるようですね。
そして、複雑な手順を踏んでいく必要がある場合は本人が気付いていない点については指摘した後は本人に任せるという指導法も有効になると。
ということで以上、NHKEテレ「社会実験ドキュメント サビ抜きで。~“ダメ出し”抜きのニッポン人~」からでした。