王様のブランチ 今日の本紹介 おもいでがまっている、月と散文
23年4月1日「王様のブランチ」の本特集コーナーではおすすめ本としておもいでがまっている、今日の本ランキングから月と散文を紹介ということで書籍一覧をまとめてご紹介。
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おもいでがまっている
著者はいきものがかりの水野良樹で、清志まれ名義で手掛けた2作目の小説。
25年にわたりずっと誰かを待ち続けたある家族と一人の男の物語。
清志まれ「歌を作る時のあるあるで、待つっていう状態(設定)を書くことがし辛くなったなって。ギリギリ携帯電話が無い時代を知ってるんですけど、何かトラブルがあって人が来れないと、待つという状況が生まれるんですけど、今だったら携帯で何とかなる。歌謡曲やちょっと前のJ-POPが使っていた待つが書けないのでちょっと憧れがあったのかもしれないですね。」
物語の中心となる松野忠之は軽度の認知症と思しき症を抱える68歳の男性。
一方、生活福祉課で高齢者支援にあたっている上村深春は幼い頃、忠之と一緒に過ごしたこともあって忠之の事が気にかかるように。
現在、忠之は平成初期に建てられた古びた新興マンションの一室で孫と共に同居中。
忠之が語るのは、娘の愛情に包まれた孫と部屋の話。
「娘ですか?今は仕事の事情でちょっと離れて暮らしていましてね。」
娘や孫が寂しがらないようにと精一杯の愛情で部屋をしつらえ、孫はいつも母親の愛情に囲まれて帰ってくる日を待っている事。
しかし面と向かって話を聞いた深春は、それはウソであると気づくことに。
その理由は25年前。
深春が兄と共に忠之と同居していたその頃のまま時間が止まったかのように今も部屋に置かれているピアノ。
その他の家具も当時のままで、置いてあるものは何一つ変わらないのに、記憶だけが新しい家族のものに塗り替わっている忠之。
「なぜそんなことに…?」と真意をつかみかねて困惑する深春。
清志まれ「場所に記憶って宿るんだなって、新しく住まわれる方が知らない記憶を積み重ねていくんだなって思うと不思議な感覚になって。これは上手く小説に出来るんじゃないかと。待つ・場所に宿る記憶を重ね合わせて物語を設定していった。」
25年前、深春の母が失踪。
取り残された兄弟を救ったのが忠之。
忠之の世話になりながら「母はいつかこの家に帰ってくる。」と思い続けていた幼い深春。
そんな生活もそう長くは続かず「出て行きなさい。」と突然2人に別れを告げる忠之。
幼い兄弟を見捨てるような忠之の行動の裏には、苦渋の決断や切なる願いが…。
清志まれ「忠之は非常に弱い所があって不器用なんですね。全てが善意で出来上がってるわけじゃなくて、彼自身が自尊心を得たかったり、両面性がちゃんと見えるようにはしたいなと思ってて。人間の弱さ、不器用さが読んでくださる方にも理解してもらえる範囲でこの人物を書きたいと思ってました。」
ただただ待つことでしか進まなかった人生。
大切な人を思いやる気持ちに心を揺さぶられる一冊。
月と散文
今日の本ランキング6位にランクインしたのは、
芥川賞作家・又吉直樹によるエッセイ集で前回の『東京百景』から実に10年ぶり。
この10年の間に、芥川賞受賞、相方綾部の渡米、コロナ禍と大きな出来事が数多くあった中、
日々の暮らしで感じたことや出来事など66話収録。
例えば42歳の誕生日に急に電話をかけてきた綾部のエピソードでは、
その内容はただただ自分の近況とこれからの事を楽しそうに語って、一方的に電話を切って終わりというものだったそうで、
誕生日のたの字すら会話に出てこず、一体何が起きたのかしばらく呆然としたというエピソードだったり。
自分らしく健康的に歳を重ねるヒントが得られること間違いなし。
以上、王様のブランチから今日の本紹介でした。
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