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夏の高校野球で起きた大逆転試合ランキング3位は明徳義塾vs横浜、2位は奇跡の9回裏逆転で1位は?


25年8月2日放送の「THE世代感特別編 夏の高校野球歴史的大逆転ベスト10」で発表された奇跡の大逆転ランキングを番外編と共に一覧でまとめてご紹介。

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夏の高校野球で起きた大逆転試合ランキング

1位 金足農の2日連続大逆転勝利 2018年

『横浜(南神奈川) vs 金足農(秋田) 2018年 3回戦』

11年ぶりに夏の甲子園に出場して3回戦まで進んだ公立高校の金足農業に対するは春夏5度の優勝を誇る優勝候補・横浜。

のちにプロ入りする度会隆輝、万波中正、及川雅貴、津田啓史の4人を擁するタレント軍団の横浜に対して金足農業にはこちらものちにプロ入りする吉田輝星がエースとしてチームを牽引。

いざ始まった試合は初回から大きく動き、横浜が幸先よく先制に成功すると、その後は両チームとも得点して8回裏の金足農業の攻撃の時点でスコアは4-2横浜リード。

8回裏の攻撃ではエース吉田のヒット、4番打川のこの試合初安打などで連続ヒットで繋いで、続くバントは失敗に終わるも1アウト1・2塁に。

ここからはこの日無安打だった下位打線へと移っていき、次を打つ6番打者の高橋は高校通算で1本もホームランを打っておらず、得点のチャンスは途絶えたかに思えたその時「初球からボール球でもいいからフルスイングしろ。」という金足農業・中泉監督からの指示通りに思い切り振った高橋の打球はセンターに飛び込む3ランホームランで4-5と一気に逆転。

すると9回表の横浜の攻撃をエース吉田がシャットアウトして勝利。

『近江(滋賀) vs 金足農(秋田) 2018年 準々決勝』

逆転で横浜をくだした金足農業が次に戦うのはのちにプロ入りする北村恵吾を擁する強豪・近江。

試合は4回表に近江が先制点を挙げ、その後1-1同点となった所で6回表に近江が再び1点リード。

ここから試合は2-1のまま9回表の近江の攻撃、ノーアウト1・2塁のチャンスの場面へ。このピンチの場面を見逃し三振、吉田の好守備、空振り三振で無失点で切り抜けた金足農業はいよいよ9回裏の最後の攻撃へ。

金足農業の先頭バッターは前日に逆転スリーランHRを放った高橋から始まったものの、この日も下位打線は無安打と沈黙。ところがこの土壇場に来て下位打線が面白いように繋がり出して、先頭の高橋がヒットで出塁すると、続く打者がしぶとくレフト前に落としてノーアウト1・2塁。

8番打者のバントの場面ではフォアボールで遂にノーアウト満塁。

迎える9番斎藤はこの緊迫の場面でツーランスクイズを敢行し、バントした斎藤が1塁でアウトになる間に2人のランナーを生還させてあっという間の同点から逆転サヨナラ。

電光石火の奇策で鮮やかに勝利をものした金足農業が連日の逆転勝利を飾り、甲子園史上初となる逆転サヨナラツーランスクイズが生まれた瞬間に。

実はこの時にサヨナラの本塁を踏んだ2塁ランナーの菊地は自らの判断で本塁に突入したそうで、近江のピッチャーが左投手で3塁側への打球だと捕りに来ないだろうと予想し、近江の3塁手も途中出場の2年生だった事もあり、本塁へ間に合わないタイミングであればセオリー通りに1塁へ投げるはずという見立てで3塁側にボールが転がったら本塁を狙うと心に決めていたとか。

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2位 小松大谷 vs 星稜 2014年 石川大会決勝

2年連続の甲子園出場を目指す強豪・星稜に対するは29年ぶり2回目の甲子園出場を目指す小松大谷。

星稜のエース岩下はこの試合で不安定な立ち上がりを見せて、小松大谷は1回、2回と着実に点を重ねて6-0と大きくリードし、ここで岩下は投手交代となって外野の守りへ。

一方の星稜打線はノーヒットが続き、5回表には8-0に。

準決勝までであれば7回の時点で7点差が付くとコールドゲームとなってしまうほどの点差という事もあって星稜に漂う敗色ムードはそのままに8回を終わってスコアは8-0のまま。

こうして迎えた9回表、エース岩下に再びマウンドが託されると、ここで岩下は三者連続三振の快投で8点差で負けているとは思えないほどの笑顔で9回裏へ。

土壇場の9回裏では星稜の先頭バッターがフォアボールで出塁し、続く打者は三塁打を放っていきなり星稜に初得点。そこからは星稜の打線は突然息を吹き返したように連打を浴びせ8-4の4点差。ノーアウトのまま攻撃が繋がっていく星稜はバッターボックスにエース岩下を迎え、ここで岩下は場外ホームランの大きな当たりで2点差。

ランナーが一掃された後も星稜打線は繋がり続け、1アウト1・3塁の場面がやってくるとギリギリのゲッツー崩れで3塁ランナーが生還、バッターランナーがヘッドスライディングでギリギリ生き残って点差は8-7と遂に1点差。

9回裏、2アウト1・3塁となった所で星稜の4番村上にタイムリーが飛び出して遂にスコアは8-8同点。こうなると止まらない星稜打線は続く打者がレフトフェンス直撃の当たりで鮮やかに逆転サヨナラ。

この試合で逆転負けを喫した小松大谷はこの日の試合を報じた新聞記事をグラウンドに置き続けて戒めとし、翌年2015年の石川大会準々決勝で因縁の星稜と再戦。

そこでは9回裏の小松大谷の攻撃で3点ビハインドという場面が訪れ、星稜ピッチャーの四死球なども絡んで最終回の攻撃ながらノーアウト満塁と絶好のチャンス。内野安打で1点を返して、なおも続くノーアウト満塁では2点タイムリー、犠牲フライでサヨナラ勝利と前年の雪辱を晴らした小松大谷が勝利を収めるという逆転劇も誕生。

3位 明徳義塾(高知) vs 横浜(東神奈川) 1998年 準決勝

平成の怪物の異名を取った松坂大輔擁する横浜はこの試合の前日、準々決勝でPL学園との激戦を繰り広げて松坂は延長17回、250球を一人で投げ切って勝利し連日ニュースは松坂大輔一色に。

そんな中で午前11時に始まったのが明徳義塾vs横浜の一戦。

今日も投げるのか?と注目が集まる中、松坂はスタメンではあるもののレフトとしての出場で前日に約2試合分も投げていることを考えるとこれは当然の判断。そんな松坂に代わってマウンドに向かったのは甲子園初登板の袴塚。

4回表に明徳義塾に先制点が生まれ、さらに5回表は松坂の視線の先、レフトポール際に突き刺さるホームランが生まれて2-0に。さらにこの回には松坂の頭上を高々と越えるホームランで追加点。

実況「松坂がホームランボールを2つ見上げました。この夏。」

5回表で4点ビハインドとなってしまった横浜はここでブルペンに松坂が向かって緊急登板に備えますが、続く6回表に袴塚に代わってマウンドに上がった斉藤が1失点を喫し、8回表にも1失点と着実に点を重ねて行く明徳義塾とは対照的に横浜は8回までに3安打と打線が沈黙し試合はワンサイドゲームの様相に。

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それでも8回裏の横浜の攻撃では明徳義塾の守りのミスにも助けられて反撃の1点を返し、ノーアウト1・2塁で打席が回って来た4番松坂がタイムリーヒットを放つなどしてここで明徳義塾は先発の寺本から高橋に投手交代。

この大会ですっかり寺本→高橋とつなぐ継投策が勝ちパターンとなっていた明徳義塾としては必勝の形で横浜に傾きかけた流れを断ち切ろうと画策し、その狙いは見事に当たって1・3塁ながら2アウトに追い込む事に成功。

これで流れが変わったかと思いきや、キャッチャーがワンバウンド投球を止めきれずに弾いて横浜に3点目。すると、ここで投球練習を続けていた松坂が右腕に巻いたテーピングを外して戦闘態勢へ。

松坂に火が入ったのと同時に何か球場の雰囲気が変わって行くのをひしひしと感じる両ベンチでしたが、ここで横浜にさらに1点が追加されて6-4となった所でピッチャー斉藤に代わって代打の堀を起用する横浜・渡辺監督の判断。となると次の回、斉藤の代わりに松坂がマウンドに登場するのは明らかなわけで、この時、明徳義塾の馬淵監督は「同点にしたら横浜に勝てない」と悟っていたそうで、球場の異様なムードや横浜を後押しする声援などに飲み込まれそうな雰囲気を感じ取っていたとか。

8回裏は6-4となった所でスコアはそのまま動かず、9回表には遂に松坂登場。4番ピッチャー松坂の名前がアナウンスされると超満員の甲子園球場は3万4千人の松坂コール一色に。負けているチームのピッチャーが交代しただけという状況にもかかわらず甲子園は異様な熱気に包まれ、この回に松坂はフォアボールのランナーを許すもきっちり後続をゲッツーで抑えて無失点。

こうして迎えた9回裏の横浜の攻撃では先頭バッターがヒットで出塁し、続いてセーフティーバント成功でノーアウト1・2塁に。続くバントでは3塁送球が逸れてあっという間に絶体絶命のノーアウト満塁に。

実況「横浜の流れの中に明徳義塾の内野陣、飲み込まれようとしています。」

この絶好の機会にタイムリーヒットが生まれてスコアは6-6同点にとなり、ノーアウト1・2塁で迎えたバッターは4番松坂。高校野球人生で初めて送りバントのサインが出たという松坂はきっちりとバントを成功させて1アウト2・3塁とさらにチャンス拡大。ここで明徳義塾は満塁策。

犠牲フライや内野ゴロはもちろん些細なミスも許されないこの状況で1塁の守備に就いていたエース寺本が再びマウンドに上がり、続くバッターは見逃し三振で2アウト満塁。ここで詰まった打球はセカンド後方へ落ちて横浜は6点差をひっくり返して逆転勝利。

実況「明徳義塾のナインは立ち上がれません。」

さらに翌日の決勝戦では松坂はノーヒットノーランで大会を締めくくって横浜が優勝。

ちなみに試合中盤に松坂がブルペンに向かった場面で松坂本人は「投げさせてくれアピール」のために自己判断で投球練習を始めたそうで、テーピングを外すシーンも近くにカメラがいるのを察知して意識して見せるようにそうしたというエピソードも。

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4位 早稲田実(西東京) vs 大社(島根) 2024年 3回戦

近年の高校野球では新制度が次々に導入され、特に2023年から導入された延長タイブレーク制は大きな変化に。

のちにプロ入りする宇野真仁朗を擁する早稲田実業は18年ぶりの全国制覇を狙う強豪で、これに対するは32年ぶりに甲子園の舞台に上がった島根の大社。

9回裏、早稲田実業が1点リードした2-1の場面で迎えた大社の攻撃。セカンドゴロでアウトという場面では悪送球でノーアウト2塁に。続くバントの場面ではピッチャーとバッターがやや重なってしまって送球できずに1・3塁に。

ここで敢行したスクイズで大社は土壇場に2-2同点とし、さらには1アウト2・3塁としてサヨナラのチャンス。そんな中で早稲田実業の和泉監督は守備の奇策を繰り出して外野2人、内野5人でスクイズ封じのシフト。

スクイズか?ヒッティングか?と注目が集まる中、内野5人の守備シフトが功を奏して内野ゴロで1塁はアウト、さらにホームでもアウトを取り切って公式記録「レフトゴロ ダブルプレー」でピンチを切り抜けた早稲田実業。

これで試合はノーアウト1・2塁から攻撃が始まる延長タイブレーク入りとなりますが、タイブレークでは先頭バッターが送りバントで1アウト2・3塁にして得点しやすくするのがセオリーとなっているため、10回表の早稲田実業の攻撃ではセオリー通りの送りバントを行いますが、3塁はアウト1塁はセーフと上手くいかず。続けてバントを行うとまたしても3塁アウトで2連続バント失敗と早稲田実業はこの回無得点。

10回裏の大社の攻撃でも、先頭バッターのバントは失敗に終わり、後続もなかなか決め手に欠ける攻撃でこちらも無得点。

続く11回表、早稲田実業は先頭バッターがサードゴロ ダブルプレーに倒れてまたしても無得点。

そして11回裏、大社ベンチは先頭バッターに島根の地方大会も含めてこの夏初出場となった2年生のブルペン捕手・安松を代打に起用。この場面で自ら代打を申し出たという安松は3塁線に絶妙なバントを成功させてさらには自らも生きるという会心のプレー。

いつかこんな日が来る時のためにとひたすらバント練習を繰り返していたという安松の努力は実り、ノーアウト満塁とした大社は決勝点をあげて2-3サヨナラ勝利。

あの代打の場面で「ここでバントを決められる自信がある者は手を挙げろ。」と大社の石飛監督は選手に聞いていたそうで、そこで安松が「サード側に決めてきます。」と手を挙げたので初出場というのは承知で託すだけだったとのちに述懐。

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5位 星稜(石川) vs 箕島(和歌山) 1979年 3回戦

この年の春のセンバツで優勝し春夏連覇に挑む強豪・箕島に対するは当時まだ甲子園出場回数が少なかった星稜。

4回に両校が1点ずつ取るも、その後は無得点が続いて延長戦へ。

なおも続く投手戦で互いに点が奪えないまま迎えた延長12回表、星稜の攻撃ではこの試合初めてのフォアボールなども出て1アウト1・2塁に。続く打者の打球をセカンドが後逸し、後ろの守備がもたつく間に2塁ランナーが一気に本塁を落とし入れて星稜が待望の追加点。

2-1となって遂に均衡が崩れたという場面で、12回裏、箕島の攻撃では凡打で早々に2アウトとなり、あと1つで試合終了という状況に。

この時、箕島の尾藤監督は「この試合は負けやな…」と敗戦インタビューの事も考えていたそうで、指揮官も諦めムードだったそんな状況で箕島の1番嶋田からホームランが飛び出して同点に。

その後はまたしても投手戦に戻った試合が再び動き出したのは延長16回表、星稜が2アウトながら1・3塁とした所で1点タイムリーを放ってスコアは3-2に。

そしてその裏、箕島の攻撃では2アウトランナー無しの場面で6番森川が打席へ。あと1人で星稜が勝利という場面で星稜の山下監督は「森川くんはデータ上、ホームランも長打もないので、これは勝った。」と確信して勝利インタビューの事も頭をよぎっていたそうで、練習試合を含めてこれまでホームランを一本も打ったことがなかった森川を相手に楽勝ムード。

さらに初球を思い切り振った打球がファウルフライとなるも、落下地点に入った星稜のファースト加藤が人工芝と土の切れ目に足を取られて転倒しキャッチできずというまさかのハプニング。

一球命拾いしたという場面で何かが起こりそうな予感をさせつつ、その直後の打球はレフトへ大きく舞い上がり、箕島の尾藤監督すらも予想していなかった同点弾に。

実況「甲子園球場に奇跡は生きています!」

取っては取られてを3度も繰り返した壮絶な試合は延長18回裏を迎え、ここで点が入らなければ引き分け再試合という場面、箕島は1アウト1・2塁のチャンスを掴み、星稜ピッチャーの投球数が200球を超えるというそんな中で飛び出したタイムリーで3時間50分に及んだ激闘は決着。高校野球史上最高の一つに数えられる名勝負としてこの試合は語り継がれる事に。

6位 智弁和歌山(和歌山) vs 岡山理大付(岡山) 19993年 準決勝

当時、2年ぶりの全国制覇を目指す智弁和歌山に挑むのは19年ぶり2回目の出場で無名校に等しかった岡山理大付属。

1回裏の早々に岡山理大付属で吉備のドカベンと呼ばれた4番森田が大きな当たりでタイムリーを放って1点を先制するも、3回表の智弁和歌山は同点、勝ち越しとあっさり2-1逆転。さらに5回表には智弁和歌山に2ランホームランが飛び出して4-1に。

迎えた7回裏、岡山理大付属は反撃に転じて2点を返して4-3と1点差に追い上げ、試合の趨勢はどちらに傾くのか分からない状態に。

8回表、反撃ムードを途切れさせないためにも絶対に0点に抑えたい場面で岡山理大付属でしたが、逸れた送球を何とかキャッチしようとした5番ファースト馬場が塁上でランナーと足が重なってしまい、スパイクを踏まれて負傷するというアクシデントが発生。痛みで足を引きずりながらも何とか守備に就いた馬場でしたが、その直後は守備機会はなく8回表はスリーアウトチェンジ。

そして8回裏の岡山理大付属の攻撃ではつい先ほど負傷したばかりの馬場が打席へ向かいますが、打席の要を担っていた5番打者の本来の姿とは程遠くファウルフライで凡退。

9回裏の岡山理大付属の攻撃では簡単に1アウトを取られ、後続の打者も簡単なサードゴロで2アウト。と思いきや送球が乱れて1塁はセーフ。続く打者もしぶとくヒットを放って1アウト1・2塁。

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ゲッツーで試合終了という場面ではファーストゴロで2塁上はアウトになるも、1塁送球は間に合わずセーフ。2アウト1・3塁となって迎える打者は4番森田。

実況「吉備のドカベンと言うよりはまさに平成のドカベンと言っていいでしょう。森田登場です。」

ここで智弁和歌山ベンチは4番を敬遠して満塁策に。後続の5番打者は怪我を負った馬場という事もあってここは当然の判断。

何かが起こるとしたらここしかないという状況で、馬場が放った会心の当たりは左中間を真っ二つ。ガックリと肩を落としてうずくまる智弁和歌山キャッチャーの横をガッツポーズで走り抜けていくサヨナラのランナー。

怪我をした馬場は足を引きずりながら1塁を回ってそこでチームメイトと歓喜の抱擁。カメラが切り替わるとキャッチャー同様にマウンド上でうずくまる智弁和歌山エースの井上。

この時、馬場は足の痛みが激しいために全力スイングは1回が限界と腹をくくっており、一撃入魂で岡山理大付属は大逆転。

7位 久慈商(岩手) vs 徳島商(徳島) 1993年 2回戦

徳島商のエース川上憲伸は四国の豪腕と注目を集める存在でのちに中日なメジャーで活躍した本格派右腕。対するは甲子園初出場の久慈商。

試合は1回表からヒットにスクイズと川上を攻め立てる久慈商の攻撃が見事にハマり、守備の乱れなども絡んであっという間に久慈商が3-0と先制。最悪の立ち上がりでリズムがつかめない川上は2回表に自らの悪送球でチャンスを献上し、1アウト3塁でまたしてもスクイズ攻勢にやられて序盤で4-0。

さらに5回表には久慈商が1アウト3塁の場面で、前進守備で警戒する徳島商のスキを突く形でタイムリーを放って6点目とここまで川上らしいピッチングが見られないまま試合は正午の時を迎える事に。

ここで夏の甲子園全48試合の中で1試合だけに訪れる8月15日(終戦の日)正午の黙とうの時間。当時を回想する川上はこんな時間があるとは全く予期していなかったそうで黙とうに代えて「もう一度我々に力をくれ」と内心は祈っていたとか。

これで気持ちがリセットしたのか、やや立ち直りを見せた川上は6回以降ランナーを背負いつつも粘投を続けて1失点に抑えて試合は終盤へ。

8回裏、0-7と大量リードをされた状況で迎えた徳島商の武市監督は「8回裏1アウトでは追い詰められたなって印象は無かった。このイニングの最初はとにかくストレート狙い。」という思いでベンチから見守っていたそうで、というのも久慈商のエース宇部は4回まで変化球でストライクを取っていたのが、試合後半に入ると変化球のストライクが減ってそのキレもダウンするという不安要素を露呈。

そんな相手エースのスキを見逃さなかった徳島商打線はストレートに狙い球を絞って怒涛の連打を続け、通常であれば捕球できそうな打球も後逸する守備のミスなども絡んでこの回一挙7得点を挙げた徳島商は同点に。

実況「まさか!まさか!まさか~!奇跡を招き入れた徳島商業高校。8回裏、阿修羅のごとき反撃になりまして、同点に追い付いています。」

すると9回表はここまでピリッとしなかった川上が完全復活し、ストレートの球速が一気に上がって「7点を取られていた川上投手とは思えません。」と実況されるほどの出来でこの回は三者凡退に。

そして迎えた9回裏、1アウト1・2塁で徳島商サヨナラのチャンスに浅く守っていたレフトの頭上を遥かに越える大飛球で大逆転勝利。

あの黙とうの1分間で全てが変わった奇跡の7点差大逆転。

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8位 広陵(広島) vs 佐賀北(佐賀) 2007年 決勝

のちにプロ入りをして活躍する野村祐輔、小林誠司、土生翔平、上本崇司を擁する広島の強豪・広陵に対するのは公立高校の佐賀北という決勝戦。

佐賀北はこの時2回目の甲子園出場ながら2回戦では宇治山田商を相手に延長15回を引き分けて、その後の再試合で勝利し、準々決勝では優勝候補・帝京に延長13回でサヨナラ勝利を収めるなど、無名だった公立校の快進撃に世間の注目が集まり「佐賀のがばい旋風」の真っただ中という状況。

試合が動いたのは2回表、佐賀北はスター軍団広陵に先制を許して2-0に。

何とか挽回したい佐賀北だったものの広陵のエース野村の好投に打線は沈黙して6回終了時点でわずか1安打。

さらに7回表の広陵の攻撃ではエース野村のタイムリーでさらに2点を追加されて4点差となって8回裏の佐賀北の攻撃に。

1アウトランナー無しの場面でようやく2本目のヒットを放った佐賀北でしたが実はこの時、エース野村にあるスキが生まれているという事をベンチ内で共有。それが決め球のスライダーが甘くなっているという攻略の糸口。試合後半になってスタミナが落ちて来るとスライダーが甘くなるという分析でエース野村の攻略にかかった佐賀北は「勝負は終盤。チャンスにスライダーを投げて来るのは分かっているから狙え!」という百崎監督の指示のもとで徹底的に素ライダー狙い。

するとそれまでの打線の沈黙がウソだったかのようにチャンスを広げて8回裏に1アウト満塁。するとここでフォアボール押し出しで遂に佐賀北がこの試合初得点。勢いそのままにエース野村のスライダーを捉えた3番副島の当たりは甲子園のレフトスタンドに飛び込んで満塁逆転弾に。

9回表の広陵の攻撃はエース野村が三振に倒れてゲームセット。初優勝を飾った佐賀北のがばい旋風がここに完結。

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9位 帝京(東東京) vs 智弁和歌山(和歌山) 2006年 準々決勝

優勝候補の一角に挙げられていた智弁和歌山と東の名門帝京の対戦は2回裏、智弁和歌山に3ランホームランが飛び出して智弁和歌山が先制。対する帝京は4回表に連打で2得点を返して接戦へ。

ところが4回裏、7回裏に智弁和歌山は4発のホームランを放って試合は一気に2-8と6点差に。

続く8回表に帝京も2点を返して4-8となった所で迎えた最終回、4点取らないと試合が終わってしまう緊迫の場面で帝京はここまで好投したエース大田に代打を送って前年に4番を務めた代打の切り札沼田をこの回先頭打者としてバッターボックスへ。しかし結果はあえなくサードの守備に阻まれて1アウト。

その後はヒットや死球で1塁・2塁とするものの2アウトに。ここで迎えたのはのちにプロ入りする事となる4番中村晃。1-2塁間をしぶとく抜いて行った中村はタイムリーを放ち、続く5番打者もヒットで続いて2アウト満塁。

こうなると止まらない帝京打線はその後もヒットを続けてあっという間に7-8の1点差に。ここで打席に立つのはのちにプロ入りする杉谷拳士。放った打球は三遊間を見事に抜いて遂に帝京が9-8と逆転に成功。9回2アウトからの一挙5連打で試合をひっくり返した帝京でしたが、打者が一巡して迎えた沼田は打った瞬間にガッツポーズをする確信の当たりで3ランホームランダメ押し弾。

4点差の厳しい状況から一転して12-8と4点リードにかわったこの試合、ここから本当のドラマがスタート。

9回裏、守備に就く帝京ベンチにはある不安要素が。エース大田に代わった沼田がホームランを放ったものの、帝京はその代償として3人いたピッチャー全員を既に使い果たしてしまい、帝京は昨年までピッチャーでこの年に野手に転向していたセンターの勝見をマウンドへ。

ところが、この回を凌げば勝利という緊張の場面でストライクがなかなか入らず、連続の四球でノーアウト1塁・2塁。智弁和歌山としては相手ピッチャーに不安があるという事は重々承知で、ベンチの指示は「待て」一択。無理に打ってアウトになるのではなく、しぶとく甘い球が来るのを待つ作戦に徹した結果は完璧にハマって4番橋本が1点差に迫る会心の3ランホームラン。

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走者がいなくなっても勝見のコントロールは定まる事無く、またしても四球でノーアウト1塁。この時、帝京メンバーで投手経験のある野手は3人という状況で白羽の矢が立ったのは1年生でショートを守っていた杉谷。中学時代に投手経験があったものの高校の公式戦では一度も投げていない杉谷が緊急登板となったこの場面、初球でいきなり死球を与えた事で杉谷はわずか1球で降板となり、代わりにマウンドに上がったのは3年間全く登板の機会がなく選手のサポート役に回っていた岡野。「岡野で負けたらしょうがない。」と心中の覚悟でベンチが送り出した岡野は次のバッターを外野フライで抑えて遂に1アウト。

しかし、続くバッターにタイムリーを許してスコアは12-12の同点。1アウト1塁・2塁となった所でボールが4つ続いて遂に満塁。その後も3ボール、1ストライクと追い込まれた岡野。「もうボールは投げられません。」という実況のあと、放った1球はボールに外れて押し出しサヨナラ。

エースに代打を送る帝京の決死の作戦が功を奏して大逆転に成功するも、結果的にその作戦が響いて再逆転を喫して負けてしまうというドラマチックな展開から「高校野球史最も壮絶な試合」とのちに語られる事に。

10位 八幡商(滋賀) vs 帝京(東東京) 2011年 2回戦

5年ぶりの出場となった公立高校の八幡商に対して夏2度の全国制覇を誇る帝京はのちにプロ入りする事になる伊藤拓郎、松本剛、石川亮の3人を擁する強豪。

3回裏、5回裏と着実に点を重ねて3-0でリードする帝京に対して八幡商は4番坪田がここ2試合ノーヒットと不調にあえぎ8回終了時点で八幡商のヒットはたった2本。こうして3点差のままワンサイドの空気が流れたまま迎えた最終回。

9回の八幡商の攻撃が始まる前、池川監督は観客で溢れるスタンドを見て選手全員に対して「ちょっとはチャンスを作って盛り上げて行こう。」と声掛け。するとここから怒涛の反撃がスタート。1アウトからあれよあれよと繋がっていく打線は3連打であっという間に満塁に。

ヒットが出れば大量得点のチャンス、ゲッツーなら試合終了という場面で迎えるバッターは4番坪田。これ以上ない場面で巡って来た千載一遇のチャンスはショートゴロで万事休すかと思いきや、ショートの守備がもたついたために1塁は執念のヘッドスライディングでセーフ。

1点を返してなおも続く満塁の場面で3ボール、2ストライクから放たれた打球はポール際に飛び込む逆転満塁ホームランに。5-3と土壇場で試合をひっくり返した八幡商は9回裏をきっちり無失点で抑えて大逆転勝利。

番外編

八千代松陰 vs 市船橋 2025年千葉大会決勝

試合は3-3で延長戦に突入すると、10回表の攻撃で八千代松陰は2本のタイムリーなどで一挙4得点と大きくリード。

これで勝負ありかと思いきや、10回裏の市船橋は1点を返した上にノーアウト満塁の大チャンス。ここでバッターボックスに立つのは6回裏に顔面にデッドボールを受けるもそのまま試合に出続けた3番花嶋。

すると花嶋にフェンス直撃の2点タイムリーが飛び出して追加点。勢いそのままに打線がつながった市船橋は8-7の逆転サヨナラ勝利で甲子園出場決定。

以上、夏の高校野球歴史的大逆転ベスト10でした。

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