庭をつくるようになったのはなぜ?世界の庭園3選とは?チコちゃん
25年10月24日放送の「チコちゃんに叱られる」の問題『人はなぜ庭をつくる?』の答えなどまとめてご紹介。世界の庭の違いを見るとその国の宗教観などが見えて来るようで代表的な世界の庭園3選も。
スポンサーリンクゲスト出演者
【ゲスト】若村麻由美、ニューヨーク屋敷裕政
【VTRゲスト】なし
なぜ庭をつくる?
3問目の出題は、
そもそもなんで庭なんてものを人はつくるようになったの?
チコちゃんの答えは、
自然をコントロールしたかったから
解説は大阪大学の桑木野幸司教授。
古代の人類は生きるために広い自然の中を移動しながら狩りや木の実などをとるという狩猟採集生活を送っていましたが、やがて時代が進むと住む場所を決めて農耕によって安定した食料を作る生活に変化。
それでも大雨や洪水で農地が荒れて食料不足になったり、住んでいる場所が猛獣に襲われて危険にさらされたりといったリスクは常に存在し、今以上に自然に脅威を感じていた人間は安心して暮らしたいという思いから自分の住む場所の近くに好きな花や果物を植えて小さな自然を囲ってコントロールするという行動をとるようになり、これがそもそもの庭造りのきっかけになったとされていると桑木野先生。
人類初の文明を築いたシュメール人はハンティングパークと呼ばれる一種の庭を持っていたことが明らかになっており、紀元前4000年ごろに王族によってつくられた狩場(=ハンティングパーク)では自然豊かな土地を柵で囲って、そのエリア内に狩りのための獲物を放し飼いにするといった事が行われていたようで、本来の狩りであればどこに猛獣がいるか分からない危険を伴うものに対して、人工的な狩場でより安全な狩りを実現したこのハンティングパークは自然をコントロールしようとした人間の願望がよく表れた例。
スポンサーリンクさらには別の国から珍しい植物を持ち帰って植えるなど持ち主の趣向に合わせた景観に整備するといった事も行われていたようで、狩りを主な目的としたハンティングパークに限らず、好きな果物や植物を植えたり、庭で食事を楽しむなど現代にも通じるような庭のスタイルが誕生。
ちなみにハンティングパークは古代ペルシア語でパイリダエーザ(囲まれた庭)と言い、パラダイス(=楽園)の語源と考えられており、楽園をテーマにした絵画には果物や綺麗な花が咲く緑豊かな場所が描かれている事が多く、神話などでも果物などの食料が豊富で働かなくても生きる事が出来る場所として楽園が多く登場していて、そんな楽園を夢見た人々は自由や権力の象徴として、それらを模した庭をつくったのではないかと考えられているとの事。
こうして庭は世界各地でそれぞれの文化の影響を受けながら進化を遂げていきますが、国によっては自然の扱い方が全く異なっている点も興味深いと桑木野先生。
という事で最後に世界の庭文化が分かる場所を一覧でご紹介。
【インドのタージ・マハル庭園】
1631年に当時のインド皇帝シャー・ジャハーンが最愛の妻ムムターズ・マハルのために立てたお墓がタージ・マハルですが、その敷地には水と緑が豊かな広大な庭。これはイスラム様式と呼ばれる庭園でインド北部が非常に暑くて乾燥しやすい気候で砂嵐などの脅威もあったため、暑さや砂嵐から身を守るために壁や塀で周囲を囲うスタイルの庭が広まったと考えられているとか。さらに水が貴重な資源だったために水を多く使った人工的なオアシスのような庭造りが特徴的。
また、中央の噴水を中心として水路でエリアを四分割する四分庭園(チャハルバーグ)はイスラム世界の楽園を表現しており、四方向に分かれた水路はそれぞれ水・酒・ミルク・はちみつを表していて豊かさや清らさといった永遠の幸福のシンボルに対応。
スポンサーリンク【フランスのヴェルサイユ庭園】
1660年代からフランス国王ルイ14世が絶対的な権力を示すために自分が住むヴェルサイユ宮殿の前に40年以上かけて造ったフランス庭園の最高傑作。その広さは東京ドーム約170個分にも及び、庭園の中心にはアポロンの泉水と呼ばれる大きな泉があり、ルイ14世は自らを太陽神・アポロンと重ねて絶対王政の権力と秩序のシンボルとしてしていたことに関係。
このような西洋の庭は自然を支配したいという欲求が特に強く表れていて、植栽の形を四角形や三角形などに刈り込んで人工的な形に整えたり、石を動物や人の形に飾ったりと自然を思うがままに変化させるのを好むという特徴。
これは西洋の宗教観として神がコンパスと定規を使って世界を形作ったという考えが根底にあり、自然の本来の姿は四角や三角の幾何学模様であると考えられていたことが理由の一つに。人が神様を真似て自然の成長を支配していかにえ完璧に従わせられるか?というのが西洋的な庭造りのメインテーマ。
【日本の岡山にある後楽園】
江戸時代に造られた日本庭園の集大成と称される日本三名園の一つ。大きな池を中心としてその周囲に小道を巡らして歩きながら水路、茶畑、茶室など様々な景色を楽しめる情緒あふれる庭園では植物や石が自然にあるがままの姿を保っており、西洋的な庭園とは真逆の思想がうかがえることに。
これは日本に古来からある八百万の神(=全てのものに神が宿る)という考え方がベースになっていて、手入れを最小限にする事で自然の形を保つというのが基本。鎌倉時代に書かれた徒然草にも「特に手を入れていない庭の草も趣がある」という記述が登場していて、日本人が古くからありのままの自然に美意識を持っていたことがうかがえる証拠に。
時に権力の象徴としてつくられた庭への憧れは少しずつ庶民の間にも広まって現在までに世界中で家に庭をつくる文化が定着するように。
という事で3問目は以上。
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