人が炭を使うようになったのはなぜ?チコちゃん
25年7月18日放送の「チコちゃんに叱られる」の問題『なぜ炭を使うようになった?』の答えなどまとめてご紹介。
ゲスト出演者
【ゲスト】伊集院光、池田エライザ
【VTRゲスト】なし
なぜ炭を使うようになった?
2問目の出題は、
なんで人は炭を使うようになったの?
チコちゃんの答えは、
人類が洞窟で火を使いたかったから
解説は日本炭化学会の岩﨑眞理さん。
そもそもヒトが炭という存在と出会ったのは約100万年前とされていて、この頃は落雷や火山活動から火という存在を知り、どうにか利用しようと試みている時代。
そこでヒトが得たのが森林火災の後に出来る残りかすのような炭で、当時のヒトは炭を使うと火が長持ちするという発見をし、その後は炭を有効活用しようと試行錯誤を行う事に。
この時代のヒトの主な生活拠点は洞窟の中で、そこで食べ物を焼いたり、暖を取ったりという用途で洞窟内で火を燃やしていましたが、こういった事は洞窟生活と相性が非常に悪く、木が燃えると木に含まれている水素や油分が空気中の酸素と結びつく事で水蒸気や一酸化炭素が煙として放出されるので、これが洞窟のような環境で起こると、中が煙でいっぱいになって環境は最悪に。
そこで登場するのが煙の出ない炭の利用。
旧石器時代の炭の作り方は伏せ焼きと呼ばれるもので、並べた木の上に枯れ葉や土でフタをして空気が入る量を減らしたうえで端から火をつけて空気量を調整しながら木を蒸し焼きするという手法によって炭作り。
この時、木の内部では熱分解が起こりますが、酸素を遮断して熱を加えることで木の内部のさまざまな物質を分解して外に出し、そこで残った炭素が炭になるというのが熱分解のプロセス。
そうして生まれた炭には煙の元となる水分や油分が含まれないので、これを燃やしても煙は出ず、洞窟用途にはぴったりという事に。
スポンサーリンク100万年以上前のヒトは炭であれば煙が出ないので快適であると気付き、これを洞窟内で使用して生活を送るようになりましたが、この炭の性質は日本人の暮らしにも大きな影響を与えていたり。
【高温でものづくりが発展】
炭は木に比べて発熱量が多く、高温になるという特徴を持っているので弥生時代の日本では縄文式土器と比べて硬くて薄い良質な土器が作られるようになったという大きな変化。
高温になると粘土に含まれているケイ素成分が溶けて固まることで薄くて綺麗な土器が作られるようになった日本では土器作りが大きく進化したというわけですね。
その後もこの炭の高温を利用する事で奈良時代には銅を溶かして仏像づくりが行われたり、戦国時代には砂鉄を精錬して刀や槍を製作したりと日本のものづくりに大きく貢献。
【火が長持ちで便利】
木の場合は大体1kgあたり15分ほどで燃え尽きるのに対し、炭の場合は同じ重さで2時間ほどもつ場合もあるほど炭は長持ちという性質は奈良時代に火鉢に利用されて室内での暖房器具として活躍し、安土桃山時代には千利休が茶道の基本の一つとして炭の置き方を教えて炭をせわしなく変える必要のない、落ち着いた茶道の文化へ発展を遂げたり。
【赤外線で旨味倍増】
炭は大量の赤外線を出すことによって食材を美味しく焼く事が出来るというのもポイントの一つで、全ての物体から放出されている赤外線は高温になるほどその放射量が増えて行きますが、1000度を超える事もある炭は大量の赤外線を放出する事に。
木から出る炎によって調理をする場合は、その炎が食材の表面に当たって表面から焼けていく事になりますが、炭の場合は大量の赤外線の影響で食材の外と中を同時に加熱。
こうなると例えばお肉の場合だと旨味成分のグルタミン酸が出来上がり、この成分をパリッと焼けた表面が内部に閉じ込めるので食材はより美味しく。
前述のとおり、こうした炭を使った調理は100万年前の洞窟内でスタートして、そこから平安時代には囲炉裏での調理へと進化を遂げ、江戸時代に備中屋長左衛門(びちゅうや ちょうざえもん)が新しく開発した革命的な炭が日本の食文化に大きなインパクトを与える事に。
スポンサーリンク一般的な木炭は450~650度で焼き上げられますが、備中屋長左衛門の炭は1000度以上の高温で焼き上げられた直後にぬれた灰をかけて急速冷却するという手法によって作られ、こうして出来上がった炭はより不純物の少ない引き締まった炭へと変貌。
この炭は備中屋長左衛門の名前から備長炭と呼ばれ、それ以前の炭と比べて長時間にわたって安定した火力で燃え続けるために焼き調理をムラなく行えるようになったり、炭交換の手間が減って食事の提供スピードアップ、灰がほぼ出ないのであおいでも食べ物に付かないなど日本の食文化に大きく貢献。
このように様々な用途で100万年以上前から人類と共に歩んできた炭は今では次世代型の炭素を使った半導体という用途が新しく登場。
スマホやパソコンなどの電子機器に含まれる半導体ですが、炭素は原子の組み合わせによって電気をよく通すグラファイト(黒鉛)や、電気を全く通さないダイヤモンドなどに姿を変えるのでこの原子の組み合わせによって製品に合わせた電流の調整が可能に。さらに炭素は木から作れるので資源量が多く、半導体の原材料として大きな注目を集める存在に。
ちなみに密閉された室内で炭を使うと一酸化炭素中毒になる恐れがあって大変危険なので、必ず換気を行うようにという注意喚起で2問目は以上。
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