テニスの疑問:テニスボールに毛がある理由は?ボールはどう作っている?選手はボールを打つ時になぜ声を出す?
男女ともに日本人選手が世界的に活躍するようになってきたテニス。テレビ中継で試合が放送される機会も一時期に比べて徐々に増えてきていますし、ニュースで試合結果が取り上げられる事も最近では普通になっていますよね。ではそんなテニスにまつわる疑問をいくつかご紹介。そもそもテニスボールに毛がある理由は何なのでしょうか?そしてそんなボールはどのように作られているのでしょうか?また、テニス選手がボールを打つ時に声を出しながら打っているのはなぜなんでしょうか?
そんな気になるテニスの疑問について19年6月23日(22日深夜)放送のテレビ朝日系 「ポルポ」の内容を基に一つずつ解決していきましょう。
スポンサーリンクテニスボールに毛がある理由
球技は世の中に幾多ありますが、ボールの表面が毛(フェルト)で覆われているのはテニスボールぐらいのもので、他のスポーツではあまり見られないですよね。
20代から60代の200人にアンケート調査をした結果、この疑問に答えられたのはわずかに1%という番組調べ。
なかなかの超難問ですね。
この疑問に答えてくれるのは住友ゴム工業株式会社の鈴木文哉さん。
理由は主に2つあり、
- 毛でバウンドを安定させるため
- 毛で軌道が安定してボールがまっすぐ飛ぶように
というもの。
毛でバウンドが安定する
試しに毛ありの普通のテニスボールと毛なしの特殊なボールを2種類用意して、ある一定の高さから地面に弾ませる比較実験を行ってみると、
毛なしのボールだと弾む方向にバラつきが大きいように見えますね。
※番組では触れられていませんが、そもそもボールを落下させた時の軌道が既にバラついている毛なしボールと、落下させた時の軌道が安定している毛ありボールという点は無視されてしまっていますね。
この実験では筒からボールを落とす事で落下させる時の軌道を一定に保つようにしているようですが、恐らく筒を通る時に毛ありのボールは摩擦力が少なく済んでスムーズに転がり落ちたのに対して、毛なしボール(=ゴム剥き出しボール)はゴムと筒との摩擦力が働いて筒の中で多少ひっかかりが起きていたのでは?と推測されます。
まあそんな細かいツッコミは置いておいて、テニスボールの歴史を紐解いてみると、1870年頃に中が空洞のゴムボールが登場してテニスに使われるようになったのですが、ゴムボールは芝生の上だとバウンドが不安定でどこに弾むか分からないという問題が発生。※ちなみに当時のテニスで使われていたゴムボールの色は赤やグレーだったとか。
そこでゴムの上に布やフェルトを巻いた所、評判になって徐々に広まる事に。そこから脈々と今に続いているというわけですね。
コチラが1870年代のテニスのプレー映像から徐々に時代が進んでいく過程を紹介したYouTube動画。
番組の情報に補足しておくと、ジョン・モイヤー・ヒースコートというイギリスの法廷弁護士でかつ自身もテニスプレイヤーだった人物が初めにゴムボールにフランネル生地を巻き付けるという方法を考案したとか。
実はこのジョン・モイヤー・ヒースコートはテニスのルール作りにも携わったほどのビッグネーム。
スポンサーリンク毛でボールがまっすぐ飛ぶ
そして2つめの理由として挙げられた「毛で軌道が安定してボールがまっすぐ飛ぶように」については、元プロテニス選手で全豪オープンベスト8の実績を誇り、現在はバラエティ番組などでも活躍する沢松奈生子さんが実証実験に参加。
実験内容は、毛ありと毛なしのボールを10球ずつ打ってもらって、最新鋭の弾道測定機器(トラックマン)えボールの飛んだ方向を測定して比較するというもの。
実験に使用したトラックマンは元々は弾道ミサイルを迎撃するパトリオットミサイルの技術が応用された機器で、ボールの軌道・速度・回転数が打った瞬間に分かるというシロモノ。
ゴルフ中継で使用されているのでゴルフファンは目にする機会が多いかもしれませんね。
コチラがゴルフ中継で使用されるトラックマンの様子を収めたYouTube動画。
ちなみにこのトラックマンのお値段は330万円~だそう。
沢松奈生子さんには通常のサーブを打つ感覚で、サービスボックスに設けた50cm四方の的を狙うようにリクエスト。
毛ありのボールではいつもの感覚という感じでサーブを打つ様子の沢松奈生子さんですが、毛なしボールは打った瞬間にそのフィーリングの違いに驚いている様子。
沢松奈生子「うわー!難しい!飛ぶ!」
毛なしボールの場合は明らかに感覚が狂ってしまっている様子で弾道がバラバラ。集弾性に大きな違いが出てしまいましたね。
沢松奈生子「全然思った所に飛んでいかないですね。いい感覚で打ってたらギュイっと曲がったり、曲げたつもりないのに曲がってるとか。」
加えて毛なしボールを使ってストロークを打ってみますが、ノーバンウンドで反対側のフェンスまで飛んでしまうほどコントロールを乱している様子。とにかくボールが飛び過ぎるという感想。
これは一体なぜなんでしょうか?
毛なしボールだと弾道が不安定になってしまう原理について工学院大学で風洞実験で確かめてみます。
風洞実験とは人工的に空気の流れを発生させて、空気の流れを可視化する装置や施設の事。
車のボディ開発で空気抵抗などを調べたりするのに使われますね。
風洞は英語だとウィンドトンネルと言いますがYouTube動画だとこんな感じ。
ということで毛ありボールと毛なしボールを風洞実験で比較。
スポンサーリンク毛なしボールのすぐ後ろを乱れた空気が渦を巻くようにして流れているのが見て取れますね。これはいわゆる“ドラッグ (空気抵抗)”と呼ばれる空気の流れ。
工学院大学の伊藤慎一郎教授は「毛がある事によって飛行軌道が安定して、確実に狙った所に落ちるというようなボールが出来ます。」という説明。
ちなみにゴルフボールの表面にある凸凹(ディンプル)もテニスボールの毛と同じような役割との事。
テニスボールの作り方
ではテニスボールにどのようにして毛が貼り付けられるのか?も含めてテニスボールが出来上がって行く工程を見てみましょう。
コチラがYouTube動画。
HEAD ATPボールは多くの大会で使用されているメジャーな公式球の一つですね。
大きな錠剤みたいな形になったゴムをたこ焼き器みたいな機械に投入していますね。そこでゴムを溶かして半球型に。
それを2つ貼り合わせるとテニスボールの核が完成。
途中で登場したのが巨大なシート状の黄色いフェルト。大きな1枚から球に合うサイズの型を次々に抜いていきます。
それを2枚セットでゴムのボールに貼り付けていきます。
公式球は1.8気圧の空気圧がかかるように定められていますが、空気穴が存在しないテニスボールにどうやって気体を注入する(膨らませる)のか?というと、
ボールの内部に反応剤を入れて化学反応を起こさせることでボール内部に窒素を発生させて、その圧力で内部が1.8気圧になるようという仕組み。
そうやってボール内部を1.8気圧にしたボールを缶に入れて完成。
なぜテニスボールが缶詰風になっているかというと、それは使用前にボールの圧力が下がらないように缶にも圧力が加えられているからなんですね。
缶の中は2気圧になっていて、缶に強く圧力をかけておくことでボールの圧力が抜けて行かないようになっているというわけ。
スポンサーリンクテニス選手はなぜ声を出す?
そして3つ目の疑問はテニス選手の声の謎。
20代から60代の200人にアンケート調査をした結果、この答えを知っていたのは8%という番組調べ。1割に満たないこれまた難問のようですね。
解説の慶應義塾大学の村松憲教授によると、声を出す事で自然に息を吐くことになるので、息を吐く事で無駄な力が抜けて瞬間的に筋力(パワーとスピード)がアップすると言われているからとの事。
コチラがテニス選手たちのうなり声を収めたYouTube動画。
サムネイル画像は女子シングルスの元世界ランク1位のビクトリア・アザレンカですね。マリア・シャラポワと共に大きな声を出して打つ選手の代表格。男子だとラファエル・ナダルやノバク・ジョコビッチなどが有名ですね。
逆に長年トッププレイヤーの一角を占めるロジャー・フェデラーや日本の錦織圭はココという所以外ではあまり声を出さないタイプ。上記の声を出すタイプの選手は常にうなり声を上げているイメージですよね。
コチラのYouTube動画は現役の選手たちにうなり声だけ聞いて、その声の主は誰かを判別してもらうという企画。
ラファエル・ナダルの声はテニスファンなら誰でも答えられると思いますが、後半に行くにつれて難問に。
さて本題に戻ると、このように声を出す事で筋力が最大で12%アップするという研究データもあるとか。
実証実験の為に沢松奈生子さんに再度協力してもらって、声を出す場合と、出さない場合でサーブ速度に違いが出るかどうかを実験。
ちなみに沢松奈生子さんは現役時代は声を出すタイプの選手だったとか。
実験してみると声を出さないと力がボールに伝わっていない感じという感想。
それぞれ10球ずつ打ってもらってサービス速度を比較すると、
- 声ありサーブは平均すると約141km/h、最速で146km/h
- 声なしサーブは平均すると約108km/h、最速で119.9km/h
という結果。
既に紹介しているように世界トップクラスの選手でも声をあまり出さないタイプの選手もしっかり活躍しているので、声を出す方がいいのかどうかは人によるという事で。
というわけで以上、番組で紹介されたテニスの疑問についてでした。