世界一受けたい授業で紹介された「正義中毒」とは?その原因は脳の衰え?対処法は?
20年7月11日放送の日本テレビ系「世界一受けたい授業」では「正義中毒」について脳科学が専門の中野信子先生が解説。正義中毒になるメカニズム、SNSと正義中毒の関係性、正義中毒にならない為の脳の鍛え方などなど。
放送内容から抜粋して詳細をまとめてご紹介します。
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解説は正義中毒の名付け親で脳科学者の中野信子先生。
まずこの正義中毒の詳しい意味についてですが、
正義中毒とは、
自分が絶対に正しいと思いこみ、自分の考えに反する他人の言動に対して「許せない!」という感情が湧き上がり、正義の名のもとに相手に攻撃的な言葉を浴びせたりして叩き潰そうとする事を脳科学的に表現した言葉。
分かりやすい例だと新型コロナによって問題となった「自粛警察」「県外ナンバー狩り」などの行き過ぎた行為も正義中毒の一種。
このように正義感が暴走して他人を過剰に誹謗中傷し、痛めつけようとする人は正義中毒の恐れあり。
なぜ正義中毒になる?
ではなぜ正義中毒に陥ってしまうかというと、それは、
人間の脳が他人を罰することに快感を覚えるように出来ているから。
自分の考えに反する人を攻撃すると脳の側坐核(そくざかく)と呼ばれる箇所が刺激されて、快楽物質であるドーパミンが放出されるため、過剰な正義感で中毒のように他人を攻撃してしまうというメカニズム。
誰しもが陥ってしまう可能性があり、特に社会的・経済的危機が続いて社会情勢が不安な時にこの問題は表面化しやすいと警鐘を鳴らす中野先生。
ちなみにメディアの仕事としてコメンテーターなどで「ご意見番」的にコメントをしているタレントや専門家の方は、仕事柄モノ申すというクセがつくにつれて、どんどん「気持ちよくなって」しまい、いつの間にか正義中毒に陥っているケースもあるとの事。
確かに言われてみれば、ワイドショーや情報番組ではそんなシーンも見受けられるような気もしますよね。
特に「一見良い人に見える人」は正義中毒に陥るリスクがあるので要注意。
例えば率先して他人の分も後片付けをしたりという人は、その裏に「自分のスペースを汚されたら絶対に許さない!」という感情をひた隠しにしているなんて事も。
こういうタイプの人はいつの間にやら正義中毒者に変貌してしまっていたり。
SNSと正義中毒
正義中毒はSNSの普及とともにそのケースも増えているそうで、その理由が、
- 匿名性
- 似た者同士が集まりやすい
という2点。
SNSでは考え方が似た者同士でつながる事が多く、自分が欲しい偏った情報だけを受け取りがち。
「同じ思考の人といる時、幸せホルモンの一つ、オキシトンが分泌されているのでとても心地よい状態になります。」
ところが、そこに自分の考えに反する意見が出てくると、
「自分と違う考えを持った人を見つけた時、脳の前帯状皮質(ぜんたいじょうひしつ)が反応して、嫌な気持ちになります。その嫌な気持ちを早く消したいがために相手を積極的に攻撃してしまうのです。」
と中野先生の指摘。
このSNS上での誹謗中傷は今や世界的な社会問題になっていますよね。
例えば韓国では誹謗中傷が原因で命を絶つというケースも相次いでいて、「指」で打ったSNSの誹謗中傷によって人を殺してしまう「指殺人」なんてワードも生まれていたり。
これは日本でも同様の事件が起こっていますよね。
通常は身勝手な発言を抑制しているのは脳の前頭葉の働きによるものですが、自分の正体を隠せる匿名の場合は前頭葉が働きにくい状態になっていて、気持ちをコントロール出来ずに直接会った事も無いような人を相手に攻撃的な言動をとってしまうとか。
同調圧力
自分こそが正しい!と思いこんでしまう正義中毒者ですが、他人を誹謗中傷してしまう要因はもう一つ。それが、
同調圧力
同調圧力とは周囲の意見に対して自分の考えが少数派であると、その意見を発言する事で自分の立場が危うくなる事を恐れて、内心は納得していなくても多数派の考えに合わせて一緒に相手を攻撃してしまったり。
正義中毒の人はこの同調圧力に敏感で、特に日本人はこの同調圧力の影響を強く受けやすい民族だそう。
その理由が、
自然災害
日本は台風、豪雨災害、地震といった自然災害が多い国。
そんな状況から生き延びるためには他人との協力が必要不可欠で、個人よりも集団の意思決定を尊重する事が求められる社会。
例えば新型コロナの事態収束を目指してみんなで協力し合い一致団結している時などは同調圧力が強く働いて、それが行き過ぎると正義中毒になりやすい状況でもあるとか。
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また、正義中毒の傾向をより強める人の怖い特徴として、
怒らせると何をするか分からない
というポイントもあるそうで、これは日本人に多く当てはまるとの事。
人間のイライラをコントロールしているのはセロトニンという物質。
そのセロトニンの量をコントロールしているのがセロトニントランスポーターというたんぱく質で、その量が少ない人ほど強い復讐心を持ちやすいという傾向があるのだとか。
イェール大学医学大学院の研究では日本人のセロトニントランスポーターの量は世界で一番少ない部類であることが明らかになっているそう。
つまり、脳科学的には日本人は一度頭に血が上ると何をする分からない民族だったり。
その為に不謹慎な行動や芸能人の不倫などのスキャンダルに対して日本人は一斉に攻撃しがち。
脳の衰えが原因?
正義中毒にはまり込んでいる人というのは脳がちょっと衰えている可能性があると中野先生の指摘。
脳が衰えてくると自分を客観視できなくなってしまい、客観視ができなくなると「他人を許せない感情」を抑えられなくなるというリスクがあるそう。
さらに“ある事”を頻繁にしてしまう人は脳が衰えているサインとの事ですが、それが、
過去を美化する行為
自分の悪かった所を全部スルーして、良かったところだけを都合よく思い出すという行為は、脳の前頭前野が客観的に自分を見られていない衰えのサイン。
これは自分にも当てはまるという人多いんじゃないでしょうか?
「昔は良かった」というのお話はいつの時代もされがちではありますが、それは脳が衰えて客観視出来なくなっている為かもしれませんよ?
正義中毒にならない為に
最後に正義中毒にならない為に日頃から私たちが心がけるべき事について伺ってみると、答えは、
普段あまりしない事をする
「前頭前野を鍛えれば良いという事なので。」と中野先生。
例えば、
- 目的地へいつもと違う道を通る
- 普段やらない事をする
などしていつもの慣れを少し変えるだけで脳は活性化するそう。
日常的に慣れ切った事をしている時は脳には新しい刺激があまり入らないので、前頭前野だけではなく脳そのものが活動しなくなってしまうので新しい刺激をどんどん入れてあげるべき。
外出自粛期間などをきっかけに家庭菜園を始めたり、料理を始めたり、普段やらない掃除にやけに熱が入ったりという人が多いそうですが、脳の為にはとても良い事なんですね。
「『他人の事は自分の人生にあまり関係ない』という感覚をあらかじめ持っておいて、誰か人と接する時には良い距離感で接しようと心がけておく事が一番大事かなと思います。」
そんな中野先生のまとめで以上、「世界一受けたい授業」で紹介された正義中毒の解説や、その原因、対処法についてでした。