消せるボールペンが消える仕組みは?その開発の歴史とは?チコちゃんに叱られる
21年8月13日放送のNHK「チコちゃんに叱られる!拡大SP」で出題されたのは『消せるボールペンで書いた文字が消えるのはなぜ?』という問題。恒例のチコジェクトXのVTRで消せるボールペンの開発の歴史について見ていくと、散々寄り道したあげくに研究者たちの努力が遂に実った商品だったという事がよく分かるわけで。
スポンサーリンクゲスト出演者
【ゲスト】郷ひろみ、石原さとみ、奥田民生
【VTRゲスト】田口トモロヲ
消せるボールペンで書いた文字が消えるのはなぜ?
3問目の指名は、
この中で一番、文字を綺麗に書きそうなステキな大人ってだーれ?
ここは曲作りをしているという事で本人は「メチャメチャ(字が)汚いです。笑」と否定していますが奥田民生さんが回答者に。
チコちゃんの疑問は、
なんで消せるボールペンで書いた文字は消えるの?
インクが液体じゃなくて固体だからという答えですが、
チコちゃん「ボーっと生きてんじゃねーよ!」
石原さとみさんに聞いてみると口元に正解マークとピヨピヨ音で見事にチコった様子。
チコちゃん「はい。つまんねーヤツだな~。」
というわけでチコちゃんの答えは、
温度が上がると透明になるインクが出来たから
ペンの説明書きをよく読んでいたという石原さとみさんはお見事。
解説は筆記具メーカー パイロットの消せるインク開発責任者・千賀邦行さん。
実はあの消せるボールペンで書かれた文字はこすった摩擦熱に反応してインクの色が透明に変化しているというのが真実。
一般的なインク(顔料インク)は液体の中に色のもととなる小さな粒が入っているのですが、
透明になるインクではその色のもととなる粒を小さなカプセルにして3つの成分、
- A 発色剤 – もともとは無色ですがBとくっ付く事で発色してインクに色付け
- B 発色させる成分
- C 変色温度調整剤 – 普段は眠っている状態ですが温度が上がるとBを引き寄せてAから離す
を封入。
この成分のうちで温度によってBを引き寄せたり、離したりする変色温度調整剤のおかげでインクの色が変化するというのが基本的な原理。
スポンサーリンクこの原理は今から半世紀ほど前にパイロットが発見した画期的なものでしたが、そこから消せるボールペンとして商品化にこぎ着けるまでは30年以上の年月がかかったとの事。
ここで始まるのがチコジェクトX。
「文字は消えても夢は消えない ~消せるボールペン誕生物語~」
時は大阪万博が開かれた1970年。
パイロットの研究者が紅葉した山を見て「あの葉っぱのように温度の変化で色が変わるインクは作れないものか?」という発想を元にして開発をスタートしたのが消せるインクの出発点。
様々な化学薬品の配合をテストする事1年、温度で色が変わるインクは無事完成。
画期的な発明だった反面「すぐに商品にはならない」という大きな問題点も。
この時点ではあくまで研究室内でインクが完成したに過ぎず、インクとして商品に組み込むには色が薄い、カプセルが弱いといった改良点がまだまだ山積。
その後5年の歳月がかかり、ようやくこのインクを使った第一号の製品が誕生。
1976年に発売された「魔法のコップ」は冷たい飲み物を紙コップに注ぐと枯れ木に花が咲くというアイデア商品。
ところが実用的とは言い難い商品で本命となる筆記具にはまだまだほど遠い「不本意な商品」というが現実。
同じ仕組みを使ったガラス製のコップなども発売したもののコチラも不本意な商品のままなのは変わらず。
そこからさらに時代が進み、1985年には水の入った鍋にエビの模型を入れると色が変わって揚げたように見えるというおままごとセットを発売。
筆記具が作りたいのに子どものオモチャとこちらもやっぱり不本意な商品には変わりませんが、この翌年にキーマンとなる千賀邦行がパイロットに入社してインク開発チームに加入する事に。
「おもちゃ用インク」と揶揄されるこのインクに大きな可能性を見出した千賀は飽くなき研究の日々を送り、いつしか開発チームは不夜城と呼ばれるほどになったとか。
この頃の研究テーマは「温度が上がり一度変化した色を温度が下がってもキープしたままに出来ないか?」というもの。
それまでの色の変わるインクは例えば30℃以上で色が消え、30℃以下になると元の色に戻るものでしたが、
これに対して新規開発しようしたのは30℃以上で色が消え、温度が下がっても消えたままの色をキープし、10℃以下になると初めて元の色に戻るという性質を持つインク。
この新しいインクは1988年に遂に完成。
するとアメリカのメーカーからある依頼が舞い込むことに。
そのリクエストとは「そのインクを使ってかわいい人形を作って欲しい。」というもの。
水で冷やしたスポンジを唇や目に当てると口紅やアイシャドウが現れるというメーキャップ人形。
温めたタオルで拭き取るとノーメイクの状態に戻るというやはりこれも子ども向けオモチャ。
不本意ながらもアメリカで大ヒットを飛ばしたこの商品のおかげで色が変わるインクの研究がさらに続けられるように。
社内での評価も上がって「筆記具にこのインクが使えないか?」と遂に本丸の研究が本格化する事に。
そして2001年になるとこの研究方針が社の大々的な方針へ。
スポンサーリンク色が変わる原理が発見されてから30年の時が経過した頃、2002年にはこすると色が変わる不思議なボールペンが遂に発売。
普通に書くと黒い文字で、こするとピンク色に変化するという「イリュージョン」と名づけられたペンは新しモノ好きの若者にウケたものの、売り上げはなかなか伸びずすぐに廃盤の憂き目に。
実用性の面で消費者になかなか受け入れられなかったことが敗因でないか?と振り返る千賀さん。
それでも筆記具としてのゴールが徐々に見えた事で開発は進み、そんなタイミングで一人のフランス人が救世主に。
グループ会社社長であるマルセル・ランジャールが提言したのは「黒い文字が赤になるのではなく、黒が透明になるインクは作れないか?」というもの。
このまさかの問いに対する答えはまさかの「それは最初からある…」という幸せの青い鳥のようなエピソード。
日本人は元来、鉛筆で書いて消しゴムで消すという環境が普通だったりするものですが、一方のヨーロッパでは小学生の時から勉強にボールペンや万年筆を使い、間違えたら修正液を使うのが当たり前。
これを踏まえてヨーロッパでは絶対に売れるので消せるボールペンを是非とも作って欲しいという強いリクエスト。
そこで開発に取り掛かったわけですが、商品化の際には立ちはだかる壁としては、
「猛暑でも書いた文字が簡単には消えず、かなり高い温度で一度消えた文字が冬の寒い場所でも消えたままをキープする温度設定」
その結果生まれたのが65℃になると消え、-20℃で元の色に戻るという温度設定を持つインク。
こうして2006年に消せるボールペンがヨーロッパデビュー。
結果は売れに売れまくって発売からすぐに在庫切れの状態になり大ヒット。
そして翌年の2007年には日本発売。
結果はやはり売れまくりの大ヒット。
消えるボールペンが「市場から消える」というバカ売れ状態。
初めてインクが透明になったのが1971年である事を考えると、それから36年後の2007年にやっとそのポテンシャルを開花させる事に。
「いつかは筆記具に」という研究者たちの夢は決して消えることなく、遂に長い時を経て成就したわけですね。
2019年時点で世界累計販売本数は30億本。
というわけでコチラが結論。
消せるボールペンが消えるのは温度が上がると透明になるインクが出来たから
でした。
この世から消し去りたいのは?という質問には「ケンカ、いさかい事、妬み、嫉み、恨み、つらみ、ハラミ、畳、鏡。ちゃうか。」と後半は語呂合わせのチコちゃん。
最後に塚原愛アナから補足。
透明になる温度が65℃に設定してあるのは、力の弱い子どもや女性が専用のラバーで紙をこすった時に出せる温度が65℃だったからというのがその理由なんだとか。
消せるボールペンには温度以外の仕組みで消せるものもあるという注釈で3問目は以上。
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