錦織圭選手の2016ATPワールドツアーファイナルズ2戦目。マレー戦
初戦はワウリンカ選手の不調もあって、結果的には快勝した錦織圭選手でしたが、2戦目のアンディー・マレー戦はそう上手くはいきません。つい先日、あのノバク・ジョコビッチ選手から世界ランキング1位の座を始めて奪ったばかりで上り調子のマレー選手から勝利するのはそう簡単にはいきません。
とは言っても、勝てない相手では決してなく、直近の2016年US OPENで勝利したのは記憶に新しいところです。ちなみに今シーズンの顔合わせは今回で4回目。
一つ興味深いのが、その全てがやや趣が異なった試合ばかりだということです。今年の初戦は日本vsイギリスのデビスカップ、2戦目はリオデジャネイロ五輪、3戦目がUS OPEN、そして4試合目がこのツアーファイナルズです。どれを取っても通常のトーナメントとは異質の試合ばかりですね。オリンピックでは完敗といった試合内容で力の差を感じましたが、それ以外では5セットにもつれる接戦で、勝敗を分けたのは紙一重でした。
スポンサーリンクアンディ・マレー選手の特徴は?
マレー選手の特徴としては、サーブ力、ストローク力、守備力が高い次元でミックスされた守備的なカウンタープレイヤーという印象です。自ら積極的にストローク戦をリードして、早いゲームを展開させていくよりは、じっくりと攻めながら、カウンターでポイントを取っていくタイプです。時折、スピンを多くかけて高い弾道のボールを送ったりと、ストロークのペースを変えながらの駆け引きも最近は増えてきて、技巧派の面も見せつつあります。左右に大きく振られた時は声を漏らしながら、必死に拾う姿も印象的ですね。
さて1stセットは?
マレーは前世界ランク1位だったジョコビッチよりは、まだスキの多いプレーがちょこちょこと見られて、錦織も良いプレーが随所に見られたこともあって、タイブレークにまでもつれた展開で錦織が1stセットを奪取しました。
スタッツで見ると、タイブレークになったセットということもあってデータ上は互角です。錦織の1stサーブでのポイント獲得率79%には目を見張りますね。その代わりに2ndサーブではポイントがあまり取れていません。ただ、マレーもそんなに高い数字は残していません。
次のスタッツで見ると、ウィナーの数が錦織12に対してマレーの5ということでラリー戦では錦織が積極的に攻めて、マレーは守備的にプレーしていた事が分かります。試合後のマレーからもそんな主旨のコメントが出ていましたね。
ただ、1stセットから気になるのが、マレーの守備範囲を甘く見たプレーが錦織側に目立つのが気になります。ドロップを拾われたり、決まったと思って油断した途端にロブが返ってきて、スマッシュミスしたりという細かな油断が目に付きます。
タイブレークだけ取っても両者とも非常にいいラリーを展開し、マッチポイントを連続でしのぐマレーのここぞというプレーも光ったりととても見ごたえがありました。1stセットはタイブレークだけ見るのでも十分楽しめるぐらいのやり取りでした。
2ndセット
初っ端にいきなりブレークを食らったのが響き、マレーが終始リードしながら展開していきました。スタッツを見ると、両者とも2ndサーブのポイント獲得率がヒドイ数字になっていますね。その代わりにマレーの1stサーブは威力を増してきているのが分かります。1stサーブの出来がセット奪取の分かれ目だったように思います。
もう一つ目に付くのはマレーのウィナーの数が増えてきていることです。エース3本分を差し引いて10本のウィナーを数え、1stセットからは倍増させてます。守備的にプレーしていたのをラリーで積極的にポイントを取るように切り替えてきたということですね。ネットを11回取っている事からもベースラインでラリーをリードしていることが見て取れます。
最終セット
普通に展開して、そのまま決まってしまった。そんな印象でした。最終的なトータルポイントは130対121でマレー選手が9ポイントリードで終わりました。3ポイントぐらいの僅差でセット奪取の趨勢に響いてくるのがテニスというスポーツのため、3セットマッチで9ポイント差は僅差のように思えますが、はっきりとした差として表れてきます。
最終的なスタッツを見てみると、マレーのサービスの出来はあまり良くなったということが分かります。そもそも1stサーブが54%しか入っていませんし、2ndサーブのポイント獲得率も49%と良くありません。対して錦織ですが、試合前に公言していた、「1stサーブの確率を最低でも6割」というのは達成できていますし、ポイント獲得率も72%と75%のマレーと競っています。しかし、2ndサーブが40%というのはやはり厳しい数字です。マレーの49%も下回ってしまっているのは残念です。
ストロークで見ると、ウィナーの数は流石ですが、それに対応するようにエラーの数も多くなってしまっていますね。確かにウィナーが多いとエラーも多くなる傾向になるのが常なので、割と普通です。マレーは実質、ストロークでのウィナーが23本に対してエラーが39本とエラー数が先行してしまっていますね。ただ、マレーのエラーが目立つということが分かるだけで、錦織がラリーを制していたというのはちょっと言いすぎかなと思います。そもそもマレーのプレー傾向としてどんどんウィナーを取る選手ではないので、単純にミスが多すぎたとも言えますし。
次のスタッツでは5ショット以内のポイント差がついている事が分かります。マレーのエースが8本で錦織が0本ということを考えるとラリーでは67対58ですね。逆に5ショットを超えると錦織に分があったことが分かりますので、ラリーで制していたとは言えないまでも優位だったのは間違いないと思います。ただ、サーブを軸としたポイント展開で言えばマレーが優位だったということで1stセットの出来から徐々に復調していったということでしょう。
結果として、「最高の名勝負とは言えないけども、1stセットのタイブレークは非常に熱い展開だった。あとは普通に力負け。」そんな試合でした。サーブ力が不足しているのはキャリアを通してつきまとう呪いのようなもので、調子を落とさないようにすることだけ考えて、あとはストロークでのエラーを減らしながら今の攻撃力をキープするという難題に挑んでいかなくてはマレーから勝利をもぎ取るのはキツイですね。さて、次は実は一番苦手なタイプのマリン・チリッチ選手との対戦です。そちらも楽しみです。