巨人・菅野智之の進化とは?WBCの経験で得た投球フォームや投球術の変化とは?6月4日放送「Get Sports(ゲットスポーツ)」から
テレビ朝日系列で放送されている「Get Sports(ゲットスポーツ)」の6月4日放送分では巨人・菅野智之の進化についての特集がありました。
番組内ではWBCを戦った事で生まれた新たな投球フォームや投球術にスポットを当てていましたが、それは一体どのようなものだったのでしょうか?
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まずは進化論で有名なチャールズ・ダーウィンの言葉から「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残る事が出来るのは変化出来る者である。」
読売ジャイアンツのエースにして日本球界を代表するピッチャー菅野智之27歳。
菅野智之に関して、DeNA横浜ベイスターズの主砲、筒香嘉智は「僕は全部良いと思うんで、完成されていますし。」という意見です。
ヤクルトスワローズの山田哲人は「これは打てないなと正直思いました。」と語っています。
菅野智之の進化(変化)とは一体何なのでしょうか?
菅野智之の残した成績
3月に行われたWBC(ワールドベースボールクラシック)では日本代表サムライジャパンのエースとして3試合に先発。
特に圧巻のパフォーマンスを披露した準決勝アメリカ戦。試合には敗れたものの現役のメジャーリーガー相手に大きなインパクトを残しました。アメリカ代表の敵将ジム・リーランド監督も菅野智之に対して素晴らしい投手だったと称賛の言葉を残しています。
さらに5月2日巨人対DeNA戦でも完封。巨人の大先輩、斎藤雅樹以来となるセ・リーグでは実に28年ぶりの3試合連続完封という偉業を成し遂げました。
6月3日時点で9試合に登板し、リーグトップの6勝。主要部門でも上位の成績を残しています。
菅野「ある程度は数字に関しては納得していますし、自分が思い描いているように進んでいます。」
投球フォームの変化
ステップ幅
この今シーズンの活躍にはあるきっかけ。
WBCのマウンド(メジャー仕様のマウンド)は日本仕様のマウンドよりも固さがあり、掘れる感覚が全くなく、足やその他の色んな部分に負担がくるので自然とステップ幅が狭くなっていったそうです。
昨シーズンの菅野の投球スタイルを見てみると、左足を大きく前に出してしっかりと体重をかけるのが本来の投球である事が分かります。
しかし、固いマウンドでは体への負担が大きく、ケガのリスクが高くなってしまう。
そこで、負担軽減のために左足のステップ幅がわずかに小さくなったそうです。その結果、投球フォームにも変化が。
ステップ幅が狭くなったことで頭一つ分上体が高くなっています。
これは番組内で言及されていませんでしたが、ステップ幅が狭くなると膝も曲がらなくなりますね。実際に試してみるとすぐに分かると思います。
さらにはステップ幅が狭くなるとマウンドの傾斜の影響も受けるでしょうね。そういったことが重なって頭一つ分の高さの差になってくるということですね。
右足の動き
そしてもう一つは右足の動き。去年までは右足が体の横で止まっているのに対して、今年のフォームは右足が高く上がり、左足の前まで出てきている事が見て取れます。
これには菅野自身も「今までは右足を蹴るようにして左足(ステップ足)よりも前に来ることは無かった。今はやっぱり前に来ますもんね。」と語っています。
投球動作を研究してる國學院大學の神事努准教授は固いマウンドでは背負い投げのような体を前方に送り出しつつ左足でストップさせて、腕を回転させるという投げ方に変化、結果として縦の動き(体の縦回転)で投げようとする意識が出てきたのではないかという意見。
上体を高い位置から投げると体と腕が前に倒れるために体全体に縦の動きが生まれるそうです。右足が前に大きく出るのはそれだけの勢いを生んでいる証拠。
当然、投じられるボールにも変化が。
横の動きだとシュートするようなボールが多く、縦の動きだと縦回転が強調され、よく伸びるボールになるそうです。
菅野は良い例として現役メジャーリーガーの上原浩治を引き合いに出し、「立ち投げ風に見えるが、スパンと回転するから球にキレがある。球速は140km/hぐらいですけど、あれだけメジャーリーガーから空振りを取れるのはキレと直結する」と語っています。
42歳という年齢を感じさせない活躍振りの上原浩治のフォームを見てみると、確かに上体が高く、そして右足は大きく左足を追い越していますね。
そんな投球スタイルに現在の自分を重ね合わせる菅野は、新しい投球フォームによって今まで以上にキレのあるストレートに変化。
キックバック動作
そしてもう一つの変化は。投げ終わりで左足を引くキックバック動作。左足をピョンと小さく跳ねるようにして後ろに動かしています。
これもマウンドの影響が大きく、固いマウンドでは足の逃げ場がなく、どこかに衝撃を逃がして投げないと膝や股関節など色んなところにに負担が来るそうで、勝手に体が反応してそうなったそうです。
意識してやっているのではなく、自分でも投げながら「なんでこんな投げ方をしているんだろう」と最初思っていたようです。
このキックバック動作によって右腕が前に出るという効果もあるようです。
このようなパワーの生み出し方について菅野は日本ハムファイターズの大谷翔平を例に挙げています。
菅野「左足を引く力を強くすればもっと腕も振れるんじゃないか」
投球術の変化
そしてこれには違うメリットもあり、小さなエネルギーで体を加速させることが出来るため、効率の良い体の使い方になるそうです。さらに力をコントロールするメリットあり、100%で投げなくても今までと同じような球速が出せるようになるそうです。
投球術にもその変化が及び、「良い意味で手を抜く。打たれることを恐れない。今は50%もあるし80%もあるという感覚。自分の中で割り切りが出来ているからこそ、そういう場面になったらギアを上げられる。」 と菅野は語っています。
5月23日の巨人対阪神戦を典型的と話す菅野。
6回まで無失点に抑えていた菅野は7回ウラにノーアウト1塁2塁のピンチを背負う。この時キャッチャーの小林誠司は「気持ちが入っているなと感じましたし、受けていてもこれはスイッチが入ったなというのがボールで伝わってくるんで。」と語っています。
その結果、1番高山俊を見逃し三振。続く2番上本博紀への4球目にはこの日最速となる153km/hのストレート。そして連続三振に打ち取ると、3番糸井嘉男には151km/hのストレートで三者連続三振。
実はこのピンチの前までストレートは全て140km/h台。常に全力投球ではなくピンチの時でこそギアを上げる。それが新たな投球術。
菅野「今までは100%で投げていたから120%は出せなかった。50%、80%があるからこそ120%まで上げられる。」
今シーズン得点圏にランナーを背負っての被打率は.145と1割台。
この投球術のおかげで長いイニングも投げられるようになったようで「9回までしっかり投げるという明確な目標があるから逆算して投げることが今のところ出来ている。」「10完投200イニング。そこだけです。」
分業制が一般的となった現代のプロ野球においては高い目標。
世界の戦いで生まれた投球フォームの変化。そしてピンチの場面で上げられるギアなどの投球術の変化。それこそが菅野智之の進化論という締めくくり。