ジャッジが語るフィギュアの見方。羽生、宇野、宮原、坂本らの表現力、その採点基準とは何か?NHKより
手の動かし方や「氷の岡部」?
女子選手の話題の前に、
本田武史さんの現役時代のお話について。
振付師の宮本賢二さん曰く、本田さんは手の動きが上手で、動かす時に力を入れるのか、止まる時に力を入れるのかの違いが上手く表現出来ているとのこと。力強く動き出してからゆったりと余韻を残すのか、ゆっくり動き出して最後のキメの部分で力を込めるのかの二つの使い分けということですね。
手の使い方については東京のプロのバレエ団の方に直々に指導を受けたそうで、手を挙げた際に顔が隠れないようにする点であったり、音が鳴るタイミングで指先の向きを意識する点であったり、細かく修正されたみたいですね。
こぼれ話として、岡部さん曰く、例えイケメンのスケーターに目を見つめられてニコッと微笑みかけられたとしても、ただかわいいなと思うだけでグラッとはこないそう。
以前は岡部さんはジャッジ中は無表情を貫くポリシーだったそうですが、日本の選手から「怖い顔をいつもしている」という言葉をもらってからは微妙に微笑むようにしているそうですね。
これと少し関連する話として、本田さんは「女性のジャッジの前で止まれ」と指導を受けていたそう。キメのポーズで男性のジャッジの前に行きそうになった場合はちょっとズラして女性の方にいってたようです。
スポンサーリンク岡部由起子を魅了したプログラム
数々の名スケーターをジャッジ席から見てきた岡部さんを表現力で魅了したプログラムとは、2014年ソチオリンピックの高橋大輔のフリーの演技、ビートルズメドレー。
序盤は“Yesterday”の曲に合わせて伸びのあるスケーティング。
現地でジャッジを務めていた岡部さんは音が変わるタイミングで高橋選手の目の前だったそうで、少し微笑んでいたそうです。
中盤は弾むような音楽に高橋選手の持ち味であるキレが爆発。ここは岡部さんも大好きと語っています。
クライマックスは音の強弱に合わせた繊細な動き。思わずジャッジも心を持って行かれる演技。
このポイントは本田さんもお気に入りで、鈴木さんは号泣していたそう。
音が弱い部分ではキチンとムーブメント的に弱い動作。穏やかに微笑んで滑る高橋選手の表情、音に合わせてのスピン。ニュアンスが表現できているか?という点。
ジャッジ席の岡部さんは涙がこぼれないように演技を見ていたそうです。それでも時として感動して泣いてしまうときもあるそう。
女子選手たちの表現力
カロリーナ・コストナーの表現力
鈴木さんが魅了されるのは足や腕の動かし方。力の抜け感が演技に深みを与えているのではないかという分析。
宮本さんは腕の伸ばした所からさらに伸びて、そこから閉じるという動作が気持ち良いと表現しています。柔らかな腕の動きを使うことで、腕だけで何かを表現できるイメージでしょうか。
スポンサーリンクエフゲニア・メドベージェワの表現力
「アンナ・カレーニナ」から。前半は喜び。テンポの良い明るいスケーティング。
後半に入ると一転。悲しみの表情。演技も重々しい印象に。対照的な感情を演じ分けています。
今から自分がどういうものを表現するのかというのが表情一つで使い分けられる点を鈴木さんは評価。
宮原知子の表現力
ショートプログラム「SAYURI」のプログラムでは日本人の奥ゆかしさや繊細さ、それでいて力強さを表現。
152cmの小さな体を大きく見せるために上下の動きでアピール。
プログラムを象徴するシーンはコチラ。鈴木さんも素敵と語るのはこのキュッと結んだ口と目線。
表情と共に姿勢にも注目。ジャンプの着氷でも背筋が伸びて、身体のラインが一直線に。シニアデビューしたての頃は、顎が上がり、腰が引けているフォーム。比べると一目瞭然。
スポンサーリンクかつて宮原選手の振付を担当していた宮本さんはいろんな表現を目でできる点はすごく成長していると評価しています。
坂本花織の表現力
特徴はダイナミックな滑り。ステップやつなぎの部分で見せる加速するようなターンは見る者に元気を与えます。
スピードを落とさずにサッとステップして滑っていくその動きに「すげぇな。」という感想の宮本さん。
解説者としても有名なスケート界のご意見番、佐野稔さんは表現力についてはまだまだで、だからこそこれから伸び代がいくらでもあるという評価。進化ははっきりと見て取れるそうで、全日本選手権では硬かった動きが四大陸フィギュアでは大きな動きに変わっていて結果として綺麗に見えるようになったという感想。
最後に表現力とは?
番組の最後は出演者それぞれの思う表現力についてフリップに書いて発表。
本田武史さんは「人生」。海外の生活、私生活、スケート人生全て含めて演技に生かせる。経験したことが表現につながるそう。
佐野稔さんは「人間力」。自分がどうやって生きてきたのか、人間として何をしてきたのか全てが表現として出てくる。総合的な人間力。
宮本賢二さんは「心に響くもの」。小さな子や選手にも言っていることで、人ひとりの心を動かすっていうのはすごく大変なもので、今間近にいる僕をまず感動させてみてと指導しているそう。
鈴木明子さんは「心を揺さぶるもの」。他人に届かないと揺さぶることが出来ない。伝えることからさらに上までいかないと。
岡部由起子さんは「音楽、音を動作に置きかえる」。評価するものの立場として、音楽にどのように反映しているかに尽きると。