日本女子団体パシュートの速さの秘密は?超高速先頭交代と隊列にあり。
2番手の役割
エース高木美帆選手に負担を強いる。そんな戦略の成功のカギを握るのは2番手を滑る佐藤綾乃選手。
新たな戦略では佐藤の滑る距離は1.75周(1.0+0.75周)から1.5周と0.25周短くなります。しかし、先頭に立った時のトップスピードの向上が課題。短くなった分、よりスピードが求められるということですね。
スポンサーリンクチームパシュートでは全員が全力で滑り、ゴールした時点で全てを出し尽くしている必要があると語るのはヨハン・デ・ヴィッドコーチ。
2017年10月下旬の練習では新戦略をテスト。この時の佐藤の目標タイムは28秒4以下。
何かを怖がっているように見えたヨハン・デ・ヴィッドコーチは佐藤に発破をかけます。
この日の反省をノートに綴った佐藤。「速いラップでいけないわけがない。」
全力を出してしまうと後ろについた時に隊列から離れてしまうんじゃないかという恐怖があったと佐藤選手自身は語っています。
スポンサーリンク私が聞いた話ですが、ウェイトリフティング競技において男子選手と女子選手を比較すると、「全力で3回」という練習を行う場合は男子選手は3回どころか2回の時点で全力を出し尽くしてしまうほどのペース配分でトレーニングを行う傾向がある一方で、女子選手はうまく力をセーブしてしっかり3回行うように器用にこなす傾向があるそうです。
女子選手のこの傾向は競技によってはマイナスに働いてしまうことがあるんですよね。つまり全力を出しているつもりでも知らず知らずのうちに自分に対して手加減してしまっているということですね。ひょっとすると佐藤選手もこのような傾向があるのかもしれません。
2017年11月W杯
ここでも相手はやはりオランダ。ソチオリンピックの金メダリストメンバーを揃えた布陣で臨みます。
最初の1周。オランダにわずかにリードを許す展開となります。0.25差。
そして日本は2番手佐藤が先頭に。佐藤のラップタイムは自己最速の28秒1を記録。この時点でオランダを逆転します。
そしてレースは終盤。しかし、体力を使い果たした佐藤が最終コーナーでバランスを崩します。後ろを滑る高木菜那が支えて何とか持ち堪えそのままゴール。
スポンサーリンクタイムは2分55秒77。目標の53秒台には届かなかったものの8年間破られていなかった世界記録を更新。
次のレースで2番手を任された菊池彩花。オリンピックでは2日間で3レースが行われるため、4人の総合力が問われます。目の前で仲間が出した世界記録に刺激を受けないわけがありません。
2017年12月W杯
2番手を滑った菊池彩花の記録したラップタイムは28秒1。佐藤と同じタイムを出して見せた。
ラスト1周では体力を消耗した菊池が隊列を乱してしまいますが、必死に食らいついていきます。
結果、叩き出したタイムは2分53秒88。ヨハン・デ・ヴィッドコーチが掲げた高すぎとも思える目標を達成してみせたのがこの瞬間でした。
しかし、ヨハン・デ・ヴィッドコーチはこの時、日本チームはまだまだこんなものではないと確信していたそうです。
彼が注目したのがレース終盤の滑り。2番手を滑った佐藤・菊池の両選手は体力が持たずタイムロスを生んでいたという点。
スポンサーリンク一方、高木美帆はゴール直後も両手を挙げて余裕の様子。ヨハン・デ・ヴィッドコーチは全員の体力をギリギリまで使い切らせるためにさらなる戦略変更に踏み切ります。
高木美帆のラストを0.5周増やし、スタートと合わせて3.5周に。こうすることで2番手を滑る佐藤・菊池両選手の分担を1.5周から1周に。これがチームの力全てを出し切る究極の戦略。
金メダル獲得のためには速さの限界を探り続けなければならないと語るヨハン・デ・ヴィッドコーチ。
スポンサーリンクオリンピック前最後のW杯
ここで2番手を滑った佐藤は27秒7を記録。3番手の高木菜那は27秒4。これまでにないラップタイムで加速していく日本チームは最後まで隊列を乱すことなくゴール。
そのタイムは2分50秒87。自分たちが打ち立てた世界記録をさらに3秒縮める驚異的なタイム。
レース直後の高木美帆は全力を出し切った様子。全てを出し尽くした選手たちはしばらく動けなかったが、その表情は明るいものでした。
スポンサーリンクヨハン・デ・ヴィッドコーチは自身を持って日本が世界一だと語ります。
その間、絶対王者のオランダは個の力を磨き続け、その存在感はやはり王者の風格。オランダのマリット・レーンストラ選手のコメント。
オランダ代表コーチのヘルト・カウパーは自信を持っているようですね。
いかがでしたでしょうか?女子団体パシュート日本チームによる速さの限界を探るプロセス。一体どのような結果になるのか非常に楽しみですね。
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