木が長生きなのはなぜ?「死にながら生きている」の意味は?チコちゃん
25年7月11日放送の「チコちゃんに叱られる」の問題『木が長生きなのはなぜ?』の答えなどまとめてご紹介。木の寿命を支える”死にながら生きている”の意味とは一体?
ゲスト出演者
【ゲスト】ダイアン津田,森香澄
【VTRゲスト】なし
木が長生きなのはなぜ?
2問目の出題は、
木が長生きなのはなぜ?
チコちゃんの答えは、
死にながら生きているから
解説は東京農業大学の桃井尊央准教授。
現在、人間の寿命は長生きしても100年前後とされていて、人類史上最高齢の世界記録として残っているのは1875年にフランスで生まれたジャンヌ・ルイーズ・カルマンさんの122歳という長寿記録。
その一方、木の場合はご存じの通りに1000年オーバーの樹齢を誇るものが世界中に沢山存在しており、現在進行形で世界最高樹齢の木とされているのがアメリカのメトシェラで御年4800年以上のご長寿。
一見して枯れているように見えますが、これは乾燥が厳しい環境に適応した形であり、最新調査でも生きていることが確認された個体。
このような人間と樹木でその寿命に大きな差が生まれる理由は両者の細胞分裂の回数にあると考えられていて、私たち人間の体を作る細胞の多くは細胞分裂によって自身のコピーを作って常に新しい細胞と古い細胞を入れ代えていきますが、細胞分裂を何度も繰り返していると細胞内にある人間の設計図ともいわれるDNAが傷付くリスクも発生。
その為にDNAの傷を増やし過ぎないように人間の細胞はある程度の分裂を行った後に分裂をやめて新しい細胞をそれ以上生み出さなくなって、これが老化に繋がっていく事に。
スポンサーリンク木も同様に細胞分裂によってDNAが傷付くリスクはありますが、人間のDNAよりも遥かに強く守る仕組みが備わっているのでそう簡単に傷付くことが無く、これによって木は人間に比べて遥かに多く細胞分裂が行えるという違い。
つまり木は人間よりも遥かに長い期間に渡って若い細胞を生み出し続けられるので人間よりも若さを保つことが出来るというのが一つの答え。
また、人間の場合は古くなった(=死んだ)細胞は尿や便などで老廃物として体外に排出される事が多いですが、木の場合はそれらの死んだ細胞が木を長生きさせる役割を担っているというのもポイント。つまりこれが「死にながら生きている」という答えに繋がることに。
例えばスギの木の断面を見た時、そこに刻まれている年輪は中央部分が濃くなって、その周りは薄い色をしていますが、実はこの濃い部分は全て死んだ細胞。
この部分は心材(しんざい)と呼ばれ、この心材は高くて大きな木の体を支える体幹部にあたり、これこそが長生きを支える土台。
木は中心部の心材、その周辺の辺材、一番外側の樹皮に大きく3つに分かれますが、樹皮と辺材の間には形成層という0.1mmほどの薄い層があり、木の細胞分裂は主にこの形成層で発生。
この形成層は草には無く、植物の中でも木だけが持っているスペシャルなもので「木の本体」と言っても過言ではないほどの存在。
この形成層で細胞分裂が起こると新しく生まれた細胞が形成層の外側に追加されて行って木は大きく成長。つまり中心に近い細胞ほど古いものという事に。
スポンサーリンク辺材の方へ目を向けると、実はこれらの比較的新しい細胞の中でも生きているのはごくごく少数で、やっぱりここでもほとんどが死んだ細胞で構成されているというのが木の構造。
画像の明るくハイライトされている部分だけが生きている細胞で、
これらは木の栄養を管理する役割を担っていて、大部分の死んだ細胞たちは植物に欠かせない水分の通り道である管(人間だと血管)の役割に。
つまり死んだ細胞が全体に水分を運ぶ役割を与えられて、生きている細胞をしっかりサポート。
また、中心部に近い心材は人間だと骨のような役割を果たしていて、同じ重さの鉄が約1トンの力で変形してしまうのに対して、心材は鉄を超える1.8トン以上の力を加えても多少の変形に留められるという強靭さ。
このように心材という強固な骨がある事で木は倒れることなく長生きできるという意味でもあり、これが「死にながら生きている」という木の長寿の秘密。
それは時としてダイナミックな木の成長に現れていて、世界一高い木として知られているアメリカのハイペリオンは116.07mという高さだったり、
世界一太い木はメキシコのトゥーレの木でその太さは1周58mというサイズ感。
一般的に、木全体の90%以上の細胞が死んでいると考えられていて、それらの死んだ細胞たちはエネルギーを必要としないので圧倒的に少ないエネルギーで生活出来る省エネ性を生み出す事にも寄与しており、死んだ細胞を骨や血管として有効活用してエネルギーを節約できるという点も木の長寿の理由の一つ。
また、木には人間でいう所の脳や心臓のような失うと致命的な急所のようなものが存在せず、倒れた木から新しい芽が出て復活するという強力なリカバリー機能も存在。
一方、木は長寿である代わりに動けないので虫や動物に食べられたりしても、基本的に外敵にされるがままでサンドバッグ状態という弱点も存在しているのでそこはトレードオフ。
という事で2問目は以上。
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