宮原知子のジャンプ改革「トゥが潰れる」の意味とは?フィギュアの新ルール、採点方式の大幅改正についても
平昌オリンピックの大舞台でショート・フリー共に自己ベストを更新し、メダルまであと一歩の4位という成績だった日本の宮原知子。その宮原知子の大きな得点源の一つと言われているのが表現力。その一方で課題は「ジャンプの質」。フィギュアスケートのジャンプにおける出来栄え点(GOE=Grade of Execution)を向上させる事が宮原知子の最大の課題です。
彼女自身「まだ自分は勝てないだろうなっていうのは薄々思っていました。」と語っていますが、勝つために彼女はどのような「ジャンプ改革」に取り組んでいるのでしょうか?
また「トゥが潰れる」「真っすぐな四角」の意味とは一体何なのでしょうか?
10月15日放送のテレビ朝日系「Get Sports」の内容から詳しくご紹介します。
スポンサーリンクルール改正の主な変更点
そう彼女が語っているのは国際スケート連盟(ISU)が2018年6月に打ち出した大幅なルール改正。
主な変更点としては、
- 男子フリーの競技時間 4分30秒→4分
- 男子フリーのジャンプ数 8本→7本
- 後半ジャンプのボーナス点がショートで最後の1つ、フリーで最後の3つ
など。
そして宮原知子に大きく影響するのが出来栄え点(GOE=Grade of Execution)の変更です。
昨シーズンまでは-3から+3までの7段階評価だったものが新シーズンではより細分化が進み、-5から+5までの11段階評価に変更。
ジャンプでの出来栄え点でなかなか加点が取れない宮原知子にとっては世界のトップとの差がさらに広がる懸念材料です。
宮原知子の大決断
長年に渡って宮原知子を指導する濱田美栄コーチは、
濱田コーチ「もう一度イチから出直すというか、見直すという意味でジャンプが大事になって来るので。」「一回バラバラにして組み立てながら進んでいきたいなと思うので。」
宮原「ジャンプの所ではもっと質を良くするために。跳ぶ意識、跳び方の意識を変えたりとか新しい事にチャレンジしたいと思っています。」
2人の共通認識は抜本的な「ジャンプ改革」が必要というわけですね。
その為に濱田美栄コーチが招聘したのがカナダ人コーチのジスラン・ブリアン(Ghislain Briand)コーチ。※ギスラン・ブリアンの表記も見られますが、日本オリンピック委員会の公式HPではジスラン表記なので本記事ではそちらに従っています。
2018年5月頃から指導を受けているようです。
日本オリンピック委員会の公式HPに掲載されたジスラン・ブリアンコーチのプロフィールによれば、
- 1962年11月22日生まれ
- 国籍はカナダ
オリンピック連覇を成し遂げた羽生結弦のジャンプを指導するコーチとしても有名な方です。
ブリアンコーチ「私は宮原選手のように変化を求める選手と仕事をするのが好きです。彼女には新たな跳び方を学んでもらいます。」「まだ彼女は若く、もっと強くなるはずです。」
スポンサーリンクジャンプの意識とは?
まずジスラン・ブリアンコーチが取り掛かったのはジャンプの基礎からの見直し。
全てのジャンプで“ある意識”を持たせるのが狙いだそうですが、
ブリアンコーチ「私が重視しているのは正しい姿勢(body alignment=ボディアライメント)で跳ぶ事。無駄な力で体勢が崩れないように教えています。」
宮原「どのジャンプにも共通して言われたのが、跳び上がって回転するときに肩のラインと腰のラインがいつも真っすぐな四角になってないといけないって言われて。」
ジャンプの際に両肩を結んだラインと腰の両脇を結んだラインを平行にして上半身に四角を形成。
その四角形を一切崩さずに踏切、ひねる動きの際、空中姿勢、着氷と全ての場面で正しい姿勢をキープし続けるのがブリアンコーチが求める理想のジャンプ。
宮原知子の悪い癖
実はこれまでの宮原知子はジャンプを飛ぶ際の悪い癖があったとの事。
濱田コーチ「どうしても回り急いでしまうので、踏み切る時に力が伝わってない所があるので。」
早く回り始めたいという意識が強すぎるために踏み切る前から上体がねじれて回り始めてしまう悪癖。
その結果、
宮原「ラインがこっちになる(斜めに崩れる)と結果、トゥが潰れてちゃんと蹴れなかったり。」
トゥが潰れるとは一体何なのでしょうか?
例えば右足で踏み切るジャンプの場合、早く回りたい意識から左肩が先行して動くために右肩が下がってしまいがち。
こうなるとブリアンコーチが指摘する四角形は歪み、右足のつま先が外側に倒れ(潰れ)て氷を強く踏むことが出来ないんですね。
これがトゥが潰れるという意味。
トゥが潰れてしまうと力を伝えやすい親指付近から小指付近で氷を蹴り上げることになってしまうので当然パワーダウン。
これを改善する事が出来ればジャンプの高さや距離で出来栄え点の加点が狙えます。
肩のラインが傾かない正しい姿勢であればご覧のようにトゥがしっかりと氷を捉えているのが分かりますよね。
自分を信じて
宮原「基礎の基礎の部分なので四角が真っすぐでないとどのジャンプの失敗にもつながると思うので。それをいかに毎回合わせられるかというのが大事だと思ってます。」
既にトップ選手として活躍する宮原知子からすると染みついたジャンプの感覚を根本から作り直す事は非常に難しいチャレンジだと思いますが、本人の感覚は徐々に良くなっているようで、
宮原「最初に比べると結構いい感じには跳べるようになってきました。」
そして、
「諦めてしまったらまた元に戻ってしまう気持ちもあるので、このままこの大きな壁を乗り越えられるようにとにかく自分を信じて頑張りたいと思ってます。」
力強く目標を語った宮原知子は明るい表情。
いよいよ開幕するフィギュアスケートシーズンでのジャンプ姿勢は要チェックですね。