マスターズゴルフでグリーンジャケットが贈られる意味・由来は?その歴史について
全世界のトップゴルファーたちが口を揃えて最も欲しいタイトルと言うのがマスターズ。世界一美しいと言われるオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブを舞台に毎年繰り広げられる超一流の名手たち(マスターズ)による世界最高の夢舞台は世界中のゴルフファンたちの胸を熱くさせますね。
そして大会の象徴とも言うべき「グリーンジャケット」がその年の優勝者に贈呈される瞬間は大会のハイライトの一つとして有名ですよね。マスターズを制した者にのみ与えられる王者の証、グリーンジャケットが授与されるグリーンジャケットセレモニーはゴルファーが夢にまで見た最高の瞬間です。
ではこのグリーンジャケットの意味や由来についてはご存知でしょうか?なぜマスターズではグリーンジャケットがその象徴として特別視されるのでしょうか?
そんなグリーンジャケットにまつわる歴史について3月24日にTBS系で放送された「マスターズ4月5日開幕!マスターズトリビアSP」を元にご紹介します。
スポンサーリンクボビー・ジョーンズ
マスターズが開催されるのは毎年決まってオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブ。
秋から約半年間に渡ってコースが閉鎖されてマスターズの為だけに入念な整備が行われます。
このオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブの創設者は球聖と称えられた伝説のゴルファーであるボビー・ジョーンズ。
1930年に史上初となる年間グランドスラム(全米オープン、全米アマ、全英オープン、全英アマ)を達成した言わずと知れたレジェンドですね。
ちなみにボビー・ジョーンズ自身は1934年の第1回大会から12回出場していますが、最高成績は13位と振るわず目立った成績は残していないそうです。
伝説のゴルファーと言えども攻略が難しい、それがマスターズなんですね。
グリーンジャケット
オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブでメンバーがグリーンジャケットを着用するようになったのは第4回大会が開催された1937年からでした。
観客などオーガスタ・ナショナルに初めて訪れた人が場内で何か分からないことがあった場合に誰がメンバーなのか一目で見分けられるようにお揃いのジャケットを身に着けるようにしたというのがその始まりと言われています。
このアイディアを初めに提案したのは創設者のボビー・ジョーンズですが、
ではなぜ彼はこのようなアイディアをひらめいたのでしょうか?
それにはジョーンズのある思い出が深く関わっているのです。
起源は赤いジャケット?
ボビー・ジョーンズが生まれ育ったアメリカ、ジョージア州のアトランタ。
そこには晩年に理事長を務めた名門コース、アトランタ・アスレチッククラブがあります。
日本のメディアが場内に入るのは今回が初めてだとか。
スポンサーリンク1930年6月、4大メジャー大会の一つである全英オープン。
そこで優勝したボビー・ジョーンズが優勝トロフィーと共に記念としてケネス・ストーカーから譲り受けたのがこの飾られている赤いテールコート(キャプテンズジャケット)。
この時の「記念にジャケットを贈られる」という特別な経験は、ジョーンズにとって忘れがたい思い出となって記憶されていたそうです。
その際の経緯は以下のようなものでした。
大会前日に試合会場であるロイヤル・リバプール・ゴルフクラブが開催した歓迎の夕食会に参加したジョーンズはある光景に目を奪われます。
そこでジョーンズは隣にいたロイヤル・リバプール・ゴルフクラブのメンバーで元キャンプテンだったケネス・ストーカーにコートの由来やそのしきたりについてしきりに尋ねましたが、ある時ストーカーからこう提案されます。
「ジョーンズ。もし君が優勝したら、このコートを譲ろうではないか」
この一言に奮起したかどうかは定かではありませんが、ボビー・ジョーンズはこの年、3年ぶり3度目となる全英オープン優勝を見事に果たし、約束通り赤いコートを手にしたのでした。
さらにロイヤル・リバプール・ゴルフクラブの生涯メンバーにも名を連ねることに。
この出来事に着想を得たジョーンズがマスターズトーナメントを創設した際に優勝者にグリーンジャケットを贈るというアイディアを提案したのだそうです。
グリーンの色の由来はオーガスタ・ナショナルの美しい芝の緑色からです。
このアイディアに賛同したオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブの初代会長、クリフォード・ロバーツによって採用が決定されたのでした。
スポンサーリンクグリーンジャケットのしきたり
初期のジャケットは胸のロゴが現在のものとは異なったものが採用されていて、
初期のものはオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブのアルファベットの頭文字をとって「A.N.G.C」と刺繍されているように見えますね。
初期のジャケットは厚手のウール製で温暖なオーガスタには不釣り合いということでメンバーからは不評だったそうで、現行のものは薄手の軽い生地でウールとポリエステルのものに変更されているそうです。
現在のグリーンジャケットの左胸のロゴ(パッチ)や真ちゅう製のボタンなどはアメリカの各地で特注品として製造されています。
1937年に着用が開始されたグリーンジャケットでしたが、マスターズの優勝者にグリーンジャケットを贈るセレモニーが開始されたのは1949年の第13回大会になってからのことで、サム・スニードがこの年の王座に輝いています。
ちなみに、これ以前のチャンピオンにも遡って、後にグリーンジャケットが贈呈されているようですね。
その後、表彰式で前年の王者が新王者にジャケットを着せるのが慣例となっています。
連覇を達成した場合には大会ホストであるオーガスタ・ナショナル会長がジャケットを着せる役目を果たします。
初の連覇達成は1966年のジャック・ニクラウス。
ジャケットのサイズは出場登録時に確認され、事前に用意されているものの中から一番近いサイズのものが表彰式で使用されるそうです。
1969年のマスターズチャンピオンであるジョージ・アーチャーは身長196cmと非常に大柄。
1991年のマスターズチャンピオンであるイアン・ウーズナムの身長は165cmと小柄でしたが、
どちらのケースでも用意されたジャケットで問題なく対応できているようですね。
なお大会終了後には専門のテーラーによってオーダーメイドのジャケットが作られ数週間後に改めて本人に手渡されるとのこと。
歴代王者がさらに優勝を重ねた場合、表彰式では前回使用されたジャケットが贈られるそうで、複数回優勝した際にも体型が大きく変わってしまっている時を除けば、原則としてジャケットは1人1着しか用意されないようになっています。
スポンサーリンクグリーンジャケットは持ち出し禁止
オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブのメンバーと歴代チャンピオンのみに着用が許される栄光のグリーンジャケットですが、
実は敷地外への持ち出しは禁止となっているのはご存知でしょうか?
ただし、その年のチャンピオンだけは例外で、優勝後の1年間は敷地外に自由に持ち出すことが許可され、
メディアに登場する際や、イベントに出席する際、また他のゴルフトーナメントに持ち込んでもOKだそうです。
ちなみにフィル・ミケルソンのようにドーナツ屋に着て行ってもOK。
オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブの近くにあるクリスピー・クリーム・ドーナツに家族と共に現れたミケルソンは空港に向かう途中に立ち寄ったそうで、グリーンジャケット姿でドーナツを買って行ったそうです。
「えっ!?ミケルソン!?えっ!?グリーンジャケット着てる!?」と二度見どころか三度見四度見してしまいそうな光景…
持ち出したジャケットの返却期限は優勝した翌年のマスターズまでで、
その後はクラブハウス内にあるチャンピオンズロッカーで大切に保管されるそうです。
歴代の王者はオーガスタを訪れた時に限り、グリーンジャケットに袖を通すことが可能となっています。
ルールを破ったチャンピオン
しかし、このルールを唯一破ったチャンピオンが。
それがマスターズで3度の優勝(1961年、1974年、1978年)を誇り、キャリア・グランドスラムも達成している南アフリカのレジェンド、ゲーリー・プレイヤー(プレーヤー)その人です。
ちなみに日本のウィキペディアでは「南アの黒豹」と呼ばれたと表記されていますが、英語版ウィキペディアではニックネームはThe Black Knight(ブラック・ナイト)、Mr. Fitness(ミスター・フィットネス)、International Ambassador of Golf(ゴルフの国際化大使)となっています。
事件は初優勝した翌年の1962年のマスターズトーナメントにて起きました。
プレイオフの末、アーノルド・パーマーに連覇を阻まれたゲーリー・プレイヤーは表彰式の後に1年間持ち出していたグリーンジャケットを返却するのがルールだったにもかかわらず、返却せずに南アフリカの自宅に持ち帰ってしまったのです。
3日後、オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブの初代会長であるクリフォード・ロバーツからジャケットを返却するように連絡が入ります。
「ジャケットを持ち帰ったそうだけど、それは出来ないことになっているのを君は知ってるはずだろ?」
とかなり厳しい口調で伝えるロバーツ会長。※返却ルールについては後にゲーリーはそのルールを当時は知らなかったと述懐しているようです
これに困ったゲーリー・プレイヤーは、
「会長。ジャケットを返して欲しいならここまで取りに来たらどうでしょう?」
とイチかバチかの問答で切り返します。
当時、クリフォード・ロバーツに対してこのような物言いをする人物は珍しかったそうですが、ロバーツ会長はユーモアの分かる人だったため、ゲーリーはこんな賭けに出たそうです。
それを聞いたロバーツ会長は笑いながら、
「ではゲーリー。ジャケットを外で身に着けないと約束してくれるかい?」と提案。
ゲーリーの思惑は的中し、ロバーツ会長も粋な対応を見せたというわけです。
それ以来、ゲーリー・プレイヤーは約束を守って自宅のクローゼットで当時のカバーそのままに大切に保管しているとか。
ちなみにその翌年にはもう一着のグリーンジャケットがクラブハウスのロッカーに用意されており、それ以降はそのジャケットを着用するようになっているみたいですね。
スポンサーリンクグリーンジャケット以外の記念品
マスターズチャンピオンにはグリーンジャケット以外にも2つの記念品が授与されるのが決まりとなっており、まず一つは純銀製のレプリカのマスターズトロフィー。
このトロフィーは直径30cm、高さ16cmというサイズになっています。
“レプリカ”が贈られるということはその本物はどこにあるのかと言うと、
本物のマスターズトロフィーはクラブハウスの中に飾られており、直径1m、高さ60cm、重さ45kgというビッグサイズ。
その台座には歴代の優勝者と準優勝者の名前が刻まれています。
優勝スコアやプレイオフ時の注釈についても刻まれているようですね。
そしてもう一つの記念品は金メダル。直径8.6cm、重さ65gのメダルにはクラブハウスの建物とロゴが刻印さています。
これらの記念品が贈られるシーンは中継であまり取り上げられないため、知っている人はそう多くないかもしれません。
以上、マスターズのグリーンジャケットについてアレコレでした。