歴史秘話ヒストリア 鳥獣戯画にカエル・うさぎ・猿が描かれている意味とは?
21年1月27日放送のNHK「歴史秘話ヒストリア みんな大好き!国宝 鳥獣人物戯画」では鳥獣戯画の中でも最もメジャーな甲巻に描かれている生き物たちに注目。甲巻には鳥獣戯画と聞いて一番先に思いつくカエル・うさぎ・猿といった代表的な3つの動物が登場キャラクターとして描かれていますがその意味とは一体?
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カエル・うさぎ・猿
鳥獣戯画に登場するカエル・うさぎ・猿の3種類の動物たちは絵巻に登場するキャラクターの8割近くを占める主役たち。
平安時代や室町時代に残っている物語や記録でそれぞれの生き物がどのように扱われているかそのイメージについて分析してみると、
- カエル – 大きな出来事の前触れとなる存在
- うさぎ – 神話などにも登場する不思議な力を持つ存在で悪さをしたものを懲らしめる役割も
- 猿 – お経を読んだりする仏教と関係の深い存在
であったり。
つまりこれらの動物たちは何か特別な力を備えた神秘的な動物としてみなされて来たという事が分かります。
このカエル・うさぎ・猿の3種類の動物を特別視するのは鳥獣戯画以外の絵巻にもみられる事で、
平安時代末ごろに描かれた『年中行事絵巻』には当時の宮廷行事の様子が登場しますが、賀茂祭の傘の上に描かれているのは、
古来より「傘」には厄除けや不思議な力があると考えられており、
京都で今も続くやすらい祭では傘の下に入ると災いを吸い取ってくれるという厄除けのシンボルとして傘がお祭りの主役だったり。
北九州市立大学の早乙女春恵准教授によると、
「この動物(カエル・うさぎ・猿)の一側面には人知を超えた意思を伝えてくれる動物という風に認識されていた。そういう動物たちが楽しそうに遊んでいるという事は、吉祥というかめでたいというか。」
民俗学の研究では「遊ぶ」という行為は「神との交流を深めるための行為・神を喜ばせるための行為」と古くから考えられているので、特別な力を備えた3種の動物が楽しそうに遊んでいるという甲巻にはそういった意味合いがあるのではないかとの事。
乙巻と比較すると?
そして甲巻とそれに続く乙巻を比較する事でさらに3つの動物の意味について見えて来る事もあるようで、
乙巻はコミカルに描かれている甲巻とは異なっていてより写実的に様々な動物たちが描かれているのが特徴的。
前半部分には馬、牛、鳥、犬といった人間の身近にいたと思われる動物たちが多く見られますが、これらは甲巻にはほとんど登場しない動物たち。
京都大学の西山良平名誉教授によると、
「六畜(りくちく)という概念があります。六畜というのは元は中国の概念です。」
六畜とは、
- 牛
- 馬
- 犬
- 猪
- 鶏
- 羊
の6種類の動物たちを指す言葉で、甲巻には出て来ない動物とほぼ一致しているとか。
当時の人々は六畜のお産や死は災いある避けるべきものと考えていたようで、
死やお産を穢れとして避けるという元々は人間に対して行っていた習慣であり、これを自分たちの身近にいる動物にも広げて考えたのではないかとの事。
例えば犬は同時代の絵巻には頻繁に描かれている動物の一つで、家の縁側や通りでゴロゴロしている身近な存在。
では現代のようにペットとして人に飼われていたのかというとそれとは異なり、
この時代は疫病や飢饉が多く発生した世情をだという事を鑑みると、犬たちは町中に放置されている遺体や人間の糞尿などを食べて生きる生き物でした。
この事を踏まえて甲巻と乙巻について比較をしてみると、
- 甲巻 – 現実とはかけ離れたファンタジー
- 乙巻 – 現実的な動物らしい動物をリアルに描く
といった違い。
これはあえて2つをかけ離れて描く事に意味があったと考えられるとか。
というわけで以上「歴史秘話ヒストリア みんな大好き!国宝 鳥獣人物戯画」から鳥獣戯画にカエル・うさぎ・猿が描かれている意味についてでした。