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感染管理専門家・坂本史衣の院内感染を巡る新型コロナとの戦いとは?情熱大陸より


20年近く病院の院内感染対策に従事してきた坂本史衣の新型コロナとの戦いを2020年4月19日放送のTBS系「情熱大陸」が密着取材。その詳細について番組の放送内容を元にお伝えします。

以下の発言内容は専門家と言えども“あくまで個人の意見”になっておりますのでその点はご留意ください。

※ほとんどのシーンでマスクを着けていない坂本史衣氏ですが、それは管理されたグリーンゾーンにいるからであって「なぜマスクを着けていないんだ!」なんて無益なツッコミはナシで。レッドゾーンで着けたマスクをグリーンゾーンに持ち込むとどうなるかは分かりますよね?感染管理のプロがそんな単純なミスをするハズもないですし。

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感染管理専門家

坂本史衣が勤務する聖路加国際病院では4月13日に2人、4月16日に1人と職員3人の市中感染をHPで公表済みですが、

「市中感染は当院も含めて起きてる病院は沢山あると思います。なかなか防ぎようがない状況だと思います。あと院内感染は相当難しいなと思ってます。もう時間の問題かもしれません。それだけこのウイルスって気付かれないままにひっそりと病院の中に入り込むっていうのが上手なので。」

「正直本当に薄氷を踏むような、いつ何時っていうような状況を一生懸命コントロールしてるっていう。それはもう当院に限らずどの病院も同じ状況だと思ってます。」

聖路加国際病院は2月の時点から感染者を受け入れていた国の指定医療機関の一つ。

それでも、本来であれば備蓄が十分に足りていなければならないハズのガウンや、ゴーグル、N95マスクなども徐々に枯渇している状況。

普段は使い捨てで運用すべき所を他に選択肢が無いので再利用せざるを得ない事に、

「もう感染対策上はやっちゃいけない事ばかりですね。」

院内スタッフは感染管理ガイドライン策定にも携わる坂本史衣を頼る日々。

ゴーグルの表面を拭き取るシーンでは、

「洗剤が拭き筋となって残るので、あとでもう一回乾拭きするかなんか。」

彼女の使命は院内感染を防ぐ仕組みを作り、病院機能がストップしないように動かし続ける事。

スタッフへの通達と思われるメッセージを電話口で伝えるシーンでは、

「宴会は禁(止)です。飲み会禁。食事会禁。『一人寂しく食べておれ』っていう。それでしばらくいたします。それでぜひお願いします。」

専門家でも新型コロナへの対策は容易ではなく、

「どうしたらいいんだろうみたいな事は流石に20年経つと無くなるんですけど、これだけ悩むのは初めてかもしれないですね。」

現場での対応

密着取材が始まったのは3月30日の事。

緊急事態宣言が発令される約1週間前というタイミングで、日に日に感染者数が増えていた頃。

「(感染経路が)追えてるグループがいくつかあって、追えてない人たちっていうのがいるんだけど、その追えてない人も増えては来てるんで。これ以上増えてくると良くないなという所に来てると思います。」

30日の時点で重症者6人がICU入りしている状況。

感染管理部門には保健所や他の医療機関などからの電話がひっきりなしにかかる。

その合間には院内で連日開かれている院内の新型コロナ対策会議へ出席。

各部署からあがってくる言葉はどれも切迫したものばかり。

同僚の報告「保健所を含めてCOVID(新型コロナ感染症)疑いで検査して欲しいというのが多発してきていまして、今ICU残り2床になってきています。ICUが埋まるのも時間の問題かなと思ってます。」

坂本史衣「物品の在庫状況なんですが、ガウンなどが今後枯渇してきた時に布製のガウンを選択して使い回すとかそういった事も考えていかなくてはいけなくて、早め早めに対応を協議したいと思っております。」

同僚の報告「週末、患者さん増えて来て、病棟の看護師さんから『怖い』『働きたくない』とかぼちぼち出て来ているみたいです。『いつ休めるのか分からない。確実に帰れる?』とか聞くみたいですので、先生方と相談したいと思っております。」

課題を共有して1時間ほどの会議が終了。

会議室の換気などに気を配るのも坂本史衣の仕事の一つ。

救急の受付スタッフに呼び止められると、

受付スタッフ「受付に来ちゃうケースなんですけど、救急の受付に来た人たちって問診票をビニールに入れる対応を言われててやってるんですね。レッドゾーンの人(感染させる危険のある人)、保健所から連絡が来た人。で実は先生たちからレッドゾーンだよって言われる人たちって普通に受付しちゃってて。」

坂本史衣「立て看(板)しますか?『保健所からの指示の方は救急へ行ってください』っていうのを出しておいて総合案内に行くのをどこか手前で止める。」

「何が問題かって紙の上にウイルスがいる事が問題じゃなくて、そこに触って顔を触って入ってくるので。そんなに麻疹みたいに側を通ったら移りましたっていう感染症じゃないんですよね。なので手を綺麗にする事で結構防げるので。あとマスクしてますから。」

院内スタッフも神経質になっているようで、正しく警戒する術を逐一伝えているようですね。

ICUの様子

続いて新型コロナだけに特化したICUを視察。

急場しのぎに紙袋に個人個人の用具(マスク、ゴーグル)を入れて管理中。

本来であれば全て1度使用ですぐに使い捨てにすべき所を、1日1人1セット使用に制限して使い回し。感染管理専門家・坂本史衣の院内感染を巡る新型コロナとの戦いとは?マスクやゴーグルは1日1セットを使い回し

坂本史衣「もう一回で破棄する事が出来ないので。」

資源が枯渇しつつあるので選択肢はナシ。

ICU内(取材禁止エリア)の感染管理は細心の注意が必要ですが、それも坂本史衣の仕事。

ICU内での会話だけ取材が可能で、

「無事に抜管。落ち着いてらっしゃる。良かった。」「頭みんな汗かいてすごい。ドライシャンプー取り寄せてるけどなかなか来なくて。それが来てくれると。」「冷蔵庫が届きます。今日中に。みんな口が渇いちゃって。これでかなり助かります。移動が。」

ICUから離れた場所にある冷蔵庫の所に行くまでに防護服を脱いだり着たりする手間がかかっちゃっていたわけですね。

ICUで働くスタッフも苦労が絶えない状況。

同僚「重症が多くって今。先週は上手くいってたけど。」

坂本史衣「ICCU(心疾患の集中治療室)とかと交代しながら働けると本当はいいですね。」

同僚「でも手伝いに来てくれてます。」

同僚「『どこまで全部ガウン着なくちゃいけないのか問題』があって。マスクを洗って使わなくちゃいけなかったりとか、ガウンも今後無くなる事を考えると。例えば抗生剤の残量で鳴った時にどこにも触らずにピッて(機械操作)するだけだったら何も着けなくていいのか?とか。挿管されてて閉鎖されてるから。そこら辺が現場判断でやってしまっているけど、きっと坂本さんに怒られるなと思いながらやってるから。笑」

坂本史衣「いやいや。私が怒るっていうかさ。笑。皆さんが倒れると厳しいからね。そうね。ちょっとそこら辺はなるべくね。資源と労力と医療安全と感染って難しいなと思ってます。」

同僚の看護師との和やかな雰囲気の会話シーンですが、現場の難しさが垣間見えますね。

ICUを離れると、

坂本史衣「スタッフもあんまり実はカメラで映されたくないっていうのがあって、コロナ対応してるっていうのも知られたくない人が沢山います。家族にも実は黙っている人がいて。その辺もしんどくてカメラでは顔が映せないというのがあります。」

院内スタッフのストレスケアも感染対策の一環。

応援メッセージ付きのキットカットを買って同僚と和やかな会話。

メッセージは「自分を信じて」「大丈夫 心配ないよ」。

今は世界中がその想いに溢れているハズ。

坂本史衣「これコロナ用なんじゃない?笑」

コンビニのサンドイッチを頬張りながら、ニューヨークの現況について元同僚から届いた情報に目を通す坂本史衣。

ニューヨークの3月28日時点の情報では死亡率は1%半ばというデータ。※(陽性者の1.4%、入院者の10%、ICUの41%)

その他にもICUの利用者数や退院者数の最新データなど、一般の人が目にする情報よりもはるかに詳細な情報を元に今後の院内感染対策に生かす。

志村けんさんの訃報が日本中を駆け巡ったのはちょうどこの頃。

世代的にテレビでよく観ていたという坂本史衣。

「まさかこんな終わり方をする人だとは全然思わないで見てて。やっぱショックですよね。」

「怖い病気なんですよね。元気だった人が突然消えちゃう病気なんで。若い人も年取った人もやっぱり一様にやられる事があって。」「もちろん8割元気になるんですけど、2割重症で。」

「死んじゃう人を出さないっていうのが感染対策をやってる人の最終的に目指している所じゃないかと思います。今回は。」

「それを淡々とやる。それをやり続けるだけですね。終わるまで。うん」

先週番組で取り上げられたウイルス学の権威である河岡義裕と同じ「淡々と」という考え。

派手さは決してなく、根気のいる感染管理専門家という仕事はギリギリのところで医療崩壊を食い止める防波堤。

職場を後にするのは大概、坂本史衣が最後。

毎日の疲れはもちろん溜まっていっているそう。

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緊急事態宣言

そして4月7日の朝。この日のうちに緊急事態宣言が発令されると言われていたタイミング。

「この一週間は患者さんが増え、患者さんが増え、患者さんが増えみたいな。笑」

この頃になるとアチコチで院内感染の発生を伝える報道が流れていましたが、

「常にそのリスクとは背中合わせで、うちでもいつ起きてもおかしくないです。正直。どの病院でもみんなそういうリスクは抱えながらやってると思いますけど。いかにそこを下げられるかっていうのをみんなで知恵を出し合って。リスクはゼロにはならないけど減らすという所で頑張ってます。」

そしてこのタイミングで新たな感染対策のアイディアに着手。

患者に呼吸器などを装着する際に飛沫を浴びないように資材不足を補う工夫としてアクリル板で作ったボックスの中で呼吸器などを装着できるような器具を製作業者に発注。

台湾人医師がSNS等で公開していた「Aerosol box (エアロゾル・ボックス)」がアイディアの元となっているようですね。

連日開かれていた院内の対策会議に出席すると、

同僚「病床ですけどCCM(救急専門の集中治療室)が1床空きなのですが、ICUが全て満床になっている所で院内のCOVID(新型コロナ感染症)が発生した時にはという所で、その時にはCCMをあけるしかない。」

産科からは、

同僚「地方の周産期施設が東京からの里帰り分娩を拒否したいという意向が結構出ていて、地方は医療資源が十分ではないので。すると多分、里帰りするはずだった人たちも行き場が無いので引き受けなければならなくなるかなと思っています。」

「あとは東京の近隣の病院でターム(正期産)で破水で来て、破水で熱がある。とても普通の事なので。で分娩誘発をしていたら上気道症状(風邪の症状)が出て来て、調べたら(新型コロナ)陽性に出たっていうケース。そこの病院は分娩閉じちゃったんですね。その閉じちゃった理由が私には分からなくて、社会的な要因だけで閉じてるのかどうか分からないので、うちは何としても分娩だけは維持しなければいけないので出来れば坂本さんにもう一回相談してどっか見直す所が無いかどうか。」

新型コロナ以外にも総合病院として受け入れるべき患者は多いですが、妊婦の感染が分娩室で明らかになってしまったら2週間の病棟閉鎖も。

同僚「分娩閉鎖になっちゃったら・・・」

同僚「そういうのって決まってるんですか?閉鎖基準って病院が独自に決めるんじゃないんでしょ?」

坂本史衣「(首を振っていいえ)。保健所との話し合い。」

同僚「今何か出来る事が無いのか?それを確認したかったんです。」

坂本史衣「なるべく入院の時や外来の時に聞いておくっていうのが良いかもしれない。『海外から帰って来た人いますか?』『k族に発熱、咳、COVID疑いの症状ある人いますか?』って聞いて『いる』って言った時は疑っていた方が良いかもしれないですよね。その人を断るわけにはいかないと思うのでCOVIDとみなした対応でやっていく。」

そしてこの日の夜に緊急事態宣言が発令。

ここからはテレビ電話での取材や坂本史衣さんに撮影してもらった映像を使った構成に切り替え。

対策の一環として導入しようとしていたアクリルボックスが完成。

ある程度サイズを大きくして作業性アップと患者さんの圧迫感を低減。感染管理専門家・坂本史衣の院内感染を巡る新型コロナとの戦いとは?呼吸器装着の際に飛沫を浴びないガードボックスの試作品

実際の使用を前に院内スタッフが協力してテストしているようですね。

そして一般病棟の一部を新型コロナ専用病床に切り替える準備も着々と。

同僚「ここがコロナゾーンになるじゃないですか?この辺にパソコン置きたいんですけど、こっちにコンセントが無い。」

スタッフや患者さんの動線なども確認しつつ厳密にエリア分け作業。

そして緊急事態宣言が全国に拡大された翌日の事。

希望はありますか?という取材スタッフの問いかけに、

「希望はあります。いつか終わります。前に進んでるって事は終わりに向かってるんで、前に進めば終わりに近づくっていう気持ちで毎日毎日を進んでいってるような状況です。」

最後はテレビ電話に笑顔で手を振って取材終了。

 - 生活

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